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シナリオガイド

己の目で見たものを、信じるな
シナリオ名:オブジェクティブ / 担当マスター: 革酎

 少し前まで、蒼空学園B303号棟三階の日本史資料電脳閲覧室には、歴史体験コーナーと呼ばれるちょっとした人気の設備が存在していました。
 この歴史体験コーナーでは、利用者が自身の脳波を閲覧用ターミナルと呼ばれる装置と同調させることで、過去世界をバーチャルに体験することが可能でした。
 ところが、この電脳過去世界にログインした生徒達がログアウト出来なくなるという事件が発生し、蒼空学園校長山葉 涼司(やまは・りょうじ)は捜索救援隊を組織して、ログアウト不可となった生徒達を救出する作戦を実行したのです。
 その結果、ほとんどの生徒達はログアウトに成功したのですが、ただひとり、料理研究部『鉄人組』の副長三沢 美晴(みさわ みはる)だけがログアウトせずに、電脳過去世界に留まりました。
 実はこのログアウト不可となった原因は、電脳過去世界を構築する仮想構成界築造エンジンフィクショナルに仕込まれたウィルスマーダーブレインの仕業だったのです。
 マーダーブレインは電脳過去世界にログインした生徒達、即ちコントラクターの脳波をコピーし、どこかに隠されてあるサーバーに蓄積していました。そして、コントラクターの複雑な脳波をもとにして防御不可能なウィルスパターンを生成しようとしていたのです。
 全員がログアウトした時点で、脳波データを蓄積しているサーバーとの通信が途切れる仕組みとなっていた為に、誰かが電脳過去世界に留まらなければならず、その結果、美晴がひとりでログイン状態を維持することとなったのでした。
 その後、日本史資料電脳閲覧室はフィクショナルの開発元であるマーヴェラス・デベロップメント社によって封鎖されてしまい、誰ひとりとして、電脳過去世界にタッチすることは出来なくなりました。
 この時点で、マーダーブレインと脳波データにまつわる事件は、一度は蒼空学園の手から離れた筈でした。
 ところが――。

