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【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】

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【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】
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 第2章 「6大都市の地祇の力の強さは、その野心と反比例するみたいだねー」

■□■1■□■「たとえ世界が滅んでも、俺は絶対にマッスル爺キャラを諦めない」

 一方そのころイルミンスールでは。
 ウィニング・ウィザード・ザ・ニンジャに話を聞く者たちがいた。
 エル・ウィンド(える・うぃんど)
 パートナーの魔道書祝詞 アマテラス(のりと・あまてらす)であった。
 (ザンスカールとツァンダの全面戦争になってしまうとはねー。
  ボクはざんすかの味方だが、この戦い辛いものとなるだろう。
  やはり新たな仲間を増やしたり、敵の情報を知る必要がある。
  つぁんだは鏖殺寺院と繋がっているかもしれないな。
  まさか……MK5の残りが裏で手を引いてるのか!?
  バレンタインじゃ完全に忘れ去られていたがMK5のニンジャの実力は凄かった。
  彼を仲間に引き入ることが出来れば楽になるかもしれない。
  それにMK5の残りの奴らも心配だ。
  次回襲ってくるかもしれない!?
  よーし、仲間増やしと情報収集……やってやるぜ!)
 そんな考えから、エルはイルミンスールに潜んでいた、
 元「MK5」(魔女を 殺す 五人衆)のウィニングに接触したのであった。
 「MK5だとお? 俺はもうそんな連中とは関係ないぜえええええええ」
 いろいろあって、アーデルハイトに従うこととなったウィニングであったが、
 やはり、なかなか過去のことは話したがらない。
 アマテラスは、そんなウィニングの頬に手を当てる。
 外見年齢が10歳のアマテラスであるため、ちょっと背伸びする形になる。
 「おぬしはバレンタインで誰にもチョコをもらえず、さびしかったのじゃろう?」
 「ウィニイイイイング!?」
 アマテラスは、ショコラティエのチョコをウィニングに手渡す。
 「わらわのことを『母』と呼んで甘えてもよいのじゃよ?」
 「な、何言ってるんだ!? おまえみたいなガキなんかに……」
 「ニンジャはしかたないのう。
  なんなら、膝枕して耳掃除してあげてもよいぞ」
 小さいながらも精神年齢は高く、母性本能の強いアマテラスが、
 「子どものいうこと」だからと、ウィニングの発言を余裕で受け流す。
 「な、なんだとおおお」
 アマテラスは、動揺するウィニングを優しく抱きしめ、頭をなでる。
 「ウィニイイイイイイイング、うおおおおおおおおおおお」
 ウィニングは号泣した。
 「俺は、俺は、俺はああああああ、
  もしかしたら指名してもらえるかもしれないって思っていたんだああああ!
  俺が設定崩壊ビームを使えたときは、みんなあんなにかまってくれたじゃないかあああ!
  なのに、よくわからん娘がチョコを盗んだら、
  みんなそいつのことは散々かまってやって、最後には仲良くなってたのに、
  バレンタインに俺は誰にも相手にしてもらえなかったんだあああああ!
  俺はあんたに忠誠を誓うぜ、マーマ!!」
 「よし、陥落じゃな」
 アマテラスがウィニングを抱きながら、妖艶な笑みを浮かべる。
 「マーマの言うことはちゃんと聞くんだぜ?
  というわけで、MK5の他のメンバーのことを教えてくれないか」
 「おしえて、ニンジャ」
 エルが言い、アマテラスがにっこり笑うと、ウィニングが語り始める。
 「俺と朝臣 そるじゃ子(あさしん・そるじゃこ)のほかには、
  異端審問官の女がひとり、いたはずだぜえええええ。
  それ以上のことは知らないが、なんだかすげえ残忍な奴だった気がするぜえええええ」
 「やった、女の子か! じゃあ、あとの2人は?」
 エルが喜んで続きを促す。
 「他の奴らがどんな奴だったかはわかんねえな」
 「わからないって、もしかして、風呂敷を広げすぎて伏線が回収できないんじゃないのか?」
 「知らねーよ!
  ていうか、MK5は地祇の戦争とは関係ないだろおおおおお。
  魔女狩り関係ないし」
 「ええっ、じゃあ、その新たな女の子は!?」
 「このキャンペーンシナリオには登場しねーよ。
  ていうか、シナリオガイドにMK5の話書かれてねえだろおおお」
 「やっぱり、とりあえず5人いるとか言ってみたものの、
  回収できない伏線になってしまったんじゃないのか!?」
 「俺が知るかああああ!!」
 

