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ストーリー

『蒼空のフロンティア』オープニングストーリー2 ~絆の行方~ 第2章 最後の授業

『蒼空のフロンティア』オープニングストーリー2 ~絆の行方~ 

浮遊大陸を囲む雲海に、黒雲で覆われた一帯が出現していた。雲の間には稲光が閃き、暴風雨が吹き荒れている。
その嵐の中央に、この世ならざる城が浮かんでいた。
ダークヴァルキリーの呼びかけに応じてナラカより現れた城だ。
誰とも無くナラカ城と呼ぶ、この城の一室に、鏖殺寺院の幹部が集まっていた。
美青年となった、本物の鏖殺寺院の長アズールが困った調子で、彼らの主に伝える。
「ダークヴァルキリー様御みずからがお一人で行かれなくとも。今ヴァイシャリーで事を構えれば、我らの計画にも狂いが生じかねません」
なお捕らえられた偽アズールは、縛られて牢屋に運ばれていた。
ダークヴァルキリーの体にいくつもある目玉が、長をぎょろりとにらむ。
「私ノ勝手よ。空京ヲ壊すノガ駄目なんダカラ、こノくらいイイでしょ。そレニ、おかゲで姉サんモ見つケタ」
「なんですって?!」

ダークヴァルキリーが話した内容に、幹部達は衝撃を受けた。
長が緊張した口調で、一同に告げる。
「姉君は、なんとしても我々が確保せねばならぬ。
それには彼女のパートナーは邪魔。しかも魔剣の主となれば、なおさら!」
鏖殺博士が酷薄な声で指摘する。
「パートナーを始末する必要性や効果は見込めますわ。
けれど単純に殺しては被検体、いえ、姉君様に思わしくない影響も出る可能性があるかと」
「うむ……どうしたものか」
すると居並ぶ幹部の中から、ミスター・ラングレイが進み出た。
「長よ。姉君の確保、及び高根沢理子の抹殺は、私にお任せいただけないでしょうか?鏖殺博士にも武器開発の面で手伝っていただきたく思います」
「ふむ、貴様であれば、あの小娘の処理もたやすそうだな。任せよう。博士もそれで構わぬな?」
鏖殺博士がうなずくのを見て、ラングレイは「ありがたき幸せ」と頭を垂れた。

会合の解散後、鏖殺寺院幹部白輝精(はっきせい)は足早にラングレイを追いかけた。
「どういうつもり?!あなたが高根沢理子の殺害を請け負うなんて……」
焦った様子の白輝精に、ラングレイは無表情に返した。
「適材適所ですよ。私なら魔剣や高根沢嬢には一日の長がありますから。
それに、私が自身の最愛の者ですら何人も手にかけてきた事は貴女もよく知っているでしょう?
それともエリゼ宮の主には、何か不都合でも?」
パチン、と音が響いた。白輝精がラングレイの頬を平手打ちしたのだ。
怒りなのか小さく震えている白輝精に、ラングレイは少々むくれながらも頭を下げる。
「失礼しました。エリなんとかは私も言いす、ごっ?!」
白輝精は今度は拳で殴った。
「馬鹿!!!!」
白輝精は言い捨てて、テレポートで消えてしまう。
ラングレイは訳が分からないという顔で頬をさすった。
「何なんだ、あのヒス蛇……」
彼は額を押さえた。少女達の屈託のない笑顔が脳裏に浮かぶ。

「また授業してくださいね!」

ラングレイは大きくため息をついた。
(……すまんな。約束、守れそうにない……)

窓辺で煙草をふかしているラングレイを、鮮血隊将軍の林紅月(りん・ほんゆぇ)が探しに来る。
「ここにいたか。テレポートで帰るなら、そちらから来てくれぬか」
「いえ、戻るつもりはありません。神殿の人達に迷惑をかけますから」
紅月は驚き、彼をまじまじと見た。
「……魔剣の主殺害の為に、表の顔は捨てるつもりか?」
返事は無い。ラングレイは煙草の煙を目で追うだけだ。紅月は肩をすくめる。
「ならば恋人ぐらいは手元に呼んでおけ。ここで貴様に潰れられては堪らん」
放っておけば紅月自身が呼びに行きそうな口ぶりだ。ラングレイは物憂げに返す。
「彼は今、来られません。ですが、すでに私の方で手は打ちました」
ラングレイはそう言うと、首にかけたペンダントを握りしめた。

