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【蒼フロ3周年記念】蒼空・零 ~1946年~

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【蒼フロ3周年記念】蒼空・零 ~1946年~

リアクション

「行くぞォォォ!」
 真っ先に抜刀し飛び出したのは、誰あろう山葉一郎であった。
「副署長、無茶は!?」
 慌てて輝彦が追う。だが彼は血が滾るのか聞かず、
「俺に続けェェ!!」
 叫ぶなり、飛び降りてきたヤクザ者と切り結び始めたではないか。
「元気なオッサンだな!」
 アキュートも追って、一郎を守るようにして戦った。両の手にはカタール状の武器、戦いのどさくさで出したものだ。指摘されたら「敵から奪った」と言うとしよう。
 いくら喧嘩慣れした暴力団員でも、闇稼業仕込みのアキュートの前では素人同然だ。二人がかり、三人がかりであっても、簡単に攻撃を読まれ、アキュートに回避されることになる。それどころか、三人同時に斬りつけても、いつの間にやら避けられ、背後から一人一人、剣の柄で頭をどやされる結果になった。
「理解出来ねえか? 俺が何故視界から消えたのか。曾孫の代まで語り継げば理解できるかもしれねえぜ?」
 いつの間にやらペトも頭上に浮き、
「ペトにおまかせなのですよ〜」
 爆音立ててせまるトラックを、負けじと爆音の叫びで転倒させた。
 加夜の活躍もめざましい。彼女は玄関先にとどまり、扉を半開きにして障害物にして、その影から遠距離攻撃をかける。守る対象は一郎だ。
「副署長……一郎さんは守ります! 私が、必ず!」
 放つは『神威の矢』、狙いを外さぬこの矢は、トラックのタイヤを撃ち抜き、ピストルを構えた男の手首から武器を吹き飛ばし、長ドスを一郎に向けた男の太股に突き立った。
 裕輝は、たとえ拳銃を持つ相手であろうと平然としている。
「こっちは素手やで、そういうモン使う気?」
 いくら相手が飛び道具を持っていようが、狙いを付けられなければ意味がないのだ。銃が火を噴いた時には、射撃手が引き金を引いた時点とはまるで異なる位置まで裕輝は来ている。さらに相手が銃口を向けても、何げなく拳でこれを押しのけ、しかもその動作がそのまま攻撃につながっていた。銃を押しのけたその拳が、そのままするりと相手の腹部にめり込んでいる。ぎゃ、と声を上げた暴力団員を、いかにも面倒そうに右足をかけて転倒させると、裕輝は前に踏み出そうとした左の足で、相手の側頭部を踏みつけ、悶絶させていた。
 こんな調子で虚を突き、最低限の動きだけで、どんどん敵を裁いていくのだ。
 一方でジェライザ・ローズは、味方の手傷にすばやく包帯を巻きつつも、隙あらば弓矢で攻撃に参加していた。これが百発百中の腕前。機動力のあるトラックに雨あられと射かけ、トラックそのものではなく運転手を倒して動きを停止させるというテクニックだ。
「この燃料不足の折、よくもまあこれだけ機動力を集めたものだね」
 半ば呆れつつもローズは、穣のバックアップにも精を出していた。
 本当は、穣は争いを好まない。喘息で兵役免除になった経歴もあって、このような集団戦は初体験でもあった。だがローズがこのように奮闘しているのだ、自分も、やれる限りのことはやりたい。
「僕も頑張らなくちゃ」
 殴りかかってきた男の足元にタックルをかけ、倒したところで絞め技をかけた。締め落とすと、すぐに次にかかる。汗まみれになるが、決して悪い気持ちはしなかった。
 そんな中、変熊仮面は実に彼らしい戦いぶりを披露していた。
「憎むな! 殺すな! 赦しましょう! あ、スポーンがいたら例外」
 などとビシビシ警告を連発、臆した相手を華麗なる蹴りでおしおき、彼の行動にはいちいち華があった。これが少女漫画なら、画面には薔薇が咲きまくって大変なことになっているだろう。
 なおこのとき、とある駆け出しの脚本家が、偶然この場に居合わせていたという説がある。耳毛の長い彼は渋谷に来ていて、騒ぎを聞きつけ血が滾り、思わず渦中に飛び込んでしまったというのだ。このとき彼が耳にしたメッセージ、それが、後の時代のスーパーヒーローテレビ活劇の重要なテーマになったとか……ならなかったとか……。
 このとき、裏口のほうから大きな声が上がった。
「援軍だ! 援軍が来たぞ!」
 礼二が大声を上げている。石原拳闘倶楽部から、どっと大人数が押し寄せてきたのだ。警察署前で奮戦する山葉一郎たちにこのメンバーを加えても、数ではやはり、まだ大きく負けている。だが士気は、圧倒的にこちらが上回っていた。
 これが決定打となり、渋谷署前の形勢は、一気に山葉副署長側に傾いたのである。