 一方そのころ、ざんすかラリアットでぶっ飛ばされて、
 イルミンスールの森に落下したアーデルハイトは、
 ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)と、
 パートナーの魔道書ロレッタ・グラフトン(ろれった・ぐらふとん)に救出されていた。
 「アーデルハイト様、大丈夫?」
 空飛ぶ箒に乗ったミレイユが、木に引っかかっていたアーデルハイトを発見し、ヒールをかける。
 「むう、すまんな……。
  ん、どうしたのじゃ?」
 アーデルハイトが、ミレイユの箒の後に乗っていたロレッタの視線に気づいて問う。
 「な、なんでもないぞ。アーデルハイト殿がおいしいのかどうかなんて考えてないぞ」
 ロレッタは、たれそうになっていたヨダレを拭いて慌てる。
 「ご、ごめんなさい。
  アーデルハイト様のスペアのお話を思い出してこんな事言い出しちゃったのかも」
 ミレイユが、ロレッタの口を塞ぐ。
 「ミレイユ、ロレッタは……もがもがもがだぞ」
 「だから、何度も言っておるように、あれはエリザベートが勝手に混ぜたのであってじゃな……」
 しかし、アーデルハイトの身体からは、チョコと生クリームの香りが漂ってきた。
 ミレイユとロレッタのお腹が同時に鳴る。
 「……ごめんなさい。いいにおいしたから、つい……」
 「ごめんだぞ……」
 ミレイユとロレッタが気まずそうに謝る。
 「ち、違う! これはさっきこっそり食べていたケーキが服の裾についていただけじゃ!」
 アーデルハイトが必死で言う。
 「そういえば、ざんすかさんとつぁんださんがややこしい事になってるので
  止めにいこうかなと思ってるんですけど」
 ミレイユが、アーデルハイトがぶっ飛ばされた後の話を説明する。
 「なるほどな。学生たちまで巻き込みおって……」
 「一緒に止めに行ってくれませんか?
  これ、じゃたさんが暴走して手に負えなくなったら使ってください」
 ミレイユがチョコマカロンを差し出す。
 「……お菓子があったんだぞ」
 「ロレッタ、これはじゃたさん対策だから、食べちゃだめだよー」
 ミレイユが静止すると、ロレッタがしょんぼりする。
 「うーん、ちょっとだけなら……」
 ミレイユが迷っていると、土煙とともにじゃたが走ってきた。
 「じゃたーーーーーーーーッ!!」
 「ええっ、じゃたさん、あの棒とぶら下げられたチョコは何?
  わー!?」
 「ああっ、もったいないんだぞ」
 ミレイユは、思わず黒豹耳しっぽ姿になり、ハーフムーンロッドでチョコマカロンの袋をかっ飛ばす。
 ロレッタが、名残惜しそうにするが、
 じゃたは、チョコマカロンの袋めがけて走って行き、ミレイユたちは難を逃れた。
 「やれやれ、助かったわい」
 「アーデルハイト様がじゃたさんに食べられたら大変だもんね」
 「私の身体はお菓子じゃないと言っておるじゃろうがっ!!」


