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なし

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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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リアクション

「お久しぶりです、大神さん」
 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)大神 御嶽(おおがみ・うたき)にぺこっと頭を下げた。
 御嶽とナナは様々な縁がある。
 解呪符をもらったときの御礼もしたいし、犯人を知ってるんじゃないかと勘違いして疑って問い詰めてしまったときの謝罪もしたいとナナはずっと思っていた。
 でも、なかなか機会がなく、今日になってやっと会うことが出来たのだ。
「わざわざ呼び出しに応じてくれてありがとうございます」
「いやいや」
 恐縮するナナに御嶽は軽く手を上げ、鷹揚に応える。
 御嶽が呼び出しに応じてくれたので、ナナは御嶽と一緒にツァンダ商業組合おすすめのカフェに来たのだ。
「大神さん、何を頼みますか?」
 ナナはカフェのメニューを先ず御嶽に渡し、注文を聞いた。
 渡されたメニューを見て、御嶽はすぐに注文を決め、くるっとメニューを逆に返して、ナナに見せた。
 ナナも御嶽も温かいものを頼み、二人は飲み物が来る間、話をした。
「この間は本当にすみませんでした」
 ナナは先ず謝罪をした。
「それに、今日もお呼びたてして、すみませんでした。その……中々機会がなくて申し訳なかったのですが、スライム事件の時は、私がとんでもない勘違いをしてしまって……本当にごめんなさい!」
 テーブルに頭が着きそうな勢いで、ナナが頭を下げる。
「謝ります。恩人でもある大神さんを疑ってしまって……ごめんなさい」
「いえいえ。私はもう気にしてませんので、どうぞ謝らないでください」
 頭を下げるナナを見て、御嶽は顔を上げさせ、軽く手を振った。
「それより最近は何か面白いことでもありましたか?」
 御嶽に話をふられ、ナナはイルミンスールの中で起きた事件などをいろいろ話した。
 お互いに代々魔術師の家系というのもあるので、魔術についての話も盛り上がったが、バレンタインらしくないなあと、ナナは自分で自分に内心苦笑していた。
 
 話が落ち着いた頃。
 ナナは御嶽にチョコを渡した。
「一連の事件では、大神さんにお世話になったので、ほんの少しですが……」
 箱には手作りチョコが6種類詰め合わせになって入っていた。
 味は極甘〜ビターになっている。
 形は普通の四角形で、出来はいいが、あまり大々的なものではなかった。
(あまり大々的なものだと紗理華さんに目の敵にされそうですしね)
 天城 紗理華(あまぎ・さりか)のことを思って、ナナはくすっと笑い、しばらくお話をして別れたのだった。


「この度はお誘いいただき、ありがとうございます」
 マリー・チャン戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)にまずお礼を言った。
 自分がバレンタインに人から誘われるなどとは思っていなかったようだ。
「大したものではございませんが……」
 マリーは小次郎にチョコを差し出した。
 バレンタインデーということで、感謝の気持ちを込めた義理チョコを持ってきてくれたようだ。
「これはわざわざどうも」
 小次郎も礼を返し、マリーを連れて食事に行った。

「ご活躍はお聞きしております。各師団で昇進なさってるそうで」
「ありがとうございます。ところで団長のご様子は?」
「今日はいろいろと予定があるようです。おかげさまで、あの時以来、気にしてくださる方が増えまして、ありがたいことです。まあ、あの方のことですから、一筋縄にデートとは行かないでしょうが……」
 野外のテラスでお茶を飲みながら、マリーが優雅に笑う。
 意外と愚痴めいたことがないことに驚きつつ、小次郎は疑問を口にした。
「貴方は団長が他の方に気にされるのがうれしいのですか?」
「それはもう。今までは士官候補生よりも目立たない方でしたから」
 関わってくれる方が増えてうれしいです、とマリーは笑った。
 小次郎はそんなものかなと思いつつ、お茶を飲もうとしたが、マリーの「ただし」という言葉に手を止めた。
「うちの団長もそうですが……各校長には様々な力があります。どこかの派閥がそれを利用するために近づこうというならば……それは全力で排除しないと、ですわね」
「派閥に属する人は好ましくないですか?」
「元々はどこに属していても他校の方でも構いません。ただし、組織に属することで、団長の公平性を疑わせるような真似をする人ならば……それは団長への想いがその程度と判断せざる得ませんわね」
 にこっと笑うマリーだったが、小次郎はその笑みが心底笑っているようには見えず、底の見えない女性だなと思うのだった。