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シナリオガイド

謎が謎を呼ぶ密林地帯。敵は植物? 機械人形? 神殿『緑の心臓』の謎とは!?
シナリオ名:ハート・オブ・グリーン / 担当マスター: 桂木京介

 シャンバラ教導団、団長執務室。
 部屋というよりは広間、もう少し詳しくいうなら謁見の間といったところでしょうか。硬質で冷えた印象はあるものの、無機的な中に独自の美意識が光る内装が施された部屋です。
 その主の名は、誰もがご存じでしょう。シャンバラ教導団団長金 鋭峰(じん・るいふぉん)、今、玉座に深く腰掛け、来客に鋭い一瞥を向けた人です。
 来客とは、階下の椅子に座すアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)でした。
「エリザベート校長の代理、大儀。楽にするがいい」
 本日のアーデルハイトは、鋭峰が言うように代理でこの席に来ております。本来ならばこういう場には、イルミンスールの校長エリザベート・ワルプルギスが出席するべきなのですが、エリザベートは終生の好敵手たる御神楽環菜の死に大きなショックを受けており、しばし公務を果たせないでいるのです。
「なに、私はいつも楽にしておる。お構いなくというやつじゃ」
 魔女の帽子をテーブルに置いたアーデルハイトは、刺すような鋭峰の視線、および彼の威圧的な言葉使いにもどこ吹く風でした。アーデルハイトは、大変マイペースな人なのです。
「この床、よく見ると、気配を消して歩こうとしても必ず音の出る構造になっておるのぅ。権力者が暗殺よけとして好むしかけじゃ」
 などと足元を踏み鳴らしたりして実に無遠慮…………いえ、リラックスしております。
 鋭峰はしびれを切らしたように空咳しました。
「会合をはじめたいのだが」
「どうぞどうぞ、資料は前もって送っとるじゃろ。検討結果から話してくれればよいぞ」
 この部屋で鋭峰に見おろされた者の反応は二つに大別されます。おおよそ九割は、彼の偉容に圧倒され萎縮するものであり、残る一割は逆に、敵愾心を抱き反発するのがこれまでのパターンでした。どちらの反応も、鋭峰にとっては予想の範囲内です。
 それゆえ、怖じもせず怒りもせず、ただ自然体のアーデルハイトに対し、鋭峰は少々やりにくそうでした。
「……その前に、その席に私も降りたほうが貴君も話しやすいのではないかな」
 なので思わず、こんな譲歩をしてしまいます。これは以前、鋭峰の元を訪れたエリザベートが「そんな高いところで偉ぶってる人とは話せないですウキー!」っとバナナを投げながら怒ったことを思い出したからでした(※細部は現実とはかなり違いますが、鋭峰はそのように記憶しております)。こんな風に自分から譲歩を持ち出すなんて、普段、遠慮や謙譲というものを一切しない鋭峰にしては珍しいことです。
 ところがアーデルハイトは無用と答えました。
「構わんぞ。そちらこそ、いつものように高所におるほうが話しやすかろう」
「……なら、そうさせてもらう」
 見た目は幼子のくせに可愛くない女だ――鋭峰は内心舌打ちします。いつものように高所におるほうが話しやすかろう、とはずいぶんな皮肉ではありませんか。要するに、鋭峰はいつも他人を目下と見なしている、という意味です。向きになって反論するのは見苦しく、かといって肯定するのも大人げない、聞き流すにしてもひっかかりる発言です。ああ見えてアーデルハイトは、さすが実年齢五千歳といえましょう。人間力で競い合うとまるで教師と生徒、鋭峰のほうに青さが露呈してしまいます。
 鋭峰はこれ以上主導権を渡さぬよう、あえてゆっくりと話しました。
「李梅琳 、報告書を読み上げよ」
 鋭峰が手を鳴らすと、シャンバラの女性軍服に身を包んだ李梅琳(り・めいりん)が彼の前にひざまずきました。
「はっ、イルミンスール提供の資料から導いた現状について報告します」

