イルミンスール魔法学校

　――ツァンダの南、山間にある遺跡。
　蒼空学園生加能　シズル（かのう・しずる）と百合園女学院生泉　美緒（いずみ・みお）、パラ実生熾月　瑛菜（しづき・えいな）、そして美緒のパートナーの魔鎧ラナ・リゼット（らな・りぜっと）、瑛菜のパートナーのアリスアテナ・リネア（あてな・りねあ）の5人はパーティーを組んで探索を行っていました。

　この遺跡はかなり前に発見され、中は調査され尽くしています。
　今は各校が持ち回りで管理し、生徒達の遺跡探索の訓練場として解放されています。イルミンスール生が管理している時は使い魔やアンデッド等を放ち、実戦さながらの訓練を行える時もあります。
　シズル達も訓練に来ていました。

「まだ慣れないの、その格好？」
「スタイルは良いんだから、背筋を伸ばして堂々としていればいいのに」
「慣れません……こんなはしたない格好、瑛菜様達以外の人に見られると思うと……」

　ラナ・リゼットは純白に輝くビキニアーマーとなり、美緒に装備されています。露出こそ多いですが、下手な鎧より高い防御力を誇っています。
　しかし、美緒はこの格好をはしたないと思っており、前屈みにモジモジしています。
　瑛菜やシズルの励ましも、あまり効果はないようです。

　その時でした。

ドガガガガガーーーーー！！

「きゃ！？」
「あう！？」

　遺跡の下から耳をつんざくような破砕音が聞こえると、突然美緒と瑛菜の足下が爆発したのです。
　もうもうと立ち込める煙越しに２人の悲鳴が聞こえました。

「瑛菜おねーちゃん！？」
「美緒！？　ラナさん！？　こんなトラップが仕掛けられているなんて聞いてないわ！」

　アテナとシズルは必死で煙を払い、２人の安否を確かめようとします。
　美緒達がいた場所には、直径数メートルはあろうか大きな穴が空いていました。
　美緒と瑛菜はその縁で気を失い、横たわっていました。爆風や石床の破片を受けた瑛菜のセーラー服は所々破れていますが、魔鎧に護られた美緒の柔肌は露出が高いにも関わらず傷１つありません。

「瑛菜おねーちゃん！」
「！？　待ってアテナ！」
『ほぉ、人間の女子（おなご）にしてはなかなかやるモォ〜』

　瑛菜の無事を確かめようと駆け寄ろうとするリネアの前に、刀を抜いたシズルの背中がありました。彼女の刀は寸でのところで、アテナに振り下ろされようとしていた美緒の剣を受け止めました。

『ヒヒーン！　数百年ぶりのシャバに来て早々、いい躯を手に入れられるとはツイてるぜ』
「……美緒おねーちゃん？　瑛菜おねーちゃん？」

　アテナの目の前で瑛菜も起き上がります。
　彼女が驚いたのは、美緒の頭には角が１本、瑛菜の頭には２本生えていたのです。しかも２人の瞳は禍々しい金色に爛々と輝いています。

『俺は牛頭鬼（ごずき）だモォ〜』
『俺は馬頭鬼（めずき）だぜ、ヒヒーン！』
「牛頭馬頭（ごずめず）……？　地獄の獄卒鬼の名前よね……地獄……奈落……ナラカ！？　まさか、奈落人！？」

　瑛菜は２人の名前に聞き覚えがありました。
　なんと、意識を失っている隙に美緒は牛頭鬼に、瑛菜は馬頭鬼に身体を乗っ取られてしまったのです。
　牛頭鬼と馬頭鬼は奈落人のようです。

『ヒヒーン！　せっかくのシャバだって言うのに、ここもナラカと大して変わらない辛気くさい場所だな。牛頭、こんなところさっさとおさらばして、鹿頭や虎頭、猪頭達の躯も見つけてやろうや』
『奈落人の何人かは人間に懐柔されたらしいモォ〜。俺は裏切り者のそいつらを倒すモォ〜』
「そうはさせないわ！」

　シズルがタイ捨流の構えを取って２人の前に立ちはだかります。
　牛頭鬼と馬頭鬼がツァンダに行けば、街は大混乱に陥ります。
　それに今の２人の身体は美緒と瑛菜です。事情を知らない者が倒してしまう危険性もあります。

「アテナ、ここは私が食い止めるから、あなたはツァンダに行って応援を呼んできて！」
「う、うん、分かったよ」
「それと、節分で撒く福豆も、ね。それをぶつければ美緒と瑛菜の身体があの鬼達を追い出すことが出来るはずだから」
「本当！？　アテナ、マッハで行ってくる！！」

　今日は節分です。豆は「魔滅」とも言われ、鬼に豆をぶつけることで邪気を追い払う行事です。
　福豆をぶつけることで牛頭鬼と馬頭鬼を美緒と瑛菜の身体から追い出すことが出来る、とシズルは考えていました。
　彼女の言葉にアテナは元気良く出口へと駆け出しました。

　ツァンダの南にある遺跡で、奈落人の牛頭鬼と馬頭鬼に身体を奪われてしまった泉美緒と熾月瑛菜を救出するのが目的です。
　アテナ・リネアは学校を問わず片っ端から友達や知り合いに連絡を入れているので、「アテナから連絡をもらった」、「アテナの知り合いから連絡を受けた」といった理由で、学校に関係なくどなたでも参加できます。
　また、舞台となる遺跡は全校の生徒に解放されているので、「近くにいた」といった理由もOKです。

　ただし、美緒と瑛菜の身体から牛頭鬼と馬頭鬼を追い出すために必要な「福豆」は、「遺跡の外から来るPCしか持ってこられない」とします。
　遺跡の中にいるPCは現場に急行できますが、あくまで牛頭鬼と馬頭鬼を引き付けたり、彼らが呼び寄せる小鬼の退治が主な役割になります。

　牛頭鬼は元は牛頭の鬼で、ミノタウロスとも呼ばれています。素早さはそれ程でもありませんが、力で押しまくるタイプです。
　馬頭鬼は元は馬頭の鬼で、力は強くありませんが素早さに長けています。また、小鬼（ゴブリン）を使役します。

　また、２人とも奈落人ですので、奈落人LCは２人に因縁を設定しても構いません。

　節分ですので、美緒と瑛菜の身体から牛頭鬼と馬頭鬼を追い出すためには「福豆をぶつける必要がある」とします。
　これは本シナリオのみのローカルルールで、奈落人LCは憑依を解かれることはありません。
　福豆をぶつける方は、「鬼は外ー！　福は内ー！」と元気良くぶつけてください。
　ただ、２人ともそう簡単にはぶつけられませんし、取り巻きに小鬼達がいます。牛頭鬼と馬頭鬼の注意を引き付けたり、小鬼達の露払いといったコンビネーションも必要です。

　なお、本シナリオでは奈落人の契約アイテム「ナラカの水」は配布しませんのでご注意下さい。

　一風変わった節分を過ごしてください。

・牛頭鬼を引き付ける

・馬頭鬼を引き付ける

・小鬼と戦う

・鬼は外、福は内！