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ユールの祭日

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ユールの祭日
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●●● 直撃! 七曜拳

回想、数日前のこと。

妙にテンションの上がっている伏見 明子(ふしみ・めいこ)を見て、九條 静佳(くじょう・しずか)はなんとも不吉な気分になった。

明子の瞳が少女漫画のようにきらきらしているのだ。
一睨みすればパラ実のモヒカンどもですら怯え上がるあの明子の瞳がだ。

「くーろーうー!
 楽しそうな企画があったから参加券とってきたわよー!
 私が参加してもいいんだけど折角の機会だし!
 九郎義経の勇姿がみたいなー!(きらきら)」

明子の差し出した手紙を見て、静佳は予感の的中を悟った。

「勘弁してくれよ……
 そういう場には出たくないんだ」
と一度は断ろうとしたものの、明子のきらきらおめめには勝てなかった。


そういうわけで当日である。
九條 静佳改め源九郎義経はこの決戦の場にやってきた。
今でこそ見目麗しい女性の姿をしているが、源平の合戦においては筆頭に挙げられる武人である。
こうなってみるとやる気が出てくるものなのだが、にもかかわらず物足りない。

弁慶だ。
義経といえば弁慶だ!

「ねえ明子、弁慶の代わりに出る気はないかな? ダメ?」
明子、大きくバッテンを出す。
苦笑いしながら勝負の支度をする九郎。

その対戦相手は身の丈2メートルもの巨漢であった。

「本気の英霊と戦えるなんて今年最後の締めくくりとしては俺は本当に運がいい!
 俺の拳がどこまで通用するか……楽しみだ」
ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)である。

今回の出場者のうち、英霊を除けば彼が最強ではないか、というのが下馬評だ。

「いきなりとんでもないのにあたっちゃったなあ……
 ……では。源九郎義経、推して参る」

「一般人だからって手加減はしないでくれよ?
 そんじゃあ、早速先手必勝させてもらうぜ!」

言い終わるか終わらぬかのうちに、ラルクの拳が唸った!
それを身軽にひょいと跳んでかわす九郎。

そのままラルクの懐に入り、同じく素早い拳を繰り出す。
英霊を甘く見ていたわけではないが、九郎は特にすばしこい部類だ。
ラルクは避けることを諦めて、甘んじて受けることにする。
腹に拳がたたきつけられるが、硬い腹筋がそれを食い止めた。

「想像以上に強烈だね、こりゃ」
九郎がなかば呆れていると、ラルクの蹴りが九郎を襲った。
辛うじて身を捻ってよけるものの、蹴りは一発ではなかった。
2発の蹴りに4発の拳が、流れるような一連の動作となって繰り出される。

両名の体格差を考えると、ラルクの一撃が決まるだけでも決定打となりうる。
九郎は気楽そうにそれを避けているが、実のところはそう気楽な状況ではないのだ。

しかしこれでラルクの攻撃は終わらない。
必殺の頭突きが繰り出されるのだ!

頭突きは一般に思われているよりも恐ろしい技である。
多くの場合、相手の頭部に命中するため、脳震盪などを引き起こすのだ。
違いの頭部が激突するため危険も大きく、頭突きを禁止している格闘技は少なくない。

ラルクと九郎の体格差は50センチほどもある。
この高さからの頭突きがすさまじい威力を発揮することは必定だ。

しかし九郎はこれを避けなかった。
それどころか、自分も頭突きを仕掛けたのだ!

下からの頭突きは、上からの頭突きとは異なり、相手の顎や鼻の下に当たりやすい。
これも人体の急所なのである。

「ぐおっ!」

予想外のカウンターにラルクはのけぞる。
顎に強烈な一撃を食らって、ついでに舌も噛んだ。
この瞬間に強烈な掌打を食らい、ラルクは仰向けに倒れた。

「いやはや、英霊でもないのにとんでもない強敵だったな。
 どこかで見たような気もするんだが……そうだ、弁慶だ!」

九郎はラルクを叩き起こし、こういった。

「今の戦いは源九郎義経の必殺技、『五条大橋と清水寺観音』だ。
 そういうわけでしばらくのあいだ、弁慶として隣で立っててくれ」