 梅琳が語った内容は以下の通りです。
 現在、ジャタの森の外れに、異様な植物の群生地が出現しています。
 はじめは、気候風土にそぐわない熱帯植物がまばらに様相を呈していただけのものが、わずか数週間でみるみるうちに成長、いつしか広大な、高温多湿の密林地帯へと変化してしまったようです。
 異常な速度で成長しているところからもわかるように、決して普通の植物ではありません。この植物たちは人を襲うのです。巨木の太い蔦、棘や毒のある草、あるいは食虫植物が異常進化したようなものが、まるで意思を持つかのように侵入者を攻撃し排斥し、ときとして食らおうとするといいます。もはや密林は、立ち入ることすら困難な独自の世界へと変貌していました。
 しかも群生地はこうしている間にも増殖を続けています。静観するわけにはいきません。
 悪いことはこれだけではありませんでした。
「塵殺寺院の動きが見える、という話だな」
 鋭峰は眉間にしわを寄せています。
 決死の調査班が森に潜入し、いくばくかの情報をもたらしました。それによると密林内には、灰色の甲冑騎士……塵殺寺院のものと思われるアイアンゴーレムが、群体で徘徊しているとのことです。
「植物異常発生の影には塵殺寺院の存在があるのか? あるいは、きゃつらも群生地を調査しているのかのう?」
「塵殺寺院まで関わっているとなれば我々も動くほかない。以前、塵殺寺院の秘密工場を破壊したときに続き、今回も共同作戦の申し出を受けるとしよう」
「即断即決、さすが話が分かるのう、金さんや」
「伊達に私も元首をやっていない」
 金さん、などというお江戸のヒーローじみた呼び方は無礼のうちに入りますが、どうにも意のままにならないアーデルハイトが自分を称えたので、金鋭峰はいくらか気を良くしていました。

 襲いかかってくる植物と戦いながら、異常植物大発生の原因をつきとめましょう。そして禍根を断ち切るのです。これが第一の使命となります。
 戦う相手は植物だけではないでしょう。塵殺寺院のアイアンゴーレム部隊とも、この特殊状況下で干戈を交えることになります。事件の下手人は塵殺寺院なのでしょうか? それとも塵殺寺院もまた、植物に脅威を感じて調査に来たのでしょうか? アイアンゴーレムと交戦し、塵殺寺院の目的を明らかにすること、これが第二の使命です。

「五千年も生きておると、昔のことは色々忘れてしまってのう。じゃが……」
 アーデルハイトが口を開きました。
「このあたりには確か、『緑の心臓』と呼ばれる古代神殿があったはずじゃ。参詣する者はとうに絶え、朽ち果てて遺跡同然だったはずじゃが……もしかしたらこれが何か関係しておるのやもしれぬ」
「確かに無視はできんな。ならば遺跡の探索にも人員を割くとしよう」
 森に隠された遺跡『緑の心臓』を発見しこれを探索すること、これもまた使命となるでしょう。

「かくて作戦は決行、だな。李梅琳、現地の指揮を貴官に命じる」
「はっ!」
「貴官の最初の役目は人員集めとなるだろうな。人員に制限は課さぬつもりだが、探索という目的があることを明確にすること。従って、最初から密林を焼き払わんと試みるような過激な者は拒否だ。あるいは、明らかに有害なこれら植物を保護しようとするような者も除くように。では、退出して沙汰を待て」
「御意のままに」
 梅琳はきびきびと退出します。久々に大きな作戦を任せてもらえたことが嬉しいのでしょう。彼女は興奮に顔を上気させ、拳をぐぐっと固めていました。
 鋭峰とアーデルハイトは部屋に残り、作戦の細部の確認を行っていました。
「……ところで」
 ある程度まで話が進んだあたりで、アーデルハイトは何気ない風で呟きました。
「先日エリザベートがここを訪れたときは、中華な菓子類で歓待してもらえたと聞いたが」
「必要なのか? 貴官は左様なものに興味はないかと……」
「食べたいに決まっておるっ! エリザベートやミーミルだけ良い目を見て、私だけノケモノなどということがあっていいはずはないのじゃーっ! そうでなきゃこんな面倒な役、どうして引き受けたりするものか……」
 などとアーデルハイトはブツブツと言っております。これを見て、
(「やはり度し難き女よ。見た目通り幼いところがあるのか……? それとも、私をたばかるための演技か?」)
 どうとも判断しかねる鋭峰です。
 ちなみに、正解は前者です。

