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ミニイラストシナリオ

ミニイラストシナリオ

イラスト:透子 / ノベル:井上かおる

参加者

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「わあ、空の色が……」
 冬の夜。
 たまたま窓の外に目を向けた山葉加夜は、暗い夜空に白い雪が舞うのに気付いて、カーテンを開けた。
 黒の空に白い模様を描きながら降る雪は、地面も少しずつ白く染め、街の景色を変えていった。
「明日まで雪が残ってるでしょうか」
 期待に胸を膨らませながら、加夜は次の日を待った。

 翌日。
 加夜と山葉涼司は雪の積もった街にお出かけした。
「ほら、息がこんなに真っ白ですよ」
 そう話す加夜の口から白い息がこぼれると、涼司は小さく笑った。
「今日は晴れてるからか、少し暖かいな」
「そうですね。昨日積もった雪も溶けてしまいそうです」
 手を繋いで歩きながら、加夜がふっと視線を横に向ける。
「あ、公園はまだ雪が残ってますよ」
 公園にはまだ誰にも踏まれていない新雪が残っていた。
「新雪って真っ白でキラキラしてて綺麗ですよね」
 太陽の光を浴びて輝く新雪を見て、加夜が楽しそうに笑う。
「ああ、誰にも踏み荒らされてない新雪ってのはキレイだ」
 2人と同じ事思ったのか、小さな男の子が近づいてきて、うれしそうに笑った。
「ママー、見て! 雪がぴっかぴかだよ」
 男の子が呼ぶと、そこにベビーカーを押した母親がやってきた。
「あらあら本当ね。真っ白ですてきだわ」
 母親の言葉に男の子はうれしそうに笑う。
「いいですね、仲のいい親子って」
 母子の姿を見て、加夜は繋いでいない方の手で自分のお腹を撫でた。
「いつか私達にも子供が出来て、親になる日が来るんですよね……。そう考えると不思議です」
 このお腹に自分とは違う命が宿ると思うと、それはすごく神秘的な出来事な気がする。
 まだ体験したことのないをそれを想像しながら、加夜は涼司の方を見た。
「ふふ、そんな日が来るのはいつなんでしょうね?」
 微笑みを浮かべながら加夜が聞くと、涼司が雪と母子を見ながら、ぽつりと答えた。
「そう遠くない未来なんじゃねーの?」
「え?」
 加夜は聞き返そうとしたが、その前に涼司の腹が、ぐぅ……と鳴った。
「あ……」
「まぁ、ふふ」
 ちょっと恥ずかしそうな涼司を優しい目で見ながら、加夜が彼に問う。
「涼司くん、今日は何が食べたいですか? 鍋かおでんにしようかなって思ってるんですけど……」
「そうだな、どっちもいいな」
 涼司は顎に手をあてて考えながら、こう答えた。
「買い物しながら決めようか?」
「はい、そうしましょう」
 2人はどちらともなくお互いの手をぎゅっとまた握って、一緒に公園を出て買い物に向かった。
「帰りまでにこの雪が残ってるといいですね」
 少し名残惜しそうな加夜に、涼司は優しく微笑んだ。
「溶けてしまっても、また降るさ」
「また?」
「ああ。今日溶けてしまっても明日降るだろうし。今年降らなくても、また来年に一緒に見られるだろ」
「また来年一緒に……」
 その言葉に加夜はにっこりと笑う。
「涼司くんが食べたいなら、今日はお鍋とおでん両方でもいいですよ」
「両方!?」
「はい」
 驚く涼司に上機嫌で答えながら加夜は一緒にお買い物に向かったのだった。