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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう

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リアクション

 5年前、2019年。地球、ロサンゼルス市警察。

「いくら許せねぇ犯人だからといってあそこまでやるこたぁねぇだろ。ボコり過ぎだ」
 SWAT隊の同僚に必要以上に犯人を殴り半殺しにした事を注意されると
「何言ってる。あれでも手加減した方だ。あいつが犠牲者にやった事を思えば」
 ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)は怒声混じりに言い返す。決して最初から犯人をぶちのめそうとしてやった訳では無い。ただ被害者や遺族の事が頭に思い浮かびつい必要以上に手が出るだけなのだ。
「おい、また周辺住人から苦情が出てるぞ。派手に周辺の物をぶっ壊しやがて」
 同僚に犯人逮捕時に派手に周辺のものを壊した事を注意されると
「仕方無いだろ。犯人を逮捕するためだ」
 ジェイコブはきっぱりと言う。これもまた被害者のために犯人を一刻も早く逮捕したいという熱い思いからしでかした事。
「あんまり無茶な事をしてると上に睨まれてSWATから外されるぞ」
 同僚が懸念を口にすると
「おい、悪い事はしてないのに何で外されなきゃならないんだ」
 ジェイコブは言い返した。
 しかし、血の気が多く過激な行動に出てしまいがちなジェイコブはほどなくして上層部に睨まれてSWATから外されてパトロール警官に回された。

 SWATから外されての日々。
「……こんな事している場合じゃ」
 真面目に警官としての仕事を全うするも荒ぶる魂を抑える事は出来ず、SWATが関わるような事件を耳にする度に鬱々としていた。

 そんなある日。
「……あの女……ただ事じゃなさそうだな」
 いつものようにパトカーで巡回していた所、何かから逃げていると思われる女性を見付け、保護するために急いだ。

 5年前、2019年。地球、どこかの建物内。

「……ここは……パラミタではなさそうですが……どこでしょうか……この人達は……」 目を覚ましたフィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)ことフィリシア・レイスリーはゆっくりと起き上がり、周囲に見知らぬ人々が眠らされたりと倒れている事を確認した。パラミタで平和に過ごしていたはずが気付いたらこの見知らぬ場所にいたのだ。
 どこからかこそこそと何かを相談をする人の声が聞こえて来た。
「……人の声……」
 フィリシアはそろりと声のする方に近寄り耳を澄ます。
 内容を聞いた途端
「……拉致……人身売買……まさか……わたくし……人身売買組織に……このままだと大変ですわ……」
 フィリシアは自分が大変な事に巻き込まれた事を知った。話し声は自分達の商談話であったのだ。
「……(何とか隙を突いてここを逃げて助けを呼ばなければこの人達も……)」
 フィリシアはここを逃げ出す事に決めた。自分の身の安全だけでなく囚われている他の者達のために助けを呼びに行くために。
 それからフィリシアは何とか奴等の隙を突いて逃亡に成功した。
 しかし、問題はそこからだった。

 逃亡後。
「……誰かに事情を話さなければ……でも……ここはどこでしょうか……パラミタではないのは確かですが」
 地球に不案内のフィリシアは助けを求めようとするも自身がいる場所さえも分からず人気のない場所を当てもなく逃げていた。
 そんな時
「!!!」
 目の前にパトカーが現れ
「どうした? 追われているのか?」
 車窓から色気のある渋い男の声が訊ねてきた。
「……」
 見知らぬ場所のためフィリシアは警戒の顔で強面の男性を見た。
「オレは警官だ。君に危害は加えない。何か事件に巻き込まれているようであれば力を貸す」
 ジェイコブは警戒を解こうと出来る限り優しく声をかけた。言葉が本心であると伝わるように。
「…………助けて下さい」
 フィリシアはようやく出会った人の目をじっと見る。その結果、本心かどうかまでは分からないが悪い人には見えなかったため助けを求めた。
「……事情を聞かせて貰おうか」
 ジェイコブは早速話を聞くためにフィリシアをパトカーに迎えた。

 パトカー内。

「……そうか」
 人身売買組織の話を聞いた途端、ジェイコブの身体中に熱いものが吹き上がるのを感じ強面の顔がますます険しくなる。
「……(この人は……悪い人じゃないみたいですわね。見た目と違って優しい人)」
 フィリシアはじっとジェイコブの悪に対して怒りに震える様子から彼の人柄を知った。
「場所を教えてくれ。これから君をさらった組織を潰し、他の子たちを助けに行く。君は……」
 ジェイコブは犯罪者への怒りに満ちた声で訊ねるとともにフィリシアの身柄を安全な場所へ送り届けるか誰かに頼もうとする。
 しかし
「……わたくしも行きますわ。放っておけませんし……あなたの力になりたいですわ」
 フィリシアはジェイコブの言葉を遮り協力を申し出た。ぶっきらぼうだが優しさを感じたからだ。
「……危険だぞ。逃げ出した事を奴等が知ったら……」
 警官として一般人を巻き込みたくないジェイコブは止めようとするが
「分かっていますわ。それでも……」
 危険を覚悟しているフィリシアは一切退かない。
「覚悟をしているならもう何も言わない。俺はジェイコブ・バウアーだ」
 フィリシアの覚悟を決めた顔を見たジェイコブは止める言葉を呑み込み、改めて名乗った。共に戦う仲間に。
「わたくしはフィリシア・レイスリーですわ」
 フィリシアも名乗った。
 互いに名乗り終わったところで
「よし、フィリシア、まずは組織のアジトに潜入にして充分に証拠を固めてから救出に当たるぞ」
「はい」
 ジェイコブとフィリシアは行動を開始した。

 人身売買組織のアジト。

 フィリシアの案内で到着し救出に当たろうとするが、すぐに見つかってしまい
「ばれたからには仕方がない……行くぞ!」
「はい」
 ジェイコブは証拠固めを途中放棄してフィリシアと共に悪人共に向かって行く。
 その途端、窮地に陥ってしまうが
「……」
 それでも悪に屈する様子の無いジェイコブを見てフィリシアは決めた。
「……わたくしと契約を……この窮地を乗り切るために」
 契約を結び、危機を脱しジェイコブを助ける事を。
「……ここを乗り切るため……よし」
 窮地に陥り選択肢のないジェイコブは即座に契約を結んだ。
 契約後は
「囚われている者はお前に任せる。俺はこいつらを」
「はい」
 フィリシアに被害者を任せてジェイコブは大暴れした。その暴れっぷりはあまりにも一方的で組織を壊滅させるほどだった。
 囚われていた被害者も皆無事で組織も壊滅して無事に解決したが、あまりにも向こう見ずだった上にFBIも張り込んでいたため抗議が殺到した。それをきっかけにシャンバラ教導団への研修と言う名目でロサンゼルス市警察を追い出された。

 この出来事がきっかけでジェイコブとフィリシアの新たな人生が始まった。

 そして、現在、2024年。
「……久しぶりの休みか」
「……今日はゆっくり過ごしたいですわね」
 出会った5年前のあの時から様々な事に出会い、結果ジェイコブとフィリシアは夫婦となり幸せな毎日を送っていた。