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新ジェイダス杯第1回

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新ジェイダス杯第1回

リアクション

 

2ターン

 
 
『さあ、トップは依然として緋桜ケイ選手。これは、スタートダッシュがきいています。このままトップを維持できるでしょうか。
 けれども、2位には、華麗な操縦テクニックで神代明日香選手を追い抜いた清泉北都選手が追い上げてきています。油断はできません』
「このままスピードを落とさずにトップを狙うよお」
 オーニソプターの螺旋プロペラの回転をあげながら、清泉北都がクナイ・アヤシに言った。
「ええ。守りはお任せください」
 いつでも対処できるように身構えながら、クナイ・アヤシが答える。
『さあ、先頭グループ、3位は団子状態です。神代明日香選手、天城一輝選手、大久保泰輔選手がならんで、抜きつ抜かれつの激戦を繰り広げています。清泉北都選手に続いて、この集団から抜け出すのは誰でしょうか。
 その後ろでは、やや遅れた佐々木弥十郎選手の後方に、ハーリー・デビットソン選手がいます。先ほどまで後ろに波を蹴たてていたハーリー・デビットソン選手、今はそれがありません。軽くなったのかは分かりませんが、順調にスピードを上げています。
 その後のグループは、また混戦です。
 ジュレール・リーヴェンディ選手、クリストファー・モーガン選手、皆川陽選手がひとかたまりとなっています』
「カレンはどこに……。しまったあ、いつの間に抜いてしまったのだ!?」
 急いでカレン・クレスティアに追いつこうとしていたジュレール・リーヴェンディは、いつの間にかパートナーをあっけなく追い抜いてしまっていた。
「これじゃ、俺がジェイダス理事長の目に留まらないじゃねえか。さっさと、下がれ!」
 周りをふらふらと他の選手に飛び回られて、クリストファー・モーガンが渋い顔をした。これでは、モブでしかカメラに写らない。ジェイダス様にアピールするためのアップがとれないではないか。
『おっと、クリストファー・モーガン選手、再びしびれ粉を掴んで皆川陽選手にむかって投げつけた!』
ひぃぃぃぃぃ!
「御主人様に何をする!」
『すかさず、テディ・アルタヴィスタ選手が、風術でしびれ粉を吹き飛ばして防御します』
「御主人様は、この僕が守り抜く。文句がある奴はかかってこい!」
「テディ・アルタヴィスタ選手、溢れ出る愛で皆川陽選手を守り抜きました。
 しかし、流れ弾となった風刃が、前方を走るハーリー・デビットソン選手を襲う。
 ああっと、真っ二つです……あれっ? 平気です……。
 なんと、ホログラフでした。ハーリー・デビットソン選手、メモリプロジェクタで追ってくるライバルたちの目をくらませていました。本人は、すでに佐々木弥十郎選手とならんで走っています。
 さあ、後続はどうでしょうか。
 アガレス・アンドレアルフス選手、堂々と輝く剣を掲げたまま微動だもせずに進んでいます。これは、伝説となるか。
 その後ろには、ソア・ウェンボリス選手、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』選手が、緋山政敏選手を挟むようにして進んでいます』
「邪魔です! 幾千の雷よ、降り注げ!
「我の前を走るなど、いい度胸だ!! 雷帝招来!」
『ああっと、ソア・ウェンボリス選手とフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』選手が、同時にサンダーブラストの詠唱に入った』
「きゃあ、師匠。今助けに参ります!」
 遅れていたリース・エンデルフィアが真っ青になって後方から飛び出した。箒の上で前傾姿勢になって、全力でかっとぶ。
「おおっ、いい眺めだぜ。やっぱり、レースに燃えるハーリーを自由にしてやって正解だったぜ」
 隠形の術でまだ身を隠したままの南鮪が、真後ろからリース・エンデルフィアのパンツを楽しみながらガッツポーズをとった。
 後ろから覗かれていることに気づかないリース・エンデルフィアではあったが、今はそれどころではない。
 ダブルで放たれたサンダーブラストは、アガレス・アンドレアルフスの頭上で炸裂した。
「お師匠様なら、あのくらい雷術でちょこちょこっと……ああっ!」
 儚い期待をだいたリース・エンデルフィアであったが、ポーズを崩さないことに全神経をかたむけていたアガレス・アンドレアルフスは、雷術で電撃を避けようともしなかった。それどころか、掲げていた剣が避雷針となって直撃をくらう。ボンという音と共に小型飛空艇のエンジンが吹っ飛んで、アガレス・アンドレアルフスが水中に沈んでいった。
「やべ、じっちゃん死んだか!?」
 スクリーンを見ていたナディム・ガーランドが、さすがに顔を引きつらせた。
「多分、大丈夫じゃないのかなあ」
 のほほんとセリーナ・ペクテイリスが言ったとき、突然海面が盛り上がった。海中から浮上したガネットタイプのオルタナティヴ13/Gが上部装甲を海面へと出す。その上に、未だポーズをとり続けながら失神しているアガレス・アンドレアルフスの姿があった。
「まったく、早い、早すぎるぜ。もうリタイアかよ。このバイト、無茶苦茶重労働なんじゃないか!?」
 外部モニタで、救助したアガレス・アンドレアルフスの様子を確認しながらシリウス・バイナリスタがぼやいた。
「請け負ったのは、キミでしょ。とりあえず、怪我人を海京まで運ぼうよね」
 そう言うと、サビク・オルタナティヴはガネットを海京の方へとむけた。
 
