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シナリオガイド

ビリーさんはかく語りき
シナリオ名:フィクショナル・ニューワールド / 担当マスター: 革酎

 蒼空学園校長室で、山葉 涼司(やまは・りょうじ)校長が手にした報告書を仏頂面で眺めています。
「……ひとりで行かせたのは、拙かったな」
 その報告書には、山葉校長の依頼で、とある調査へと向かった加能 シズル(かのう・しずる)が今もって調査から戻っていない旨の内容が記されてあったのです。
 執務デスクに報告書をぽんと放り出した山葉校長は、頭の後ろで両手を組みながら、革張りの椅子に上体を預けて天井を眺めました。
(次は人数を集めて向かわせるか)
 数分後、山葉校長はシズル以下、脱出不能と思しき状態に陥った蒼空学園生徒達の捜索及び救出の為の人員を催す通告を、蒼空学園の内外に発令しました。

 蒼空学園の第二学舎群内に建つB303号棟の三階。
 その中の日本史資料電脳閲覧室にて、異変が発生していました。数日前から、この電脳閲覧室を利用した者が全員、ログアウトせずに篭もりっきりとなっているのです。
 日本史資料電脳閲覧室では、利用者が自身の脳波を閲覧用ターミナルと呼ばれる装置と同調させることで、過去世界をバーチャルに体験する歴史体験コーナーが人気を呼んでいました。
 ところが、通常であれば数十分、長くても数時間程度でログアウトする筈の利用者達が、一向に意識を回復させず、電脳過去世界にダイブしたきりになってしまっていたのです。
 この歴史体験コーナーにログインした者を、正規のログアウト手順を踏まずに無理矢理システムから引き離すと、二度と意識が回復せず、そのまま植物人間状態に陥る可能性が高い為、力ずくでログアウトさせることも出来なくなっています。
 一般人相手にはリスクが高過ぎる為に地球上での公開は為されていませんが、コントラクターにもなれば安全管理に支障は無いとして導入されたという経緯があります。が、今回に限っていえば、その判断が裏目に出てしまった格好です。
 既にシステム開発元には解析を依頼してありますが、ログインした生徒達の意識回復まではサポート契約外である為、蒼空学園が責任を持って、ダイブした生徒達を何とかログアウトさせる必要がありました。
 そして山葉校長から調査の依頼を受けてこの電脳過去世界へとダイブしたシズルも、二日経った現在、まるでログアウトする気配がありません。
 山葉校長が人員を催して捜索と救出活動の対象としているのは、まさにこの、電脳過去世界の彼方に消えた人々なのです。

「うっ……いたたたたた……」
 やや肌寒い宵闇の中で、シズルは側頭部を右掌でさすりつつ、ゆっくりと起き上がりました。
 一体、何があったのか。
 歴史体験コーナーの閲覧用ターミナルにてログインした直後の記憶が、全く残っていませんでした。代わりに側頭部でずきずきと疼く痛みが、シズルの意識を混濁の中から引きずり起こします。
 周囲の雑踏から、まるで突き刺さるような視線が次々と降り注がれてくるのが分かり、シズルはいささか茫漠とした表情で周囲を見渡しました。
 今、自分が居る場所がどこなのかも、よく分かりません。シズルの視界に飛び込んでくるのは、老若男女様々な人影の数々ですが、どの顔も特に変わり映えのしない、ごく普通の一般市民のそれでした。
 ただ、決定的に違和感を覚える共通した特徴がひとつ。
 それは、シズルの周囲を行き交う人々の服装にありました。どの通行人も、ひどく古めかしいたたずまいを見せているのです。
 長着に羽織を身につけた成人男性、小袖に打掛姿の成人女性、或いは矢絣に女袴の女学生、そうかと思えばフロックコート姿で蝙蝠傘を杖代わりに携える山高帽の若者、などなど。
 時折見かける子供達は、裾を端折った丹前姿や、或いは襦袢だけの格好などで走り回る姿もありました。
「ここは、恐らく電脳過去世界の中ね……でも、一体どの時代?」
 シズルは息を呑む思いで、ろくに舗装もされていない路面から、そっと立ち上がりました。幅の狭い道の左右には長屋造りの仲見世がずらりと並び、客引きの声がひっきりなしに聞こえてきます。
 そして、通りの向こうに見える、ひときわ異彩を放つ巨大な鉄の塊が、シズルの意識を釘付けにしました。
 50メートルは越えようかという鉄塔と、その足元で煌々と輝きを放つ石造り、或いは煉瓦造りの建物の群れが、そこだけはまるで別世界であるかのような強烈な存在感を放っていたのです。

