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バレンタインミニノベル2011

イラスト:綾瀬みゆき / ノベル:灰島懐音

 いつもよりおしゃれした、赤いチェックのワンピース。
 ひまわり色の大きなリボン。
 手にしているのは白い大きなお皿。
 お皿の上にはチョコレートケーキ。何度も練習を重ねて作った、美味しいんだよと自慢できるケーキである。ケーキの上には『Happy Valentine's Day』と書かれたクッキーのプレートと、 鮮やかな赤が映える苺。ケーキだけでなく、お皿にもチョコソースやフルーツソースでデコレーションが施されており、見た目にも可愛い。
 それを、ウエイトレスがトレイを持つ時のように華麗なバランスで持ち、
真田先輩っ」
 愛しの佐保に声をかけた。
「どうしたでござるか、ミーナ
ミーナがチョコケーキ作りました! 食べましょうっ♪」
「おお、かたじけない」
 佐保が座るテーブルに、ケーキを置いて。
 隣にちょこんと腰かける。
「これは美味そうだ。ミーナは料理上手でござるな」
「そんなことっ」
 ないです、と両手をわたわた振る。
 普段料理を作りはしても、ここまでのものは出来ない。
 今日、この時のため、頑張ったから。
 ――できたんだよ? 先輩。
 でもそんなこと、恥ずかしいから言えるはずがなく。
「えへ。……味に自信は、あります」
 とだけ。
 頬を赤くして、言うのだ。
「そうか、楽しみだ」
 言われた言葉ひとつに浮かれながら、ミーナはケーキを取り分けた。
 プレートの部分が乗るように切って皿に乗せ、佐保の前に置き。
「? ミーナ、フォークがないと食べられないでござるよ」
 きょとんとする佐保に、
「あの、あの。ミーナが食べさせてあげます! あーんしてください!」
 勇気を出して、言ってみた。
「あーん?」
「嫌、ですか?」
「ふむ。嫌とは思わなかったな……お願いするでござるよ」
 あ、と開けられた口。手にしたフォークで一口分ケーキを取り、その中に入れた。
「ん! 見た目以上に美味でござる!」
「本当ですか!」
 その言葉に嬉しくなる。笑顔で佐保が頷く。胸が、ほんわりあたたかい。
「先輩」
 ――ミーナにも、あーんって、してください。
 その言葉は言いたいけど、断られるのが怖くて言えなくて。
 口の中で言葉を転がす。転がすだけじゃ、佐保には届かないけれど。
ミーナ、フォークを借りても良いか?」
 その態度に気付いてか否か、佐保にそう言われた。
 ――やっぱりあーんは嫌、だったのかなぁ。
 ちょっとしゅんとしながらも、素直にそれに応じると、
「あーん」
 ケーキが乗ったフォークを向けられた。
「え、」
「お返しでござる」
 へらっと笑う佐保は、きっとこの行為を深く捉えてはいないのだろうけど。
 それでもやっぱり嬉しくて、
「あー、ん」
 口を開いた。
 ケーキの味は、よくわからなかった。