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【ろくりんピック】流れるプールで水球勝負!?

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【ろくりんピック】流れるプールで水球勝負!?

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空京。
水球が行われるこの日、暑さは際立っていた。
涼を求めて水辺には多くの若者が集まっている。このところ、人が集まると必ずろくりんピックが話題となる。
今日も会場からは歓声と悲鳴が響く。


ゴーゴゴーと水音がろくりんピックで水球が行われるプールから聞こえる。このプールは、まだ一般には開放されていないが、水は 流れて蛇行し、途中にウォータースライダーが設置されているとの噂だ。
地球のウォータースライダーは、階段で高所まで上り、そこから地上まで水の流れる曲がりくねった筒状の中を滑り落ちるものだが、ろくりんピックのウォータースライダーは、プール内の水流で一気に泳者を押し上げ、そのまま筒に入り、急降下するようだ。
地球で開催されたオリンピックでも、使用したプールを開催後に遊園地のような設備を追加し、市民に開放していると聞く。
ここも、開催後は市民に開放されるのだろう。
「俺たちも入りたいよな」
若者たちは、ろくりんピック後に開放されるであろう、まるで遊園地のような水球プールを楽しみにしている。
しかし、今から始まろうとしているのは、ろくりんピック競技だ。選手にとっては、それほど楽しい場所ではなかった。



☆1・応援合戦☆


ろくりんピック・水球競技が行われるプール。周囲はそりたった観客席に囲まれている。観客席からは、横幅2メートルほどの細長いコースが蛇行し、水流は渦を巻いて流れている様子が見える。コースの2ヶ所には、ウォータースライダーが設置され、その滑り落ちた先にゴールポストがある。一番低い水面とウォータースライダー入り口の高低差は約10メートル。観客席の最上階は、ウォータースライダーの入り口と同じ高さに設置されていて、その水流の激しさを見ることができる仕掛けだ。それぞれのゴール付近だけはプール幅が広がり、水流が落ち着いている。
ゴール前には、それぞれのチームの応援ボックスが用意されていた。


西ゴールの前には、【西シャンバラチーム】


東ゴールの前には、【東シャンバラチーム】



試合開始まではまだ時間があるが、既に応援は盛り上がっている。
一般観客の注目を集めているのは、その応援合戦だ。両チーム共に、そのチームカラーがよく出ている。
申し訳ないが、圧倒的に、観客は東チームの応援に目を奪われていた。


☆【東シャンバラチーム】応援団



「なぜ、あたしがチアガールなのよ」
音を立てる水流を前にして、東シャンバラチームの応援に呼ばれた横山 ミツエ(よこやま・みつえ)は、プール内に飛び込みたい衝動と戦っていた。応援席は暑い。敵チームの中にあって、水着姿で指示をしている金 鋭峰(じん・るいふぉん) をうらやましげに睨む。
しかし、多くのチアガールのど真ん中に立たされてしまったミツエは、逃げるわけには行かない。

両手に持ったカラフルなボンボンをおもいっきり振るミツエ。
しかし、その両足は仁王立ちだ。
目は、ずっと金鋭峰を睨みつけている。
その両側には息のあった踊りを見せる秋月 葵(あきづき・あおい)ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)がいる。
時折プールから水しぶきが、チアリーダーたちの背中を打つ。そのたびに明るい笑い声があがる。
「ミツエさんの気持ち分かる」
短いチアのスカートの下にアンダースコートを履いた葵は、思いっきり足を上げて、観客の声援を浴びている。
葵はミツエとは顔見知りだ。
「私も選手として戦うつもりだったけど、良く考えたら…泳げなかったよ」
葵は、ミツエの肩をポンと叩き、
「とにかく応援!」
「いけいけGOGO!東シャンバラ!!」
声を張りあげた。

「フレっ、フレっ、イ〜シャン!」
葵と掛け合うように声を出しているのは、ヴァーナーだ。
チアガール風のミニスカと応援ポンポンをもっている。
「ミツエさん、だいじょうぶです。かんたんですよ」
ミツエが棒立ちでがむしゃらにボンボンを振り回しているのは、踊りが分からないからだとヴァーナーは思っている。
「うでふって、あげて、くるくるまわして、『フレっ、フレっ、イ〜シャン!』です」
観念したように、ミツエがヴァーナーを真似ている。
「ひざあげて、足あげて、『ファイっと、ファイっと、イ〜シャン!』 」
「クルっとまわって、ポンポンあげて、ゆらして『ゴ〜っ、ゴ〜っ、イ〜シャン!』 !」
「簡単だわ」
ミツエは、相手チームを睨みながらボンボンを振る。
「ミツエさん、笑顔、笑顔忘れてるよ」
葵が小声でささやいた。


☆【西シャンバラチーム】応援団
チーム団長・金鋭峰を助っ人として頼んだシャンバラ教導団は負けられない戦いと、この水球競技に望んでいる。
応援団も教導団カラーの色濃く出たものとなっている、
「西シャンバラファイトー!!団長も来てんだ、負けるわけにはいかねぇぞ!!」
自軍ゴールの真後ろに陣をひき、大声を上げているのは、アルノー・ハイドリヒ(あるのー・はいどりひ)だ。男性用西シャンバラユニフォームに頭には黒いバンダナを巻き、応援団のように両足を踏ん張って、おなかの底から声を絞り出している。
傍らには、アルノーと共にきたギルベルト・ハイドリヒ(ぎるべると・はいどりひ)、ご渦巻く水流を眺めている。スラーダー入り口手前で渦巻く水流を眺めている。
「皆怪我しないといいなぁ」

ヘラ・オリュンポス(へら・おりゅんぽす)は、7百年のときを生きる吸血鬼だ。
「スポーツ観戦など何百年ぶりだ…」
呟きながら、氷術を使って氷を作り、タオルで包んだ物で涼を取っている。
この日は暑い。乞われるままに、ヘラは他人に分も作っていた。
気が付くと、ヘラの特製氷枕を求めて、列が出来ている。
「望まれれば東西関係なく他の者たちにも同じ物を渡すぞ」
アルノーがやってきた。
「なぁ、相手のゴール近くの水を吸い込む筒、あの入り口を狙ってヘラ(LC3)と一緒に氷術かけねえかぁ。水温の低下によるゴールキーパーの機動力低下と、入り口が狭まることで水流を強める事を狙おうぜ!」
「無理だ」

女性用西シャンバラユニフォームを来た少女、シルト・タクティク(しると・たくてぃく)が何処から戻ってきて駆け寄った。
「何が無理なんだぁ?」
「氷術は今回、人気なのだそうだ。今、作戦会議で言っておった」


試合開始前に入念な準備体操をしているのは、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ(しるう゛ぃあせれーね・まきゃう゛ぇり)グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)だ。
「大切な一戦に際して足を攣っては大事、なのでまずは念入りに準備運動ね」
西シャンバラユニフォームを着た三人は、体操をしながら、今日の作戦を練っている。
「超感覚で足をヒレ状にして潜水して進むわ、で、ボールを持ったらゴール前でシュートと見せかけてセレンにラストパスを送る、いいわね」
ローザマリアの言葉に頷くシルヴィア。
「そうだな、わらわは、ボールを持った敵や進路上に立ち塞がる敵にその身を蝕む妄執をかけ巨大なサメ等の水棲モンスターの幻覚を見せようか。三人おれば、様々なバリエーションが出来るであろう」
グロリアーナは、様々な案をローザマリアに提示する。