リアクション
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ さて、時間の紐をよりなおし、ふたたび場面を空京神社敷地内に戻す。 藤崎 凛(ふじさき・りん)はシェリル・アルメスト(しぇりる・あるめすと)を連れて初詣に訪れていた。二人とも晴れ着、凜の振り袖は鮮やかな紅地で、シェリルの着物は目の覚めるような青色が基調、揃って白いファーの襟巻きをしていた。写真撮影したらそのまま絵葉書にできそうなほど、二人ともよく似合っている。 二人は神社から出た。参詣は終わったので、道々、初売りの店などのぞいたりする。さすが観光地だけあって土産屋には事欠かない。そればかりではなく、ここぞとばかりに張り切るブティックや雑貨屋、屋台など、年始にしてなかなかの賑わいである。 「まあ、可愛いですわ」 売り物の服を見て凜は目を細めた。チャイナドレスだ。 「リンにはあの色のものが似合いそうだね」 「今度一緒に着てみません? チャイナドレス」 「いや……私は……ちょっと」 「そんなことないでしょうに」 いくらか残念そうな顔をした凜だが、すぐにくるっと表情を変えて、 「あそこに福袋を売っていますわ……ペットショップ?」 と小走りに向かいの店に行く。 「ゼニガメの福袋だって……そんなものまで福袋にするんだ」 袋を開けたら小さなカメがわさわさ出てくるところを想像して、シェリルは微妙な顔をするのだった。その思考を破るように、 「ピンクの……まあ、可愛い!」 凜が急に声を上げた。 「ピンクのインコでもいたか?」 「違いますわ。シェリル、見て」 凜が示した方向には、黒髪の少女が歩いていた。あの後ろ姿には見覚えがあった。 「カーネリアン・パークスさん、ですわよね?」 そのカーネリアンは凜たちに気がついておらず、ただ、 「……しまった。まだこんなところを通らなければならないとは……おい、先に行くな」 そんなことを言っているようだ。 カーネリアンの眼前には、ちょっと奇妙なペット(?)の姿があった。桃色のアメーバ状生物で、生ゴムみたいなつるんとした外見をしている。カーネはできるだけ目立たないよう歩きたがっている様子だが、どうもこの桃色はあまり彼女の言葉を聞く気がないらしい。 「ちょっと気になりますわ。ねえシェリル、追いかけてみましょう」 言うが早いか凜はくるりと方向転換して、出てきたばかりの神社の方角へ小走りする。 「気になる? あれが? それに可愛いか……? たしかにピンク色だけど、平べったいゴムみたいな怪物じゃないか」 「可愛いですの! リアジュー、とか鳴いてません?」 「知らないよ。なんかの魔法生物かもしれないぞ」 シェリルとしては気が進まないのだが、まさかのことがあっては困るので凜に続いた。 |
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