First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
●朝のポートシャングリラ
まだ夜の気配が残っているような気がする。
港付近にあるため海風で、ポートシャングリラの朝はとにかく寒い。
けれど現在、神条 和麻(しんじょう・かずま)は寒さを感じていなかった。むしろ暑いくらいだ。ずっと身体を動かしているから。
彼は大急ぎで屋台を組んでいた。
「朝だし客もまだまだいないだろうと思っていたが……」
シャングリラが開店してから、和麻はゆるゆると入ってきた。彼は客ではなく仕事のために来た。具体的に言うと屋台、それも甘くてアンコたっぷり、熱々で、おまけに価格破壊の格安というたい焼き屋の運営に来たのである。
たい焼きというのはいわばおやつなので、朝っぱらからそう売れるものではない。ゆえにゆっくりと来て、早売りのバーゲンなんかも覗いてみて、昼前くらいからおもむろに売り始める気の和麻だった。
ところがなんということか、屋台が軒を連ねているあたりに来てみると、もうさっそくどこも開店しており、人気店にいたっては行列ができているという有様。
(「そうか……朝イチの福袋目当てに押し寄せた客が、買うもの買って小腹が空いたから来てるってのか……」)
屋台の前でたたずんでいると、「たい焼き屋さーん、オープンまだー?」と、親に連れてこられたとおぼしき子どもに呼びかけられた。
こんなときこそ稼ぎ時、幸いすぐにでもオープンできる状況なので、大慌てで彼は材料を取りに戻って屋台を組んでいるのだった。
「お腹が空いてる子どもたち、待ってろよ! すぐに開けるからな……!」
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last