今は昼休み。蒼空学園の校舎内にあるカフェテラスでは、生徒たちが思い思いの席に着いてランチを楽しんでいます。
新学期が始まったばかりで、大人数でテーブルを囲んでいる生徒も見られますが、おそらく上級生でしょう。新入生の多くは同郷の生徒たち同士やパートナーと座り、おしゃべりに興じながらも周りの様子をチラチラと見ています。まだ友達が多くできていないのかもしれません。
「ねぇねぇ、あの人かっこよくない?」
「どれどれ〜? ん〜そうかなぁ〜?」
「それじゃぁあの人、爽やかそうで素敵よね!」
「え〜? マナ、体育会系は興味なかったよねぇ〜?」
「じゃぁじゃぁ、あの人は!? 知的なメガネのクールなあの人!!」
「クールって言うより、根暗に見えるけどぉ〜」
あなたの座ったオープンテラスの席の近くからも、女の子二人の楽しそうな声が聞こえてきます。
栗色の髪の可愛らしい少女が、パートナーと思われる褐色の肌の守護天使の少女に、気になる異性を指差して聞いているようです。守護天使の少女は、その受け答えからいまいち乗り気ではないように思えます。
「マリエルさん、この中に絶対にマナミンの『運命の人』がいるはずなんだから、真剣に探して!」
「マナ……気持ちは分かるけど、ちょっと気になるからって、その人が『運命の人』になるとは限らないよぉ〜」
身を乗り出して顔を近づける小谷愛美(こたに・まなみ)を諭すと、マリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)は残り少ないケーキを口に入れ、頬に手を添えて至福の笑みを浮かべました。
その笑顔に毒気を抜かれたのか、愛美も席に座り直すと、抹茶オレを口に含みました。鼻腔をくすぐる抹茶オレの芳ばしい香りが、愛美の逸る心を落ち着かせました。
しかし、無理もありません。愛美にとってこの浮遊大陸は、小さな頃から「私の『運命の人』は、あそこにいるの!」とずっと思いを馳せてきた特別な場所なのです。
「なら、マナミンの『運命の人』と出会うにはどうすればいいと思う?」
「ほら、こういうのって、よく「お友達から」って言うよねぇ。まずいっぱいお友達を作ればいいんじゃないかなぁ? 100人くらいいれば、その中にきっとマナの『運命の人』もいると思うよぉ〜」
「友達100人……そうよ、それよ! さっすがマリエル、私のパートナーだわ。よーし、今度こそ『運命の人』を探し出すんだから!」
愛美はすっくと立ち上がり、力こぶしに決意を込めました。
動機はいささか不純ですが、これからの学園生活を送るのに友達は多いに越したことはありません。愛美とマリエルの話を聞いていたあなたは二人に声をかけ、先に友達になってしまうのもいいかもしれません。その後、愛美達と一緒に友達を作るのもいいでしょう。
もちろん、愛美達とは別に、個人的に友達を作るのもいいでしょう。
もしかしたらあなたが愛美の『運命の人』かもしれませんよ?