 一方そのころ、イルミンスールの大図書館では。
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)と、
 パートナーのヴァルキリーシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)
 同じくパートナーのドラゴニュートキュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)
 同じくパートナーの野牛の獣人ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)が、
 地祇の歴史についての文献を調べていた。
 「ああいう話を聞いちゃうと、他の地祇のことも気になるわよね。
 大昔のことだからそう簡単にはいかないかも知れないけど、手分けして調べてみましょう。
 私はツァンダのことを調べるから、みんなもそれぞれ頑張ってね」
 リカインが、書物の山を前にして言う。
 (調べ物? それじゃフィスはざんすかを……ってこれはもうわかってるんじゃないの?
  ……よし、ここは気がついてないふりをして古王国時代のことを調べてよっと。
  イルミンスールの図書館ならかなり期待出来るみたいだし、
  少しでも記憶をはっきりさせたいからね……)
 フィスこと、シルフィスティは、地祇の戦争には興味がないからと、
 自分のかつての記憶を取り戻すために、古王国時代についての文献を読みあさっていた。
 「ふむ、では、我はきまくのことを……おい、フィス、それはあまり関係ないのではないか?」
 「そんなことないよー。フィスはこう見えても博識なんだよ。
  一見関係なさそうに見えても、こういう本に重要な情報が書かれてるんだから」
 「そうなのか?」
 「そうそう」
 その場はフィスに丸め込まれたものの、気苦労の耐えないキューであった。
 「お嬢、ひらにぃについての本がみつかりやした」
 ヴィゼントが言う。
 本来であれば、ヴィゼントはヒラニプラ現地で調べたかったところだが、効率を考えて、
 4人ともイルミンスール大図書館で調べることになったのだった。
 「んー、どれどれ。
  ええーっ、武器がドリル!?」
 「我も、きまくについての記述を見つけたが……どうやら、武器はナタやカマのようだな」
 驚くリカインに、キューが言う。
 「あっ、ここに地祇の昔話が載ってるわよ」
 リカインが指し示したのは、易しい言葉で書いてはあるものの、
 かなり残酷な内容であった。
 「うわあ、ざんすか八つ裂きだって……」
 リカインが、顔をしかめる。
 「こういう昔話とか神話って、残酷なのが多いのよねー。
  あ、地祇の強さの話が書いてあるー」
 フィスが、キューの本を覗き込んで言う。
 「ふーん、6大都市の地祇の力の強さは、その野心と反比例するみたいだねー。
  6人の中では、つぁんだが一番弱いって書いてあるよ」
 「ふむ、それで、3人がかりでざんすかを襲ったということか……」
 キューが腕組みして言う。
 「ふーん、面白いことわかっちゃったかもね」
 リカインは、つぁんだの正体がわかったと、いたずらっぽい笑みを浮かべるのだった。

 
 一方そのころ、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)のチョコインゴットで倒されていたざんすかは、
 棚畑 亞狗理(たなはた・あぐり)と、
 黒崎 天音(くろさき・あまね)
 天音のパートナーのドラゴニュートブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)に囲まれていた。
 「地祇ちゅう種族。地域密着型萌え種族じゃろ?
  ちゅうことは巷で流行の『萌え米』『萌え漬物』『萌え肉』に相性抜群って事じゃ。
  ゆる族とは別の、欲望ド真ん中に郷土愛精神を直撃できる種族の筈じゃ。
  ほれ……じゃたがジャタの蛮族をドMにした様にじゃ!」
 じゃたを崇めるオマタゲ・ソルデス一党をドMにしたのは、
 【農業主義の豚】こと亞狗理が原因の一人であったが、そんなことは忘れて、
 いつものように微妙に勘違いした暴走発言をする。
 「キマクの地祇ちゅうからには、
  色々と“きまくっ”ちょるわけでドキがムネムネするのう。ハァハァ。
  じゃたのように農作物の依存症になっちまえば、キャンギャルにスカウトするのも楽じゃろう」
 「ねえ、ざんすかは、どうして5000年前にぼこぼこにされたの。
  そんなに、他の町の地祇たちに恨みを買うようなことをしたのかな」
 「ふむ……」
 天音がざんすかに質問し、ブルーズが、ざんすかを見つめて首をかしげる。
 「ミーは別に、いつもどおりにしていたのに、
  いきなり、つぁんだときまくとひらにぃに襲われたざんす!
  本来なら、ミーがあいつらに負けるわけないざんす!
  つぁんだは昔から卑怯者で許せないざんす!」
 ざんすかが、拳を振り上げて言う。
 「筋骨隆々ならね……」
 その姿を見て、天音がぼそりとつぶやいて溜息をつく。
 「何を考えているのだ?」
 「別に……」
 ブルーズの問いには答えない天音であったが、なんとなく、考えていることは予想できた。
 ざんすかのような幼い少女よりも、
 「ナイスミドルや筋骨隆々の年かさの男性」の方が、天音の好みだったからである。
 そこに、ミレイユたちとともにアーデルハイトがやってきた。
 「大ババ様!
  昔話を聞かせてほしいんじゃ!
  さすが、ジジイも真似するウケ狙いなお姿!
  ざんすかのPTSDを刺激する話をたっぷり知っていそうじゃ!」
 亞狗理が、無邪気な子どものような目でアーデルハイトに昔話をせがむ。
 「誰がウケ狙いじゃ!!
  私が知っておる話では、
  乱暴者のざんすかを、悪知恵の働くつぁんだが、
  素朴な農民娘だが力の強いきまくと、
  素直なひらにぃをたきつけて、
  3人がかりで倒したということじゃのう」
 アーデルハイトが答える。
 「素朴な農民娘!
  そう見せかけて、実はスゴイんじゃ!
  “きまくっ”ちょるんじゃ!」
 「誰がPTSDになってるざんす!!
  きまくなんか、普段はその辺で転ぶようなドン臭い奴だったざんす!
  本来ならミーが負けるわけないざんす!!」
 ざんすかが、昔話にブチ切れて、亞狗理をラリアットでぶっ飛ばす。