『あれあれ、まぁたおひとり、堕ちてきはったんかいな』
 不意に、シズルの頭上で妙に粘つくような響きを持つ男性の声が響きました。
 何かと思って振り仰いでみると、薄闇の中の宙空に、30cm程の体長の、まるで人形のような坊主頭の中年男性がふわふわと浮いています。
 周囲の雑踏は誰ひとりとしてその小さな坊主頭に注意を向けていないところを見ると、その存在を視認出来るのは、どうやらシズルだけのようでした。
 恐らく、その声もシズル以外には聞こえていないのでしょう。
 シズルは周囲からの注意を引かぬよう、目線だけを上に向けて、小声で問いかけます。
「あなたは、一体誰? それに、ここはどこの、何という街なの?」
『あぁ、やっぱりあんたも、あのバグにしてやられたクチやねんなぁ』
 宙空の坊主頭は、やや下膨れの瓢箪のような面に苦笑を浮かべ、自身の頭をぺたぺたと叩いています。シズルはじっと黙って、相手の言葉の続きを待ちました。
カレーニナのエイコさんが変に暴走して、あのけったいな力を出し続けるさかい、次から次へと堕ちてきはるから困っとりまんねん』
「愚痴る前に、私の質問に答えてくれない?」
 若干苛々した調子でシズルが僅かに声を上ずらせると、宙空の坊主頭は仕方無さそうに、ある一点を指差しました。シズルが目線で追うと、仲見世の表に貼り出された日めくりカレンダーが、大きな柱の上で夜風に踊っていました。
 シズルはそこに書かれた日付ではなく、年号に、何となく息を呑みました。
(大正2年……)
 心の中で呟いてから、シズルは再度、頭上の坊主頭を振り仰ぎます。が、その時にはもう、あの不思議で小さな中年男性は姿を消していました。
 ただ、シズルの頭の中に声だけが残照のように響きます。
『わてはここのウォッチドッグシステムのビリー・ケインっていいますねん。親しみ込めて、ビリーさんって呼んだってや〜』

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 本シナリオガイドをお読みくださり、ありがとうございます。

 今回下名が用意しましたのは、大正時代初期の大阪・新世界はルナパークと初代通天閣でございます。
 ルナパークというのは、明治45年、第5回内国勧業博覧会の跡地に建設され、大正12年まで営業を続けた遊園地です。また、初代通天閣は現在の通天閣とは異なり、パリのエッフェル塔と凱旋門とをごっちゃにしたような形状をしていました。
 当時はこの通天閣とルナパークを中心として、新世界と称された一大商業地帯が展開されていたのです。

 今回当シナリオにご参加頂ける皆様方には、シズルや他の蒼空生をこの電脳過去世界から、現実世界へと連れ戻すアクションを考えて頂きたいと思います。
 捜索救援隊として電脳過去世界にログインする場合、緊急避難用の強制ログアウトキーが付与されますが、既にログインして脱出不可能となってしまっている者はこの強制ログアウトキーは使用出来ません。そして救出が叶わず、強制ログアウトキーで脱出した場合はミッション失敗となりますので、ご注意ください。
 或いは、シズルと同様、この電脳過去世界からログアウト不可能となってしまった被害者として、脱出を試みるアクションでも結構です。
 但し、この電脳過去世界ではビリーさんのいうカレーニナのエイコさんなる障害が立ちふさがります。そう簡単に現実世界には帰らせてくれないでしょう。
 また、電脳過去世界は意識の中だけの世界ですので、コントラクターの力は思うようには発揮出来ません。

 何かと厄介な問題ばかりが出揃う電脳過去世界ですが、どうぞ皆様、シズル達を無事に現実世界まで導いてあげてくださいませ。

▼サンプルアクション

・シズル達を無事に脱出させる。

・電脳過去世界からの脱出。

・エイコさんなる存在の正体を突き止める。

・脱出するのも忘れてルナパークや初代通天閣を観光。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2011年04月05日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年04月06日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年04月10日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年04月20日


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