天御柱学院

　
　パラミタの、天空の守護者たるウラノスドラゴンの居る“空の遺跡”にて、パラミタの世界樹を活性化する力を持つという、聖剣アトリムパスを入手後、教導団では、その有効な使い道が模索されていました。
　しかし、その後、パートナーのテオフィロスと共に調査にあたっていた都築中佐からの連絡が、暫く前から途絶えていたのです。
　二人は三日前、ついに『行方不明』と認定されました。



　聖剣の事件のその後の展開は、エリュシオンのミュケナイ選帝神、イルダーナも把握に努めていました。
「……もしかしたら、二人は『門』に至ったのかもな」
　二人が行方不明になったことを知って、イルダーナは暫く考え込んでいましたが、やがてそう呟きました。
「門？
　門て死の門？　霊峰オリュンポスの？」
　ぽかんと訊き返した後、トゥレンの表情も険しくなりました。
「……あそこの門番、すげえ嫌な奴で俺大嫌い。
　もし、あそこに行って、帰って来ないってことは……」
「まだ、“そう”と決まったわけじゃねえ」
　ぎり、と拳を握るトゥレンを横目に見ながら、イルダーナは考えています。
　ちっ、と舌打ちをして呟きました。
「全く上手い方法じゃねえが……」
　彼には、何か、考えていることがあるようでした。

　一方、イルミンスールでは、ハルカの周囲に緊張が走っていました。
　少し前に、空京で「オリヴィエ博士の所持品」を狙って、元助手だったヨシュアが誘拐される、という事件が起きました。
　実際に、服役中のオリヴィエ博士の私物を預かっているのは、オリヴィエ博士のパートナーであるハルカです。
　その為、次はハルカが狙われるのではないか、という可能性が浮上していたのです。
「もしも何かあるようなら、財布などくれてやりなさい。
　命と引き換えにはできないのだから」
　話を聞いたオリヴィエ博士はそう言いましたが、できることならハルカは、その品を手放したくないと思っていました。
　その品、ミスリル製の財布は、オリヴィエ博士の、祖父の形見だったからです。




　そして。
　空京の夜空を、泊り込みの大学の研究室の窓から見上げていたアクリト・シーカー（あくりと・しーかー）は、気配に振り向きました。
　ぼんやりと、浮かび上がる幻像は、久しぶりに会うパートナーのものでした。
「パルメーラ……」
「久しぶり。元気だった？」
「回復したのか？」
「少しだけ。
　この会話で、溜めた力を使っちゃうから、また少し、休まなきゃ……。
　でも、早く謝りたかったから」
「……お互い様だな」
　くす、とパルメーラ・アガスティア（ぱるめーら・あがすてぃあ）は笑いました。
「皆にも……謝るのも、助けてくれたお礼も、してないね」
「皆は解っているだろう」
「うん。でも、もしも……、もしも、此処まで来れるなら」
　パルメーラは、持っている預言書を握り締めました。
「……予言を管理する者はね、自らそれをばらまくことは出来ないんだ。
　だから、質問されたことに、答えるよ。
　この預言書を開くには、パスワードが要るの。
　パスワードを持って、此処に来てくれたら、ひとつだけ」
「私には、必要ないな」
　アクリトは、そう答えました。
「それを必要とする者もいるかもしれない。一応、周りに声はかけてみよう」
　うん、とパルメーラは頷きます。
　そして、アクリトの周囲を見渡しました。
「……懐かしいな。
　空大も、パラミタも、パラミタから見る星空も……。
　あたし、あたし達、やり直せる、かな」
「まずは戻ってくることだ。待つことに苦痛を感じない」
　アクリトの言葉に、パルメーラは微笑んで、その姿は消えました。

　

　
　このシナリオは、『フロンティア・ヴュー』の流れを汲むキャンペーンシナリオとなります。

　あのシナリオの後、都築中佐とテオフィロスは、新たに調査任務を受けて暫く不在でしたが、そのまま行方不明となっています。
　聖剣は持参していませんでした。
　現在も教導団で保管されています。

　聖剣の事件に関わったミュケナイ選帝神イルダーナは、二人の行方不明を知って、何か思うところがあるようです。
（イルダーナとトゥレンの会話は、とりあえず現時点ではＰＬ情報です）
　イルダーナと知り合いか否かは、「過去のシナリオで会話をしたことがあるかどうか」で判断します。
　同じ場所にいたことはあるが会話はしたことがない、という場合は、イルダーナは憶えていないこととします。
　イルダーナに会う場合は、彼と既知のＰＣを仲介に立てるといいでしょう。

　また、このシナリオでは、セルウス等の帝国の公式ＮＰＣ、九道が担当しない他地方のＮＰＣ等に関わることはできません。

　尚、タイトルに【イコン参加可】表示が付いていますが、これは、特殊な状況下でのみ、使用可能となっています。
　条件につきましては、今回は明示しません。


　一方のパルメーラですが、こちらは、裏ルートと言いますか、熟練契約者向けの、高難易度のルートとなります。
　攻略には、幾つかの条件が必要となりますが、ノーヒントでよろしくお願いします。



■■ＮＰＣ説明■■

都築中佐／教導団所属。「フロンティア・ヴュー」にて契約者達を引率し、代表して聖剣を受け取る。
　その後の調査任務で行方不明に。やる時しかやらない。
テオフィロス／都築中佐のパートナー。元エリュシオン龍騎士。真面目な堅物。都築中佐と共に行方不明中。

イルダーナ／エリュシオン、ミュケナイ地方の選帝神。柄が悪い。
トゥレン／イルダーナのところに居候している元エリュシオン龍騎士。マイペース。

ハルカ／天真爛漫イルミンスール生。財布は守りたいけど、皆に迷惑をかけるのも嫌でどうしよう。
オリヴィエ博士／ハルカのパートナー。女王殺害未遂の罪で服役中。呑気者。
　ミスリルの財布は、五千年前、シャンバラの宮廷魔導師だった祖父の形見の品。

トオル、シキ／イルミンスール生。ハルカの護衛をする予定。

アクリト／元空大校長。とある事件を引き起こして引責辞任、現在同校の講師を務める。当シナリオには関わらない予定。
パルメーラ／ナラカの世界樹アガスティアの化身。アクリトのパートナー。
　とある事件を引き起こした際にウゲンの裏切りに遭い死に掛け、現在アガスティアの中で治療中。


門番／霊峰オリュンポスの、皇帝の墓所の『死の門』の門番らしい。嫌な奴らしい。
朝永真深／ミスリル製の財布を狙って、オリヴィエ博士の元助手、ヨシュアを誘拐した。

・都築中佐達の足取りを追う

・ルーナサズでイルダーナに話を聞く

・ハルカの護衛

・霊峰オリュンポスへ門番に会いに行く

・世界樹アガスティアを目指す