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壊獣へ至る系譜:その先を夢見る者 前編

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壊獣へ至る系譜:その先を夢見る者 前編

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シナリオガイド

問う言葉もまた呼び声か。至福は楽園にこそ在りと謳う。
シナリオ名:壊獣へ至る系譜:その先を夢見る者 前編 / 担当マスター: 保坂紫子





―― あなたに問いましょう ――







「ここにクロフォードがいるの?」
 問うシェリー・ディエーチィ(しぇりー・でぃえーちぃ)に、先導していたシェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)は振り返りました。
「居るかどうかはわからないけど、連絡が途絶えるような事があったら、可能性の一つとして、と言われている場所よ」
 案内されたのは、五千年程前の争いに蹂躙され見捨てられるように忘れられた場所でした。
 もし何か異変があって、自分も手引書キリハ・リセンも居ない場合は此処にと破名・クロフォード(はな・くろふぉーど)が示した場所の入り口は、確かに其処にありました。
「ここが……」
「ええ。破名・クロフォード及び手引書キリハ・リセンが封印されていた地――
 クロフォード博士の私設研究所。
 破名は……『別棟』と言っていたわね」
 そうと言われなければ誰も気づかないような入り口を見つめてシェリーは奥歯を噛み締めて閉じた唇にきゅっと力を入れます。
「あまり驚かないのね」
 シェリエは破名が孤児院『系譜』の子供達に自分の事情を話していないことを知っています。知らないことを知らされてもシェリーは動揺どころか驚きもせず、ただ、納得に頷くだけでした。
「闇雲に探すよりは遥かにマシだけど、いいの? 手伝ってくれるのは嬉しいけど、本当に安全とは言い切れないわ」
 無理強いはしないと言うシェリエにシェリーは首を左右に振ります。
「ううん。私こそ我が儘ばかりでごめんなさい」
 言って、少女は入り口に向き直りました。
「私、戦えないけど、これだけは言えるわ」
 雨風に晒され崩れるように朽ちた『扉』に右手を添え、息を吸い込みます。
「《ただいま》」
 古い言葉で帰宅を告げた声に、扉はゆっくりとでしたが帰ってきた者を迎え入れる為に開かれました。



…※…※…※…




「確かに、光って言えば光としか言いようがねぇなぁ」
 晴天の空に向かって地中から屹立する四本の光を眺め王 大鋸(わん・だーじゅ)は唸りました。
「起きだす、のカ?」
 眼下に見えるその光景を見下ろしてパートナーのシー・イー(しー・いー)が首を傾げます。
 屹立する四本の光の根本は地中に沈んだ砂色の老竜が眠っている場所でした。
「さぁな」
 荒野に聳える光に気づき近づいてみたものの、何か現状がわかるわけでもなく、わかりそうな人物は現在所在不明で、大鋸はただ状況を見下ろすばかりでした。
「シェリエからまだ連絡は来ねぇしな」
 破名が失踪してから一週間以上時間が経過しています。破名だけなら兎も角、共にキリハもいなくなっていました。キリハが一週間以上院から離れるのはこれまで無かったとシェリーは言っていました。
 キリハは今でこそ外を出歩いていますが、かの魔導書はほんの少し前まで、撤去された孤児院の隠し部屋で長い間過ごしており、子供達の間では壁の中の小人さんと呼ばれていた時期がありました。そんな幼い頃から常にあった彼女の気配が無い事にシェリーが焦っていたのを思い出します。



…※…※…※…




 ヒラニプラ辺境、機晶姫トロイ・タププが眠る洞窟の前で、李 梅琳(り・めいりん)エレーネ・クーペリア(えれーね・くーぺりあ)の二人は短く息を吐き出しました。
「これは想像してなかったわ」
「また迷宮になってるとかはないですよね?」
 末端を操作し内部の様子を確認した梅琳はその心配は無さそうだとパートナーに知らせて、ゆるりと首を動かし洞窟の入口を見遣ります。
 洞窟内は輝きを失ったはずの機晶石が再び光を取り戻し、以前以上に綺羅やかさを増して、外も昼中で明るいのにそれ以上に眩しいほどでした。
「イルミンスールからは待機するようにと言われているわ」
 この一件は既にイルミンスールに連絡を入れています。場所はヒラニプラでもこの件はイルミンスールに任せるというのが上からのお達しでもありました。それに、情報を持つ当人も行方が知れず不在である以上、情報が入るまで不用意には動けないのです。
「何が起こってるんでしょうか」
「……そうね。何が起こっているのかしら」
 機晶石はただ静かにゆるゆると、外から見ただけでも分かるくらい明るく発光を続けています。



…※…※…※…




 通路と空の部屋ばかりでシェリーは不安に右手首に嵌められたシルバーリングを左手で縋るように握ります。
「何も無いわ」
「キリハが言うには、クロフォード博士が全て処分したそうよ」
 研究所内を見渡し、シェリエは先日キリハから聞かされたことを思い出します。
「ただ、破名にはそのことは伏せて欲しいとキリハにお願いされたわね」
「どうして?」
「研究所が綺麗な理由という意味ではなくて、クロフォード博士関連の話は破名には刺激が強いそうなの。破名にだけは遠慮のないキリハもこの時ばかりは言葉を選んでしまうそうよ。
 ねぇ、シェリー。クロフォード博士の事、聞かないのね?」
 改めて聞かれて、シェリーは小さく頷きます。
「うん。少しだけ……クロフォードに名前をわけてあげた人だって知ってるの。内緒よ? 私達に自分の事を知られたくないみたいだから」
 だから、驚かないし、聞かないと語るシェリーにシェリエは捜索を続けましょうと暗い通路に光を翳し、歩き出しました。
 そして、シェリエはどこからともなく聞こえてくる『言葉』に気づきました。