 亞狗理は、お星様になり、「るる4号」と名付けられた。

 天音は、冷静に話を聞いていたが、
 「これって、どうも地祇のケンカだったみたいだけど……ざんすかも悪かったんじゃないの?」
 と、気づいていた。

 「……はっ?
  ヒゲマッチョなジジイが総受けだが良いのか?
 むしろ逆に、ドS僕っ娘に調教されたいニーズを掘り起こしちまわないか?
 きまくっちもジジイじゃったらどうする?」

 「僕っ娘はともかく、筋骨隆々な年かさの男性に会えるなら、僕はかまわないよ」
 「天音、あまりざんすかを刺激するな。
  お前も星にされるかもしれんぞ」
 微笑を浮かべて「るる4号」と交信する天音を、
 ブルーズは本気で心配しており、
 いつもながら、天音が大切に思えてしかたない自分はマゾなんだろうか? とこっそり悩むのであった。

 そこに、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)と、
 後藤 日和(ごとう・ひより)が現れる。
 「ざんすかさん、私はざんすかさんに味方します。
  住んでいる所はツァンダですが、リンチをする様な人とは協力したくはありませんので。
  でも、あなたは間違ってると思います。
  受け狙いで今の姿になったのだとしたら、それは戦略的に誤りだったと思います。
  お子様にラリアット喰らうより、
  やはり筋骨隆々のお爺さんにラリアットを喰らう方が絵になると思うのですよ。
  ……私ならロリっ子よりお爺さんの方がキャラが立っていて好きなのですが」
 「お前は間違っている。いいかよく考えろ。
  そもそもこの界隈でそんなロリショタキャラなど
  とうに飽和状態で、
  そんなキャラなど『でもそのキャラって作ってますよね』と言われた挙句、
  半年後には新キャラに押されて忘れ去られるのがオチだ。
  大体ザンスカールの森の精だからって語尾にザンスとかそういうキャラ付けもどうなんだ。
  これからの時代の主流はロリショタから一周して爺キャラの時代が来るから、
  あんたもそんなキャラなどやめて早く在るべき姿に戻るがいい」
 真面目な優希の説得と、
 働くのは嫌いだが、よくわからないことにはやたら執念を燃やす日和の徹底抗議が炸裂する。
 「それにここにはすでにエリザベートさんや
  アーデルハイトさんもいますし、
  蒼空学園にはマリエルさん、
  教導団にはキリンさん、
  百合園には瀬蓮さんもいます。
  ……ざんすかさんが作成される前に、
 NPCのキャラクター検索をして学校ごとの人数を確認されました?
 私もツァンダの老夫婦のお宅に下宿中なのですが、
 お爺さんと一緒の暮らしっていいものですよ」
 「そうだ! PCにもロリショタなど大勢いるし、
  埋没してしまうのがオチだ!
  笑わせるな。
  たとえ世界が滅んでも、俺は絶対にマッスル爺キャラを諦めない」
  こんこんと諭すように言う優希と、
  熱く「爺キャラ」への思いをほとばしらせる日和であったが、
  主張したいことは同じであった。
 「うんうん、やっぱりそう思うよね」
 「天音……」
 うなずく天音の様子に、ブルーズが頭を抱える。
 「ビジネスでは、競争相手のいない分野で戦えば、一人勝ちできるというのが常識です。
  お爺さんなら、まだほとんどいらっしゃいませんし、
  渋いキャラが好きな方にも人気が出ると思うんですよね」
 「マッスル爺を!
  世界にマッスル爺を!」
 「やかましいざんす!!
  ミーは今の状態が一番人気キャラになれる姿ざんす!
 その証拠に、『ヤバい』の感情設定してる人が複数いるざんす!」
 「それはそういういい意味じゃないのではガフッ!?」
 「これで勝ったと思うなよォー!」
  優希と日和はぶっとばされ、「るる5号」、「るる6号」になった。
  
 「きゃー、コンタクトがどこかに行ってしまいました。
  念のためポケットに予備を入れておいて正解でした」
 「るる5号」が、ビン底レンズの眼鏡からコンタクトに代えて、
 徐々に行動的な性格になってきているのも、
 イルミンスールでひどい目にあいまくっているせいも多少はあるかもしれなかった。