イルミンスール魔法学校

　――タシガン空峡。
　ツァンダとタシガンを隔てる空の谷間です。雲海で覆われていますが、その下には太平洋が広がっています。
　このタシガン空峡はツァンダとタシガンの交通の要所で、昔から飛空艇や飛行船が行き交い、それを狙う空賊が出没していました。
　空賊の中でも最大規模を誇るヨサーク空賊団の頭領キャプテン・ヨサーク（きゃぷてん・よさーく）、ペガサスを駆る一匹狼の女空賊フリューネ・ロスヴァイセ（ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ）、空賊を狩っていた十二星華セイニィ・アルギエバ（せいにぃ・あるぎえば）の活躍により、空賊の数は激減しました。
　それでも空賊自体が居なくなった訳ではありません。しかも、最近はシャンバラ政府の目がエリュシオン帝国との戦いに向けざるを得ないことを良いことに、空賊の出没回数が戻りつつあります。
　フリューネもキャプテン・ヨサークも居ない今、ツァンダ家はクロカス家などツァンダに住む貴族とその私兵を沿岸警備に動員したり、コントラクターに依頼してタシガン空峡の取り締まりを強化し始めました。

「おっと、この娘がどうなっても良いんだな？　俺にとっちゃ売り物が１つ減るだけだから大して痛くねぇんだけどなぁ？」
「卑怯よ、ボルド！」
「良いねぇその表情！　おっと、後ろのあんちゃんも下手な真似するなよ？　こんな細い首、俺の腕で簡単にへし折れるからな」
「くっ……」
「卑怯なんざ空賊には日常茶飯事、人質１人で自分の命が助かるなら安いモンだぜ」

　蒼空学園の新入生加能　シズル（かのう・しずる）と、薔薇の学舎の新入生フェンリル・ランドール（ふぇんりる・らんどーる）は、１人の空賊の頭領を追い詰めていました。
　彼の名前はボルド、ヨサーク空賊団が居た頃から自分の空賊団を率いており、ヨサーク空賊団解体後、目の上のたんこぶが無くなったことを良いことに頭角を現していました。
　シズルのパートナーレティーシア・クロカス（れてぃーしあ・くろかす）の要請で、クロカス家の私兵と共に警備に当たっていたシズルとフェンリルはボルド空賊団と遭遇し、見事撃退してボルドを追い詰めたまでは良かったのですが……ボルドは金品と一緒に攫っていた少女を人質に取ったのです。
　確かにボルドの丸太のように太い腕なら、少女のか細い首をへし折ることくらい造作もないことでしょう。
　シズルは小型飛空艇で、フェンリルはフライングポニーで彼の周りを回り隙を窺っていますが、人質を取られている以上、迂闊に手が出せません。

「まったく、正義の味方ってのは律儀で大変だよな。お勤めご苦労さん」
「分かったわ、その娘を解放すればあなたを見逃してあげる」
「……いいのか？」
「ええ。あの娘の命には代えられないもの」

　特にシズルは、一度空賊に捕まった事があるため、人質の少女が感じている恐さは身を以て体験しています。

「それは虫が良すぎるんじゃねぇか、ネェチャンよ？　その腰に差してる業物も一緒にもらおうか？」
「！？」
「こう見えても俺はサムライでね。お陰で今でも食いっぱぐれないって訳さ」

　ボルドの指摘にシズルは驚きの表情を浮かべます。腰に佩いているのは、加能家に代々伝わる刀だったからです。

「（ご先祖様に申し訳が立たないけど……人の命には代えられない）分かったわ。この刀も渡すわ」
「オレが受け渡しを行う」
「良いだろう」

　フェンリルがシズルから刀を受け取ると、ボルドの小型飛空艇オイレに近づき、少女を受け取ると同時に刀を差し出しました。

「こいつぁすげぇ……」

　刀を抜いたボルドは感嘆の声を洩らしました。見事な波紋に彩られた紫色の刀身を持つ刀でした。
　妖刀那雫、と呼ばれるタイ捨流の使い手のために打たれた業物です。
　シズルは唇を噛み締めました。実は彼女は妖刀那雫を一度も実戦で使ったことがありません。彼女の技量ではまだ使いこなせないのです。あくまでお守りとして腰に佩いていました。

　見逃すという約束もありますし、フェンリルにお姫様だっこされて震えている少女を一刻も早く親元に届けたいこともあり、逃げていくボルドは追撃せず、シズルとフェンリルはツァンダに戻りました。


　――それから数週間後。
　那雫を手に入れたボルドは妖刀に魅入られたように、前にも増して略奪行為を行うようになっていました。
　そんな彼の元に、強い頭領を求める空賊達が集まっているといいます。

「武器の所為、とは思わないが、ボルドがあの業物の切れ味に魅入られてしまったのは確かだな」
「ええ。あの時の判断は間違っていないと思うけど……ボルドを倒して那雫を取り戻すわ」
「クロカス家も協力しますわ。飛行船を一隻用意しますわ。それを囮にボルド空賊団を誘き寄せると良いですわ」

　レティーシアを通じて蒼空学園を始め、各学校にボルド空賊団退治の依頼が貼り出されました。

　レティーシア・クロカスからの依頼で、タシガン空峡に出没するボルド空賊団を退治するのが目的です。
　ツァンダ・タシガン共に空賊被害に困っているので、蒼空学園生と薔薇の学舎生が受かりやすくなっています。各校に依頼を出していますので、各校の生徒も気軽に参加できます。

　作戦は、レティーシアが用意した飛行船でタシガン空峡を横断し、ボルド空賊団を誘き寄せて撃退する、というシンプルなものです。
　その分、事前に偽情報を流して飛行船をちゃんと襲撃させたり、誘き寄せたボルド空賊団を残らず撃退する必要がありますので、１人１人の行動が重要になってきます。
　挨拶掲示板で挨拶される際、どんな行動を取られるか併せて書かれるといいと思います。

　レティーシアが用意する飛行船は、参加者全員が乗り込める規模、とします。
　右舷と左舷それぞれに小型飛空艇を撃ち抜ける矢を発射するバリスタが数台搭載されており、ある程度の迎撃は可能です。

　また、ボルド空賊団との戦いは主に空中戦になりますので、自力飛行が出来ない種族は小型飛空艇など空を飛べる乗り物が必要になります。
　所有していない場合は、飛行船のバリスタを使用したり、魔法や銃などで遠距離攻撃を行ってください。

　ボルド空賊団は50名を越える空賊で構成されています。
　基本的に２人１組で小型飛空艇を駆り、１人が操縦に専念して１人が攻撃する、といったコンビネーションで略奪を行っています。
　また、頭領のボルドはサムライで、「疾風突き」のスキルまで使用できます。
　加えて妖刀那雫を所有しており、その切れ味はプレートアーマーをバターのように切り裂くそうです。

　NPCは小型飛空艇に乗った加能シズルと、フライングポニーを駆るフェンリル・ランドールが同行します。
　２人以外のNPCは呼べませんのでご注意下さい。

・飛行船の偽情報を流す

・空賊と空中戦で戦う

・飛行船で空賊を迎え撃つ

・ボルド空賊団に加担してヒャッハー！！