イルミンスール魔法学校

　
「ミナホ……やばいことになった」
　ニルミナスの村。ウエルカムホームのミナホ・リリィ（みなほ・りりぃ）の部屋。書類決済をしていたミナホに熾月　瑛菜（しづき・えいな）は緊張感に満ちた表情でそう言います。
「はい？　いきなりどうしたんですか？」
「やばい奴がこの村に向かっているらしいんだよ」
「はぁ……もしかして粛正の魔女さんがまた何か？」
　ニルミナスにおける敵対者、粛正の魔女ミナがまた何か行動を起こしたのかとミナホは聞きます。
「あんなの可愛いもんだよ……いや、会ったことないけどさ」
　今来ている奴と比べたらと瑛菜は言います。
「……で、結局どなたがこの村に？」
　なんとなく力抜ける答えだろうなぁと思いながらミナホは瑛菜に聞きます。
「雅羅」
　雅羅・サンダース三世（まさら・さんだーすざさーど）がニルミナスに来ると瑛菜は端的に言います。
「まぁ……私も少しは噂で聞いたことはありますが……そんなに大変なんですか？」
「対応間違えたらこんな小さな村吹き飛ぶよ」
「……対応を間違えなかったら？」
「湯けむり殺人事件？」
「………………そもそも対応せずにスルーしたらどうなるでしょう？」
「あの子が一人いつも通り不幸な目に遭うだけじゃないかな」
　問答の末ミナホは結論を出します。
「村側としてはスルーしましょう」
「…………村への客の対応としてそれでいいのか？」
「いえ、間違えて村が滅ぶのも巻き込まれて殺されるのも流石に……」
　心苦しいけどとミナホ。
「あんた、変な所でシビアというか……やっぱ、前村長の娘なんだね」
「ありがとうございます」
　ミナホの言葉に瑛菜は褒めてないからとため息を付きます。
「ま、本当ならあたしが村を案内するところなんだけど、ちょっと用事があってね」
「用事ですか？」
　それは何かとミナホは聞きます。
「村の子どもたちに音楽教える約束になってんだよ」
「へぇ……子どもたちに」
「そういや、あんたの歌の師匠探しは？」
「この仕事が終わった後３日ほど休暇をもらっているんです」
　そこで探そうと思っていますとミナホ。
「……………………あんた、雅羅をスルーするのって休みを潰されたくないからとかじゃないよな？」
「…………………………チガイマスヨ？」
「あんたやっぱり前村長の娘だわ」
　嘘のつけない親子だと瑛菜はため息をまたついた。


「ふふ……ついに着いたわ。ここに『幸運の湯』があるのね」
　ニルミナスの東側の入り口に着いた雅羅はこらえきれない笑みを浮かべながらそう言います。
「ついにあたしのこの不幸体質が治る日が来たのね」
　ニルミナスの温泉施設『湯るりなす』。新しく営業を開始したそこには不幸体質を治すという『幸運の湯』なるものがあると、雅羅は聞きつけていました。……聞きつけてしまっていました。
「ここに来るまでにいつも通り大変だったけどそれも今日までだわ」
　ここに向かうまでの苦労、ひいては今までの苦難を思い出しながら雅羅は村への一歩を踏み出します。
「ふぎゃっ！？」
　女の子らしからぬ声を上げる雅羅。
「……なんでこんな所に落とし穴があるのよ」
　治る治らない以前に湯までたどり着くのに苦労しそうな雅羅でした。


「んー……どうしよう？」
　村の中央広場。アテナ・リネア（あてな・りねあ）は困った声を上げます。
「プレライブ三日後なんだけどなぁ……」
　ミュージック・フェスティバル。村が主催する音楽の祭。その予行演習的なプレライブをアテナは企画していました。
「ミナホちゃんと打ち合わせしないといけないんだけど……」
　村側と調整を行わなければいけないのに、村長であるミナホとは今は少し気まずいとアテナは思います。
「瑛菜おねーちゃんには内緒だし……」
　このプレライブは瑛菜を驚かせようという意図もあるためパートナーに頼ることもできません。