    ★    ★    ★
 
「なんて危ないのだ。あんな凶暴な魔法使いたちの間に政敏をおいておけるか。すぐに助けに行くのだよ!」
 炸裂するサンダーブラストを目の当たりにした綺雲菜織が、大あわてで小型飛空艇を全力加速した。彼女の気合いが乗り移ったのか、小型飛空艇がすばらしい加速を発揮し、あっけなく緋山政敏たちを追い越した。
「お兄ちゃん後ろになっちゃったよ?」
「ああっ、しまったあ!」
 彩音・サテライトに指摘されて、綺雲菜織が頭をかかえた。
「こ、こえー……」
 あっという間に抜き去られて、緋山政敏が唖然とする。
「まったく、綺雲さんったら何をやって……、はっ! 追い抜かれちゃったじゃない。政敏、加速して、加速。このままじゃ、夕飯が……。きゃー、急いで!」
 バンバンと緋山政敏の背中を叩いて、カチェア・ニムロッドが叫んだ。
『激しい攻防がありました。かなり順位も入れ替わりつつあります。
 一方、遅れ気味のグループは、比較的落ち着いてレースを続けているようです。
 カレン・クレスティア選手と、エリシア・ボック選手がならんで競っています。ちょっとまったりです。
 その後ろでは、やっと身体が動くようになった師王アスカ選手が、水の上を走る笹野朔夜選手の頭上にさしかかりました。
 最後尾は、秋月葵選手です。気合いの割りには、まだスピードが乗りません。いったいどうしたのでしょうか。どうやら、乗っているパラミタイルカさんがのんびりとした性格のようです』
 
    ★    ★    ★
 
『それでは、現在の途中経過を一覧で見てまいりましょう。
 現在の順位と、順位を上げたか落としたかが記号で表示されております。
 ここまでの状況、いかが見られますでしょうか、ジェイダス理事長』
『まだまだ戦いは序盤。選手たちの本当の姿は、これから現れるだろう。秘められた真の力の美しさに期待しようではないか』
 
1  緋桜ケイ 悠久ノカナタ
2 △清泉北都 クナイ・アヤシ
3 ▼神代明日香
   大久保泰輔 フランツ・シューベルト
  △天城一輝
6 ▼佐々木弥十郎
  △ハーリー・デビットソン
8 ▼皆川陽 テディ・アルタヴィスタ
  △クリストファー・モーガン クリスティー・モーガン
  △綺雲菜織 彩音・サテライト
  △ジュレール・リーヴェンディ
12△アガレス・アンドレアルフス リタイア
13▼緋山政敏 カチェア・ニムロッド
   ソア・ウェンボリス 雪国ベア
   フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』
16▼カレン・クレスティア
  ▼エリシア・ボック
  △リース・エンデルフィア
19▼師王アスカ
  ▼南鮪
  △笹野朔夜
22▼秋月葵 魔装書アル・アジフ