ダークヴァルキリーは自称アズール強奪に的を絞っていたようで、ヴァイシャリーの被害は襲われた屋敷周辺に留まった。
そのためヴァイシャリー家主催の舞踏会は、予定通りに開かれる事になった。もっとも警備は増強せねばならないだろう。
いつもは弱気な、百合園女学院の桜井 静香(さくらい・しずか)校長も、今回はすぐに行動に出た。
「さらわれた自称アズールちゃんを助け出してほしいんだ。
もちろん百合園でも捜索するけど、情報や協力は皆から求めるよ」

リコとジークリンデはその依頼に応える形で、蒼空学園の生徒達と合流してヴァイシャリーから空京へ向かっていた。シャンバラ宮殿でクイーンヴァンガードに協力を求めるためだ。
ヴァンガード隊の皇彼方テティス・レジャが、リコ達に同行する。先日の一件を聞いた彼方達は、ジークリンデを気遣う。
「ジークリンデさん、あんな狂った怪物の言う事なんか気にしない方がいいぜ」
「そうよ。それに万一そうだったとしても、ジークリンデさんはジークリンデさんなんだから。気にする必要、ない」
「ありがとうございます」
礼儀正しく二人に応えるジークリンデ。気丈に振るまう彼女に、テティスは心配そうだ。突然、十二星華であると判明した自身に重ねてしまうのだろう。
山葉 涼司 (やまは・りょうじ)はしたり顔で、ジークリンデに言う。
「大丈夫だって。環菜なら、逆に姉ってのを利用するぐらいするだろ。イテッ」
花音・アームルート(かのん・あーむるーと)がデリカシーのない涼司をどついた。
「何するんだ?!」
「別に?涼司さんが、メイド喫茶目当てに空京に行くのなんて、あたし、まったく気にしてませんから!」
「いや、それは……」
苦しげな涼司に小谷 愛美(こたに・まなみ) が助け船を出す。
「花音さん、山葉さんは供養してあげなきゃ暴れだすから、大目に見てあげましょ」
「供養って何だ?!な、なぜ皆そんな気の毒な物を見る目で俺を見るッ?!」
リコが彼に、にっこりと笑いかける。
「大丈夫よ。山田君の事はあたし達、永遠に忘れないわ」
「俺はや・ま・はだー!」
野原に、リコ達の笑い声が響く。
風はまだ冷たいが、周囲の木々の蕾は膨らんできていた。

声は突然に響いた。
「シャンバラには未知の野生動物も多い。また、作戦で恨みをかう恐れもあるのですから、周囲の警戒は道中も怠らない方がよろしいですよ」
「誰?」
リコ達は辺りを見回す。ザッと音がして、一人の男が彼らの前に現れた。黒衣だが、その顔は巻きつけられた包帯によって隠されている。
「ラングレイ?!」
鏖殺寺院幹部の登場に、生徒達は警戒して戦闘態勢を取る。だがラングレイは意に介さない調子で、ジークリンデに告げた。
「我が主の姉君をお迎えに伺いました」
「ジークリンデは渡さないわよ!」
魔剣を振りかざして勢いよく突っこんだリコを、ラングレイはあっさりかわす。
「とりあえず攻撃、という行動は、身の破滅に繋がるぞ、高根沢」
「えっ?!」
ラングレイの口調に、リコは戸惑う。そして、ある事に気づいた。
「あんた……なんで今日は目の色が違うのよ。瞳は青じゃなかったの?!」
目の前にいるラングレイの瞳は今、琥珀色だ。
ラングレイは息をついた。無言で、顔を隠す包帯に手をかけ、取り去った。