 *******************

 密林の奥部。
 彼女は、息も絶え絶えに密林をさまよっていました。
 顔にも膝にも胴や首筋にも、幾多の傷痕があります。鋭い刃物で傷つけられたような傷です。彼女が着る服装は浴衣のようですが、ひどく汚れ、切り裂かれ、もう模様すら判然としません。
 それどころか彼女の右腕は、肩のところからすっぱりと切断されているのでした。
 もちろん、普通の人間ならとうに事切れていることでしょう。ですが幸か不幸か彼女は普通の人間ではありません。元は塵殺寺院で使われていた機晶姫――クランジと呼ばれていた特別な機体です。
 息も絶え絶え、いま倒れることができたらどれほど楽か。しかし彼女は逃亡を続けるのです。機晶姫に本能があるのかは議論の分かれるところかもしれませんが、足を引きずり逃げつづけるその姿は、生存本能につき動かされているようにも見えました。
 密林を歩きに歩き、その南東部、ようやく見つけた山肌に、洞穴が口を開けているのを彼女は目にしました。
 追われる小動物がそうするように、穴に身を滑り込ませます。

 *******************

 冒険の舞台は緑の地獄、環境そのものが敵となり襲いかかってくることでしょう。
 それでも勇気をふるって密林に踏み込み、探検するのは誰でしょう?
 神殿に挑み、その謎を解き明かすのは誰でしょう?
 魔の植物や塵殺寺院と戦うのは? 
 あるいは、クランジとの邂逅を果たすのは……?
 そうです! それはほかでもないあなたです! あなたの挑戦をお待ちしています!


担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
 もし参加して下さるのであれば、重ねてお礼申し上げます。
 マスターの桂木京介です。

 密林探検にともなう冒険活劇、これが今回のテーマです。
 所属校による制限はありません。戦闘には自信があるぜ! というベテランさんはもちろん、このシナリオが初冒険、という初心者さんの参加もお待ちしております。これは以前も書きましたが、戦いの趨勢を決めるのは決して、数値的なレベルではないのです。それを決めるのは、アクションに表されるあなたの『想い』です。そのことを忘れないで下さい。
 例によってミッションを複数に分けていますので、ご自身の進むべき道をこの中から見出してみましょう。

 植物はまるで意思があるかのように、侵入者を排撃しようとします。蔦が鞭のようにしなって攻撃し、茨を持つ植物がこちらを包み込んで殺そうとするかもしれません。刃のような葉を降らせる植物、毒液を放つ草木、人間を食料とみなす巨大食虫植物の存在には特に警戒が必要です。これら脅威を切り払いながら、植物の暴走の原因をつきとめましょう。
 古代遺跡『緑の心臓』は、蔦に覆われた石造りのピラミッド、マヤ文明のそれに似ているようですね。内部は迷路状になっているようです。変異植物がその内部まで入り込んでいる可能性もありますので、探索の際はご注意を。遺跡内部に事件の鍵が眠っているかもしれません。
 塵殺寺院のアイアンゴーレムは、端的にいうならば重装甲をした騎士の甲冑です。槍や剣、大斧で武装していますが、火気を内蔵している個体もあります。数体から数十体が一組で行動し、一体一体の力はさほど強くないものの、かなりの数が投入されているようです。ですので、戦闘時は単身で突出すると危険です。ただ倒すだけではなく、できれば塵殺寺院の目的も明らかにしたいところです。

 また、桂木が担当した過去のシナリオ『ラビリンス・オブ・スティール』『切なくて、胸が。 〜去りゆく夏に』に登場した『クランジ(機晶姫)』の生き残りも本シナリオに姿を見せています。現在の彼女の様子から推察できるように確実に何かに追われていますので、クランジとの接触を目指す場合、追跡者との遭遇にもご注意下さい。

 以上、皆様のご参加を楽しみにお待ち申し上げております。次はリアクションでお会いしましょう。
 桂木京介でした。

▼サンプルアクション

・植物と戦いながら密林地帯を調査、異常発生の原因をつきとめて禍根を断つ。

・塵殺寺院のアイアンゴーレムと戦い、彼らの目的をつきとめる。

・神殿『緑の心臓』を見つけだし探索する。

・クランジが消えた洞窟までたどりつき、彼女との邂逅を果たす。

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2010年09月23日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年09月24日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年09月28日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年10月13日


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