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リアクション
後日スタッフが総出で直しました
「フェル!出し惜しみなしだ。無理せず、無茶して、飛ばしていくよ!!」
ガーディアンヴァルキリーのカタパルトから、閃光を伴って一機、いや、二機のイコンが飛び出していく。十七夜 リオ(かなき・りお)とフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)のヴァ―ミリオンと、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)とヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)のゴスホークだ。
ヴァ―ミリオンはゴスホークを背に乗せ、直線に直角に曲がりながら進む。ターゲットは既に決めてあるが故の迷いの無い動きだ。
二機の眼下には、真っ二つに分断された乙、甲それぞれの戦艦の残骸がいくつも転がっている。
「撃墜扱いでポイント入るのに、やってくれちゃって」
「……」
唐突に機体が直角に降下する。
「厄介なのに捕捉されちゃったっぽいね」
キャロライン・エルヴィラ・ハンター(きゃろらいん・えるう゛ぃらはんたー)は側面を向けていたアウクトール・ブラキウムを正面に切り替える。
「牽制になればいいけど……」
トーマス・ジェファーソン(とーます・じぇふぁーそん)はエアブラスターで迎撃を試みるが、これまた直角の、さながらUFOじみた動きで回避される。
「あんな動きしてたら目が回りそうなもんだけどなぁ」
機動力を提供しているのはフェルクレールト・フリューゲル、乗っているゴスホークはたまったものではないように見えるのだが、たぶんそういうのは期待できないだろう。
「お楽しみの時間は終りだ。見せてやろう、俺達の戦いを」
ゴスホークがプラズマライフルの銃口を動かす。しかしその銃口は、アウクトール・ブラキウムに向けられていない。そのまま二発、銃口が火を噴く。
「その攻撃は読めていたよ!」
ガトリングガンの発射音と共に、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)の乙グラディウスが飛び出してくる。
全ての弾丸は、ヴァ―ミリオンのエナジーバーストに当たって防がれる。弾切れを起こしたガトリングガンを投げ捨てると、乙グラディウスはデュランダルを握った。
「美羽さん、次の攻撃は―――」
「わかってる!」
乙グラディウスは直線で進む。
一方のゴスホークとヴァ―ミリオンも待ち受けるでなく、神武刀・布都御霊を抜き、突き進む。
「速き事風の如し」
「侵略する事火の如し」
「ちょっと」
「疾風迅雷」
「必殺、斬艦刀流星斬り」
「人の事無視するのはよくないんじゃいかな!」
二振りの刃が衝突するその中心に向かって、アウクトール・ブラキウムの砲撃形態、ジェイセルはヴリトラ砲を向けていた。
ゴスホークの銃口の位置を見てとった瞬間に、二人は砲撃形態への変形を決断。ゴスホーク達の狙いとぶつかる瞬間に割り込みに入ったのだ。
「パーティの時間だぁ!」
桁違いのパワーとパワーがぶつかる中心点に、さらなる強烈な一撃が打ち込まれた結果、強烈な爆発が発生しその中心にあった四機は見えなくなった。
以降、この場所は第一クレーターと呼称されることになった。
「なんだあれは?」
高高度を飛ぶブラックバードのパイロット、佐野 和輝(さの・かずき)とアニス・パラス(あにす・ぱらす)は地上の映像を拡大する。
「パワードスーツの部隊だね」
アニスが拡大された映像に映る、人間ほどの大きさの小隊を見ていう。
「乱入組みではないな。ラッキー機でもない。パワードスーツで参加しているのか」
「とりあえず、爆撃しておく?」
「そうだな」
ブラックバードは、彼らの頭上を通り過ぎるところで、グレネードを投下する。
「んじゃ、あとは位置を送信しとくね」
「そうしてくれ」
そうして、ブラックバードはパワードスーツ小隊の上を飛び越えていった。
「それにしても、暇ねー」