     * * *

 蒼空学園校長室の応接スペースに横たわる黒革張りの大きなソファーに、山葉校長と加能 シズル(かのう・しずる)が並んで腰を下ろしていました。
 そしてノートPCが置かれた応接テーブルを挟んで反対側のソファーには、黒っぽい色合いのスーツで全身を包み、サングラスで目元を隠した四十代の精悍な男性が座っています。
 彼の名は、ジェイク・ギブソン
 マーヴェラス・デベロップメント社のテクニカル・エージェントという肩書きを持つ人物だそうです。応接テーブルに置かれているのは、このエージェント・ギブソンが持参したノートPCでした。
 エージェント・ギブソンの座すソファーの背後には、同じように黒っぽい色合いのスーツをまとったふたりの男性達が、矢張りこれまたサングラスで目元を隠し、直立不動の姿勢で佇んでいます。恐らく、エージェント・ギブソンの部下なのでしょう。
 さて、このエージェント・ギブソンですが、彼は山葉校長に、思わぬ用件をもたらしました。
「……脳波データを蓄積しているサーバーの位置が分かったってのは、本当なのか?」
「はい。丁度、ツァンダ南方山岳地帯のこの辺りとなります」
 いいながらエージェント・ギブソンは、山葉校長とシズルに、ノートPCのLCD上に浮かび上がる地図のある一点を、手にしたペンの先端で指し示します。
 覗き込んだ山葉校長は、ここで眉間に皺を寄せ、胡乱げな目つきでエージェント・ギブソンに視線を送りました。
「確かここは……以前、天御柱のイコン発掘調査隊があらかた調査を終えた遺跡がある場所だよな?」
「その通りです。調査済みの遺跡だからこそ、誰にも見向きもされず、発見される心配が無いと踏んだのでしょうな。マーダーブレインを仕込んだ連中はそこに目をつけて、スパダイナを設置したようです」
 スパダイナとは、電脳過去世界でコピーしたコントラクター達の脳波データが蓄積されている巨大なルーターマシンである旨の説明が、既にエージェント・ギブソンの口から為されていました。
 更に曰く、スパダイナは機晶石を動力源とする発電装置を内蔵しており、おまけに他のルーターやサーバーとの通信は、同じく機晶石を利用した強力な暗号化遠隔無線を使用してXルートサーバーを経由しているらしく、ネットワーク上に存在するノードでありながら、マシン自体は完全なスタンドアローン形式で自律稼動しているというのです。
「なるほど、道理でなかなか見つけられなかった訳だな」
 山葉校長が感心したように腕を組んで唸っていると、その隣からシズルが、怪訝な表情で問いかけました。
「だけど、そこまで分かっているのなら、どうしてすぐに技術者を派遣しないの? 三沢さんは今もひとりで、あのマーダーブレインと電脳世界の中で戦っているのよ?」
 やや苛立ちを含んだシズルの声に、エージェント・ギブソンはノートPCを操作し、別の画像を表示させました。
「これをご覧ください。ミス加能には、見覚えのある容姿ではありませんか?」
 その画像を見た瞬間、シズルは息を呑みました。
「ちょっと待って……どうして、こいつが、現実世界に居るの……?」
 そこに映し出されていたのは、ツァンダ南方山岳地帯の中腹付近の森林に佇む、3メートル近い巨躯の姿でした。
 エージェント・ギブソン曰く、マーヴェラス・デベロップメント社に所属するスパダイナ捜索チームのカメラマンが、望遠レンズで捉えたデジタル画像であるとのことです。
 鈍い黒光りを放つ鋼糸製の三度笠を目深に被り、同じく鋼糸製の蓑でほぼ全身を覆っているというその不気味な体躯は、シズルには決して忘れられない姿でした。
 実はこの巨体こそ、シズルが電脳過去世界で遭遇した、マーダーブレインの姿だったのです。
 コントラクター20人分の脳波データを取り込んだ怪物。いってしまえば、単体でコントラクター20人に匹敵する強さを誇るという、とんでもない化け物なのです。
「どうやら奴は、電子結合映像体を完成させ、現実世界に結像するシステムを獲得したようです」
 電子結合映像体とは、本来であれば電脳世界の中での仮想映像としてのみ存在する電子データの集合体が、現実世界の空間中に映像としてのボディを構築し、あたかも現実世界上で実際に存在しているかのように、自由に行動することを可能とするシステムである、とのことです。
「じゃあ、こいつがスパダイナを守って、誰も近づけさせないようにしている……そういうこと?」
「その通り。さすがに、お察しが早いですな」
 要するにエージェント・ギブソンは、スパダイナを目指すに際して、コントラクターの力を借りてマーダーブレインの脅威を排除したい、という考えを持っているとのことでした。
「マーダーブレインは既に新たなウィルス二組を生成し、同じように電子結合映像体として、現実世界に出現させています」
 それらはバスターフィスト、及びエメラルドアイズと称されるウィルスであるとのことです。マーダーブレイン程ではないにしても、矢張り相当な強さを誇るようです。
「……さすがに、背に腹は代えられねぇか」
 かくして山葉校長は、スパダイナ捜索隊の結成を蒼空学園の内外に広く告知する旨を約束しました。

     * * *

 話がまとまり、エージェント・ギブソン達を送り出した後で、山葉校長は傍らに佇むシズルに、低い声でいいました。
「お前は、あいつらと同行して監視役となってくれ」
「え……どういうことですか?」
 戸惑いがちに振り向くシズルに対し、山葉校長は校長室の扉をじっと見据えたまま答えます。
別働隊を組む。どう考えても、あいつらは完全には信用出来ねぇ」
 山葉校長は更にいいます。
 この別働隊の指揮には、料理研究部『鉄人組』の組長馬場 正子(ばんば しょうこ)に当たらせる、と。

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 本シナリオガイドをお読みくださり、ありがとうございます。

 ストーリーとしては以前下名が作成したシナリオ『フィクショナル・ニューワールド』の続編となりますが、シナリオ自体は全くの独立した形式を取っておりますので、どなたでもお気軽にご参加頂けます。

 やることはもう実に単純で、山奥の遺跡内に隠されたルーターマシン『スパダイナ』を発見せよ、というものです。
 但し、マーダーブレインやら何やらと障害が待ち構えてますので、それらを如何に対処するかが成否を分ける鍵となるでしょう。
 更につけ加えるならば、下名はいつもこの手のシナリオでは何かと『裏』を用意することが多いので、今回もまた何やら悪巧みが潜んでいるかも知れませんし、そうでないかも知れません。
 その辺りも考慮に入れて、挑んで頂ければと存じます。

 それでは、皆様からの素敵なアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・シズルと共にスパダイナの発見を目指す。

・エージェント・ギブソンを出し抜いてスパダイナを確保。

・誰にも頼らずに個別でスパダイナを確保する。

・ただひたすら圧倒的強さを誇るマーダーブレインと戦う。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2011年05月12日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年05月13日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年05月17日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年05月31日


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