「砕音先生?!」

生徒達の驚きの声がハモる。
ラングレイの素顔は、蒼空学園の教師砕音・アントゥルース(さいおん・あんとぅるーす)そのものだった。
リコが震える声で聞く。
「なんで行方不明だった砕音先生が……ラングレイのマネなんか……」
砕音は静かに答える。
「マネじゃない。俺が、ミスター・ラングレイだ」
声を失ったリコに代わり、涼司が彼に聞きただす。
「環菜を、蒼空学園を騙してたのか?!」
「そういう事になるな。……パラミタの他国からシャンバラを守っているのがドージェの脅威なら、地球各国からシャンバラを守る最大の功労者は御神楽環菜校長だ。
だが彼女でも、正しい情報が無いまま正しい判断を下すのは無理だろう」
しかし砕音の言葉を、涼司がさえぎる。
「言い訳なら取調室でするんだな。彼方、理子、こいつの獲物は銃だ。至近距離から斬り込めば勝てる!」
戦いが始まった。しかし砕音の銃撃一閃で生徒達は倒れ伏し、すぐに終わる。
砕音は地面に転がる生徒達の間を、ゆっくりと歩く。
「見た目や物事の表面だけで判断すると痛い目に会うぞ。おまえたちは正義と勝利を約束された物語の主人公じゃないんだ」
そう言うと、砕音は倒れているジークリンデを、両手で恭しく抱き上げた。
そして、ショックで戦う事もできず、その場に座り込んでいたリコに、砕音は冷たく告げる。
「高根沢理子、次に会った時は、必ず俺がおまえを殺す。
……鏖殺寺院がジークリンデ様と、あの名も無き少女を殺す事はない。それだけは安心しろ」
そう言うと、砕音はジークリンデを連れて立ち去った。

「ふえぇ~、食あたりの時みたいに体がビリビリするのぉ~」
地面に転がるマリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)のベソで、呆然としていたリコはハッとする。
「生きてたの?!」
それには彼方が答えた。
「ああ、だが体が痺れて動かない。皆も無事か?」
口々に返事があった。愛美はぼやく。 「もー。マリエルってば乙女にあるまじき例えは、やめてよね……」
痺れの中心に触れると、変形した弾丸が防具にめり込んでいた。特殊弾丸に込められた魔力が、痺れの原因だ。それも徐々に引いていく。
「皆、命があるのね。よかった……」
ティセラに友達が殺された時の記憶を蘇らせていたテティスは、ほっと息をつく。十二星華の一人、天秤座(リーブラ)のティセラは、女王候補宣言の会場に乱入して、警備にあたっていたクイーンヴァンガード達を何人も殺したのだ。
彼方は悔しそうに言う。
「とにかく携帯電波の通じる所まで行って、この事を隊や学園に報告だ」

嵐の空。ジークリンデを乗せた鏖殺寺院の飛空艇は、ナラカ城に向かっていた。
(ダークヴァルキリーに会えば、私が彼女の姉かどうか思い出せるかも。
皆の為にも、私が事実を確かめなければ……!)
火の点いていない煙草をくわえたまま無言の砕音に、ジークリンデは厳しい視線を向ける。
「あなたの目的は何?鏖殺寺院幹部なのに、女王陛下復活の鍵を握る神子を探すよう求めたり……」
「……実は神子を探し出せていない鏖殺寺院が、学生に探させよう、という作戦なのかもしれませんよ?」
砕音は彼女に視線をあわさず、答える。しかしジークリンデは納得しない。
「それでは辻褄が合いません」
砕音は少し考えると、ぽつりと言った。 「貴女が過去の記憶を思い出せないのは、貴女のせいではありません。負い目や責任を感じられる必要など……うぅッ!」
砕音は突然、胸を押さえてうずくまった。ジークリンデは戸惑うが、彼に近づいて、その背をさすった。
しばらくすると砕音は身を起こし、彼女の手を外す。彼の瞳は何か言いたげだったが、何も言葉は出てこない。
ジークリンデは代わりに言った。
「私に、何か出来る事は無いのですか?
シャンバラ復興の為に……今ここに生きる人達の為に、私はもう逃げたくないんです」

このストーリーの続きは3月13日(土)開始予定のグランドシナリオ、
『建国の絆 第二部』で楽しめます!
皆さんのキャラクター次第で『蒼空のフロンティア』のゲーム世界の明日が決まります。
お楽しみに!

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