高高度を取ったブラックバードは、その機動力も合い間って捕捉されても追撃される事は、結局のところ試合が終わるまで無かった。時折、機銃やミサイルが来る事もあったが、余裕を持って回避するだけで事足りたのである。
「少し、大人げなかったかもしれないな」
ブラックバードのフィールド、高高度の空中はまずたどり着くだけで大変だ。さらに、当然ではあるがブラックバードはここまで来る前に迎撃行動を取る。ここでネックになるが、乱入組みが活動できる時間制限である五分で、ブラックバードを撃墜できるであろう地点までの移動は五分では短く、そこから戦闘を行い撃破するというのはほぼ不可能に近かった。
かくして、多くの参加者はブラックバードを相手にしない選択をした。というより、相手にできなかった。他の乱入機が立ちはだかったり、あるいは―――
「降りてこーい!」
トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)は竹槍をもって空中に向かって叫ぶ。悲しいかな、シュバルツカッツでは、あの高さを飛ぶイコンを相手にできない。
「坊ちゃん、相手はB29じゃないんですよ」
「B29?」
テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)は通信された魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)の言葉を口にして首を傾げる。
「なんだかそれ、むちゃくちゃ濃い鉛筆なんじゃねぇか?」
「違いますよ、B29というのは」
子敬が間違いを訂正仕切る前に、空中から何かが飛来してきた。
グレネードだ。
「退避、退避」
三人はその場から全力ダッシュ退避、彼らの居た地点を包み込むようにグレネードが着弾し、炸裂する。
「あの高さから、この精度の爆撃とはやりますな」
さすがは乱入機、と子敬は感心する。
「んで、B29ってのは?」
「あ!」
今度はトマスが声をあげる。なんだなんだ、とテノーリオはそっちを見るが、何も無い。
「どうしたんだ?」
「今何か、すごい早い何かが駆け抜けてった気がするんだ」
「レーダーには何の表示もありませんが」
パワードスーツよりも索敵性能に優れる支援機である{ICN0005629#ファルコ}のレーダーを確認しても、子敬はトマスの言う凄い早い何かの姿は見受けられなかった。
「レーダーに映らなくて、すごく早くて、それに見失ったって事はイコンじゃないだろ。つーことは、ラッキー機か?」
「かもしれないね。あっちに行ったから―――」
トマスが指差した先には、イコンの軍団が居た。
ざっと見渡す限り、二十五前後は居るだろうか。AI機には個々の索敵範囲があって長距離からはやってきたりはしないのだが、何故だか自分達に向かって進軍しているように見える。
「ふふふ。ずっとトマスにかまけてたから、結局恋人の一人もできなかったわ。このやり場のない怒り……ふふふふふふふふふふふふふふ」
「姉御が飛び出したっ!」
ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)は周囲の静止、なんてものをする暇は無かったのだが、色々無視して通常機の群れへ飛び出していった。
「何か今日のミカエラは尖ってるな」
「日ごろの鬱憤が溜まっているのでしょう」
「いや、いいのかよ姉御もうやりあってるぞ」
「得点的にはラッキー機を探した方がいいんだけど、僕達はチームだからね」
トマスは岩を蹴り、ミカエラに続くと、テノーリオもそれを追って飛び出した。
カイザー・ガン・ブツは会場の南東のあたりに鎮座し、それからは特に動く事なく周囲の敵を蹴散らして割りと堅実にポイントを稼いでいた。
「フフフフ……この座して勝利を得るカイザー・ガン・ブツに掛かればこのイコンバトル勝ったも同然だな!!」
マネキ・ング(まねき・んぐ)がほくそ笑む横で、願仏路 三六九(がんぶつじ・みろく)が近づいてきたエネミーイコンを超空間無尽パンチで叩き潰していったのである。
そうこうしているうちに、乱入機が突入してくる時間になった。さっそく機内オペレーター席のメビウス・クグサクスクルス(めびうす・くぐさくすくるす)はレーダーに映る大量の乱入機を発見する。
「師匠、いっぱい敵が沸いてきたよー」
