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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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18)

杜守 柚(ともり・ゆず)は、
片思い相手である高円寺 海(こうえんじ・かい)を誘い、
デスティニーランドへとやってきた。

バレンタインのデスティニーランドは、カップルでにぎわっている。
(私も、あの中に入っていけたら)
2人きりでは緊張するからと、大勢の人がいる場所に、
海を誘った柚だが、つい、そんなことも考えてしまう。

(去年は好きって言えなかったけど、今年は……)
そう考えながら、一緒にデスティニーランドを回る。
置いていかれないように気をつけようと思っていた柚だが、
海は、柚の歩くテンポに合わせてくれている。
「何に乗りたい?」
「えっと……絶叫系とか、大きな声を出したら気持ちいいかなって」
「じゃあ、そうしようか」
そう言い、海は柚とともにジェットコースターに乗る。

「きゃああああああああああああああ!」
「うわあああああああああああああ!」
2人の声が重なる。
「思ったより、楽しいもんだな」
海が、微笑を浮かべ、柚に言う。
「はい! 楽しかったです」
「次はどこに行こうか。
今度はお化け屋敷なんてどうだ?」
「え、お化け屋敷、ですか?」
「ん、怖いのか?」
「だ、大丈夫です」
そう言ったものの。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
お化け屋敷の暗がりの中で、
柚は海に思い切りしがみついてしまっていた。

「大丈夫か?
さっきのジェットコースターよりでかい声だしてなかったか?」
「だ、だ、大丈夫、です」
真っ赤になって、柚はベンチに座り込んでいた。
「……しょうがないな。ほら、飲み物飲んで落ち着け」
「ありがとうございます……」
温かい紅茶に、気持ちが癒される。
海の優しさに、柚は、心も温かくなるのを感じた。

「やっぱり、海くんと一緒だと楽しいですっ」
「そうか? ならよかった」
海が、コーヒーを飲みながら微笑を浮かべた。
その横顔を見つめているだけで、柚は胸がいっぱいになってくる。

やがて、日が暮れて。
帰り際。
柚は、手紙と一緒に、手作りのチョコレートを差し出した。
チョコレートは、甘さ控えめのビターチョコでハート型をしている。
もちろん、かわいらしくラッピングされたものだ。
「あの……今日はありがとうございました!
とっても、とっても楽しかったです。
これ、受け取って、読んでもらえますか?」
自分の素直な気持ちを書きつづった手紙だった。
今年こそ、今年こそは。
海に自分の想いを伝えたい。
そう願い、勇気を振り絞った、柚のせいいっぱいの気持ちだった。
海は、しばし、驚いていたようだったが。
「ありがとう。
おまえの気持ち、たしかに受け取った」
そう言って、チョコレートと手紙を受け取ったのだった。

「じゃあ、またな」
「は、はい。また!」
そう言って、手を振る海の後ろ姿を、柚は、見えなくなるまで、ずっと見つめ続けていた。