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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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「そうそう、上手上手。そうやって溶かしていってね」
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)赤羽 美央(あかばね・みお)にチョコのテンパリングを教えてあげながら、一緒にチョコ作りを進めていった。
 お菓子作りの経験がないという美央だったが、その分、素直に話を聞き、手つきはおぼつかなかったが、一生懸命やっていた。
「そっちはどうかな?」
 霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)が声をかけると、美央と同い年のイルミンスール生コレット・イーノス(これっと・いーのす)は用意していたカップを見せた。
「言われたとおり、ちゃんとチョコを入れるカップを並べたよぉ〜」
「そうかそうか、透乃ちゃん、他にすることある?」
「あ、ちょっと待ってー」
 透乃がもう少しチョコを追加しようと、製菓用チョコをもらいに行く。
 その間に美央はチョコをじっと見つめて考えた。
「ホワイトチョコレートにしたいのですが、どうしたら白くなるのでしょうか?」
 美央は考え込み、ひとまず家庭科室にあった白チョークの粉を入れてみた。
「……全然白くならない」
 仕方ないので、どこから取り出したのか白絵の具を入れてみた。
 しかし、白絵の具を全部搾り出しても、ちょっと茶色が薄まるくらいで、白くはならない。
「仕方ないですね」
 ついには白ペンキを取り出し、ペンキの缶の中身を全部チョコの入ったボールにぶちまけた。
 結果、白くなったチョコレートを見て、美央は大いに満足した。
「できた」
 そうしている間に、透乃が帰ってきて、不思議そうに美央のボールの中身を覗き込んだ。
「あれ……ホワイトチョコにしたんだっけ?」
「はい、小麦粉なども少々入れてみましたので」
 小麦粉と言っても自称小麦粉であり、お供にテロルチョコも入っているのだが、美央は小麦粉のことしか口にしなかったので、透乃は違う心配をした。
「小麦粉かあ。少々ならちゃんと固まるかな」
 透乃の心配に、美央は何の根拠もなく、こくこく頷く。
「さ、早く固めよう早く〜。コレットちゃん待ちきれないよ」
 チョコが楽しみでたまらないコレットはみんなを急かして、チョコを作らせた。

 そして、時間が経ち……冷蔵庫の中で冷やされたチョコが出来上がった。
「さ、どうぞ。できたよ〜!」
 透乃が小さい弟妹たちのお姉さんのように、美央やコレットの前にチョコを並べてあげた。
「おー。コレットちゃん、感激だぁ〜」
 コレットは喜んでチョコに飛びつき、食べた。
 美央も表情には乏しいが、もぐもぐと食べ、透乃に「おいしい?」と聞かれると、こくっと頷いた。
 チョコを喜んで頬張ったコレットは、まだチョコが欲しくなり、美央のホワイトチョコを見つめた。
「……食べる?」
 美央が差し出したチョコを、コレットは笑顔で受け取った。
「食べる食べる!」
 あわよくば余りのチョコを独り占めしたいと思っていたコレットは喜んだ。
 そして、一つ口にして。
「うっ……」
 謎の白い泡を吹いて倒れた。
「だ、誰かキュアポイゾン! それからナーシングとヒール!」
 泰宏が救助を求め、周りが慌てて寄って来た。
 目を覚ましたコレットはミルディアたちのちゃんとしたチョコをもらい、機嫌を直して帰ったのあった。