校長室
【2021クリスマス】大切な時間を
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第36章 お出かけの後で 「疲れた……」 クリスマスの夜。 自室に戻るなり、フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)は床にバッタリ倒れた。 フェイミィは今日は一日、パートナーのリネン・エルフト(りねん・えるふと)と過ごした。 リネンからの誘いだった。 朝一番で空京に向かって、昼までは店を回って、ショッピングを楽しんで。 レストランで、クリスマスメニューを頼んで楽しんだ後に、公園で大道芸を見て。 それから街を散歩して……喫茶店に入って。 だけど2人の会話は全く弾まなかった。 最初は、想いの人であるリネンからのクリスマスの誘いに喜んでいたフェイミィだけれど……。 リネンが心から、フェイミィと楽しみたくて誘ったわけではないことが、よく解ってしまって。 それからは淡い期待はバッサリ捨てて、遊ぶこと……自分を楽しませようとしてくれるリネンに喜んでもらうことを目指した。 だけど……やっぱり、ダメだった。 リネンはフェイミィを楽しませようとするばかりで、会話をしようとしても、一生懸命うんうん頷いてくれるだけで。 スポーツセンターに行ってみても、自分のプレイそっちのけで、フェイミィの世話を焼こうとする。 結局、なんだか気まずくなってしまって。 2人はプレゼント交換をすることも出来なかった。 だから、夕飯は一緒には食べなかった。 フェイミィの方からお開きにしようと、言って。 「一緒にいるのは楽しいけど……心が、一緒にいないんだもんな」 天井を見ながら、フェイミィは大きく息をつく。 今日は楽しかったと……嘘でも、本当でもない礼の言葉を言って。 それから、最後に一つだけ、フェイミィはリネンにプレゼントを強請った。 「『忠誠』を意味するチョーカー……」 フェイミィは買ってもらった物を掲げて眺める。 「……いいんだ。無理しないで……わかってる」 一緒いられれば、それで十分なんだ、オレは。 リネンを思い浮かべながら、フェイミィはそう思う。 自分がフリューネの代わりとしか見られていないということを、フェイミィは理解していた。 それは契約をしたときからずっとだ。 手の届かない、フリューネの代わり。 「傍にいれれば、十分なんだ……十分、なんだ……」 酷く、疲れていた。 空元気で、一生懸命遊ぼうとしたから。 楽しんでいる姿を見せようと、し続けたせいで。 身体も心も、疲れていた。 フェイミィの上げていた手が、落ちる。 クリスマスの今日。 (確かに、彼女の傍にいたのは、オレなんだ……) 愛しい彼女の姿を思い浮かべながら。 申し訳なさそうな、彼女の顔を思い浮かべながら。手を伸ばしながら。 フェイミィは眠りに落ちていく。
▼担当マスター
川岸満里亜
▼マスターコメント
ご参加ありがとうございました。 皆様の素敵なクリスマスを描かせていただけたことを嬉しく思います。 またお会いした時には、また少し関係が変わっているのだろうなと、わくわく次の機会でお会いできることを楽しみにしています。 皆様の明日が、今日よりもっと素敵なものとなりますように! 2011.1.4 お名前の間違いを1箇所修正いたしました。申し訳ありませんでした。