「ああ、もうそんな時間か」
セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は時計を確認する。ビーム・愛(ビームアイ)で敵機を撃墜していくのはシューティングゲームみたいでそこそこ楽しかったから時間の経過に気付けなかったようだ。
「なんだと!」
敵機出現の報を聞いたマネキは、何故か激昂したようで立ち上がった。
「どいつもこいつも!! この神々しき存在を汚しに来た異端者どもに違いないのだよ!」
「え、いや、これは……」
「奴らには、お灸を据えてやる必要があるのだ!」
「ルールにあった乱入……」
セリスの言葉は当然の如く届かない。
「我の愛と正義の名のもとに墜天で、戦場諸共1機残らず全て叩き潰してくれるわ!!」
「りょうかーい! ターゲットロック、発射!」
メビウスがすぐさま墜天を発射する。まるで使う予定があったかのような準備のよさだ。
「ふふふ、僕ら真オリュンポスの目的である世界征服……ハデス君のやり方では生温いので、そろそろハデス君を隠れ蓑にするのは終わりにし、僕のやり方で世界征服を目指すとしましょう」
機動城塞オリュンポス・パレスのの艦橋で怪しい笑みを浮かべるのは、黒幕であることをやめた天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)だった。
彼のすぐ傍らには、ドクター・ハデス(どくたー・はです)の遺影が飾られている。一応の注釈として。ハデスは死んでいない。
「さて、早速ですが、イコン大会が佳境に入ったところで、オリュンポスパレスで乱入し、イコンたちにビッグバンブラストをお見舞いしてあげるとしましょう」
既に大会が始まってから二十五分、参加者はいい感じに疲弊しているであろう。ここで多くの腕利きイコンパイロットを削いでしまおうというのだ。
さっそく、ビッグバンブラストを打ち込むに最適な場所を把握するため、ユビキタスで戦況把握をしたまさにその瞬間、自身に向かってくる一発のミサイルを察知した。
「これは……墜天!」
全く知らないわけではない攻撃。
「レーザーマシンガンで迎撃を……しまった、今回は積んでいなかったか! 回避運動」
巨大な機動要塞は完全な回避はできず、比較的損害の少ない場所で受けざるを得なかった。この一撃で、ビックバンブラストの一基が完全に破壊されてしまう。
「くぅ、まさか私の狙いを見抜いて先制を仕掛けてくるとは……ですが!」
生きている方のビッグバンブラストを構える。狙いは当然カイザー・ガン・ブツだ。
「吹き飛びなさい!」
発射。だが、先ほどの墜天のダメージは大きかったのか、直撃はしない。狙いは僅かにずれを生じ、爆煙に包まれつつも、それが晴れた時にはまだカイザーガンブツは人の形を保っていた。
「おのれ異教徒!」
マネキが地団駄を踏む。一方の三六九は何故だか涼しい顔で、合掌すると、
「であれば、神の後光を見せ付けるしかありませんな」
と宣言した。
既にボロボロになってしまっている艦載用大型荷電粒子砲が、オリュンポス・パレスへと向けられる。まともに撃てるかどうかも怪しい状態を見て、十六凪は余裕を持って次のビックバンブラストを構えた。
「一基やられたために高速二連射とはいきませんが、これでおしまいです……ん、エラー?」
突然、オリュンポス・パレスが傾き、制御を失う。先ほどのダメージか、いやそれは先ほど確認したはずだ、問題は無い。
「こ、これは!」
オリュンポス・パレスにエネミーイコンが引っかかっている。そして、引っかかったエネミーイコンには、金色の腕。伸ばしに伸ばした超空間無尽パンチが、戻ってくる途中で引っかかったのだ。
「さぁさぁ、もっと近くで御覧なさい」
「くっ、これではビックバンブラストの爆発範囲に巻き込まれてしまう」
両機のエネルギーチャージは止まらない。そのままぐんぐんと互いの距離は縮まり、二つの砲が丁度接触する瞬間、閃光が放たれた。
とても目を開けて入られない閃光が収まると、もはやそこには巨大な城も大仏の姿もなく、ただただ大きなクレーターが出来上がっていた。
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