「お困りのようだね」
「ふぇ？　アゾートちゃん？」
　アテナにかかる声。その声の方向にはアゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）の姿がありました。
「どうしたの？　この村に何か用事？」
「少し時間が出来たから気になることを解消しておこうと思ってね」
「はぁ……また賢者の石関連？」
「そうとも言えるしそうじゃないとも言えるかな」
「うーん……よく分かんないよ」
　要領の得ない会話にアテナは首を傾げます。
「ボクのことよりキミは何を困ってるのかな？」
「あ、うん――」
　アテナはアゾートのプレライブのことを話します。
「そういうことならボクが村長に伝えてくるよ。調査のことについて許可をもらおうと思っていたからね」
「？　調査？」
「それじゃ行ってくるよ」
　アテナの不思議そうな声には答えずアゾートは村長の元へ向かう。
（ミナス草。ボクの考えが正しければあの薬草は……）


なんでもない、けれど少しだけ賑やかなニルミナスの休日が始まろうとしていました。

初めての方ははじめまして、前回参加してくれた方はお久しぶりです。河上誤停です。
今回は休日シナリオになります。
ガイドにあるイベントに参加するもよし、イベントには参加せず村で自由に過ごすもよし。村での行動であればなんでもおーけーです。
また、私の休日シナリオではＭＣとＬＣが別目的で活動しても構いません（何かをなそうとするシナリオではないので。１PC１アクションは変わりません）。ただその場合他ＰＣとアクション競合した場合は優先度が下がります。他シナリオではマニュアル通りです。


■湯るりなすについて
先日営業を開始したばかりのちょっと大きな温泉施設です。今回は『幸運の湯』と呼ばれる不幸体質を治すという湯に雅羅が向かい騒動が起きます。
基本的には木で出来た建築物です。温泉の枠もだいたいは木でできています（一部岩風呂等あり）。
遊歩道や卓球場、レトロゲーの機体におみやげコーナーと契約者の影響等で日本における温泉施設のイメージがほぼ採用された施設になっています。
雅羅に絡むもよし、どんな湯があるのか探検するもよし、湯上りに遊戯施設で遊ぶもよしです。

※なお、雅羅の不幸体質は温泉つかっても治りません。またシリアスな対応を取ると村が半壊から全壊しますのでご注意ください


■プレライブについて
アテナが企画している瑛菜に内緒の企画です。内緒の企画のため大々的には参加者を募集していません。
基本的には瑛菜やアテナのライブを楽しんだり声援送るイベントになります。


■ミナス草の調査について
アゾートがミナス草という村で栽培されている薬草について気になることがあるようです。
村で栽培されているものではなく森のゴブリン領域とコボルト領域に生えているミナス草の調査を行わなければならないようです。
アゾートはある程度調査結果の目安が付いているのかどんどんと森の奥へと向かいます。森の奥へとたどり着けばアクション成功です。
このパートではアクション次第でゴブリンとコボルトたちとの戦闘が起きます。回避するか殺さないように撃退するか。アクションに左右されます。

■その他調査アクションについて
ニルミナスのことについて気になることがある場合、それを調べるアクションをかけて構いません。
その場合に限りニルミナス外を舞台にアクションをかけて大丈夫です（イルミンスールの大図書館等）。
グラシナ等他シナリオの調査アクションは不採用ですのでお気をつけください。

■他、村の近況
ユニコーン、ラセン・シュトラールは療養中です。快方に向かっています。
村の東部にて落とし穴等トラップやバリケードの残骸が残っています。
鍾乳洞は通常通りです。戦いの傷跡は既に残っていません。遺跡へと続く道は封じられています。（封印の解き方を探すというのもいいかもしれません）
ミナホと瑛菜はガイドにあった通り、三日後のプレライブ以外はそれぞれの休日を過ごすようです。
元野盗たちを中心とした村と森を守る『ニルミナス防衛団』が結成されています。なお、名前はミナホ命名。ニルミナス防衛団のメンバーは名前に不満のようです。


※ニルミナスを拠点に活動してくれるPCを募集しています。

・雅羅をいじる

・アゾートの補助

・ユニコーンのお見舞い