『あなた』に問いましょう。

『あなた』は誰ですか?
名を持つ方よ、しかし、『あなた』は『だれ』ですか?
『あなた』しか知らぬ方よ、『あなた』は『だれ』ですか?
『たにん』に成れない『あなた』は『だれ』ですか?
比較対象を持ち得ぬ方よ、『あなた』は『だれ』ですか?
『あなた』は『あなた』に値いする『あなた』でしょうか?
『あなた』は『あなた』であることに満たされていますか?
『あなたは幸せ』ですか?
『あなた』は『幸せ』に『なりたい』ですか?
『あなた』に問いましょう。
『あなた』は『だれ』ですか?
『あなた』は『幸せ』でしょうか?
それは『あなた』が『望んでいる幸せ』でしょうか?

―― あなたは、しあわせになりたいですか? ――



 と、言葉は、あなたの内面へと問いかけます。
 ゆっくりと染み渡るように、また、波紋を広げて、問いかけ続けます。

担当マスターより

▼担当マスター

保坂紫子

▼マスターコメント

 はじめましての方もお久しぶりな方も、こんにちは。保坂紫子と申します。
 どうぞ宜しくお願い致します。
 今シナリオタイトルで、シリーズ:壊獣へ至る系譜、最終予定ではありますが、展開によっては伸びるかもしれません。また、これが初めて参加するという方も歓迎しております。

 荒野、ヒラニプラ辺境に再び異変がおこり、報告を受けたイルミンスールはシェリエを介して、以前その場所でトラブルを起こした破名に問い合わせようとしましたが、その当人も行方がわからず、手がかりを探しにクロフォード博士の私設研究所跡地へと赴くことになります。
 以下はPL情報ですのでご注意願います。


■『別棟』について
 クロフォード博士の私設研究所のことです。
 上屋は全て破壊されており残されたのは地下のみとなっております。破壊の衝撃で残された地下部分も六割が崩れ辛うじて奥へと進められるかなという状態です。
 研究施設ですが、内部には何も残されていません。通路と部屋があるのみです。
 また、別棟内部は言葉が聞こえる以外、侵入者を排除する機能は働いてないようです。
 ただ、崩壊の危険性があり、絶対に安全とは言い切れません。
 こちらは、シェリー、シェリエが参加しております。

■荒野某所
 砂色の竜が眠っている場所です。
 地面から光が屹立しているのが発見されて、イルミンスールへと連絡が渡りました。
 近くを通りかかった王 大鋸、シー・イーの二人が様子を見ています。

■ヒラニプラ辺境
 一度入ったら二度と出られないと言われていた大量の機晶石を保有する迷宮洞窟です。先日の契約者の介入により、洞窟を迷宮化していた原因が取り除かれ、更に機晶石の輝きは失いただの洞窟になっておりましたが、再び光を取り戻したようです。
 また、この洞窟自体が機晶姫トロイ・タププの体でもあります。
 話を聞き、李 梅琳とエレーネ・クーペリアの二人が経過を観察しております。


●シェリー・ディエーチィ
 孤児院『系譜』の最年長で一番長く院に身を寄せているシャンバラ人の少女です。
 破名、キリハの捜索をお願いした当人です。本来ならお留守番なのですが、古代語が話せるということで手伝いについてきました。
 ただ、古代語は話せると言っても口伝であり、覚えている単語数は多くなく偏りがあります。また、文字は全く読めません。
 ※当シナリオで使用されている古代語は独自に造られて消え去った特殊文字です。

●共鳴竜コーズ
 その体に『系図』と呼ばれる古代文字を体に宿している、砂色の老竜です。
 五千年ほど前に壊獣研究施設『系譜』から逃げた被験者でした。
 現在は、荒野の大地に埋まり眠っています。

●機晶姫トロイ・タププ
 元は壊獣の研究の為に造られた機晶姫です。『楔』と呼ばれる古代文字を保有しており、破名が参加する直前までサポートプログラムの役割を担っていた、前任者でもありました。『転移』の能力を持っています。
 長い間の暴走の末、己の体で一つの洞窟を創り上げるほど巨大化しました。
 現在は心臓部である機晶石が砕け散り洞窟の最深部で沈黙しています。

●破名・クロフォード
 孤児院『系譜』の代表者という悪魔の青年。
 五千年程前に消失した壊獣研究施設『系譜』のスタッフの一人で当時はサポートプログラムを担う生体装置です。自分の担当者であったクロフォード博士により封印されていたことで現代まで残されていました。
 古代文字『楔』及び『系図』を扱うことができる資格者であり、『転移』の能力を持ちます。

●手引書キリハ・リセン
 破名と共に封印されていたことで現代に残された魔道書の少女です。

 現在所在不明とガイドでありますが、破名及びキリハは別棟の最下層、自分達が封印されていた部屋に居ます。また、破名は孤児院から失踪した日よりずっと意識がありません。また、キリハは外に連絡が取れるような手段を持っておりません。

▼サンプルアクション

・『別棟』へ侵入する。

・人捜しの手伝いをする。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年05月24日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年05月25日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年05月29日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年06月10日


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