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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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空路 2
空京

   
 飛空艇、空京着。ここでは、若干の荷物とそれに傭兵に志願してきた者たちの雇い入れを速やかに行う。
 集まった傭兵の数はさほど多くはない。
 十数名が、教導団や湖賊の各艦へと振り分けられ、乗り込んでいく。
 特に目立った者は……
「志願した理由? そうだなーコンロンがどんな場所か見てみたいと思ってな。見聞を広めるのは大事だしな」
 空大生だという。
 いや、しかし、元パラ……とにかく、十分な戦力になりそうなことがひしひしと窺われた。ここに待機していた傭兵らの一部ともすでに仲良くなって、頼られている存在のようだ。その鍛えられた風格からは想像付かないが、
「俺はコンロンに伝わる医術や薬、そういったもんを調べてぇな。医者になるのが夢だからなー他国の医療技術はどうしても気になるもんだ」
 とも。
 彼はラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)と言った。
 彼の共、
「我はただ戦う存在だからな。戦いがある場所に行くのは当然だろぃ?」
 秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)もまた力強い連れであった。
「なるほどラルク殿は医術を……か」クレア中尉。「空路の指揮を執る、教導団のクレア・シュミットだ。見知りおきを。医術の心得がある者とは心強い。私もこうして指揮を執る身にあるが、元々は……おっと。そのことは今はいい。では、教導団の艦に乗り込んで頂こうか。それとも、湖賊に医師がいなければ、あちらのがいいかも知れない」
 
 また、このような者もいた。
「ヒィーハァ!」
「なんだいあんたは一体……」
 湖賊頭領のシェルダメルダも面接を担当。
「ウッ! ……ってぇ。最近頭痛がする。眠れない!
 複数の幻聴が聴こえて聴こえて、カラダが自分のじゃない気がする……」
「……」
「だけど幻聴がコンロンに行けコンロンに行けと」
「そのピエロメークでかい」
「ヒィーハァ!
 こう見えてな、このナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)
 グラシナにも登場したぁタシガン空峡が根城の、ヨサーク空賊団団員で、飛空艇を操舵した事も、あんだよぉ」
「ほう」
「これまでにお金稼ぎで教導の依頼受けたことがある。雲賊についても、知ってるンダヨー?」
「そうかい。連れていくか?」
「ぐっ、……ここまで聞いてそれかよ」
「うむ。いいと思う。だがその身なり……」
「ンだぁ?」
「うん。これは湖賊の方に乗っけてくしかないねえ」
「すまない。頭領殿」
「いや。いいんだ。面白そうだし、こういうの嫌いじゃないよ」
「ぐ、う。……あのなァ!!」
 まァ、いいサ。「じゃあ、頼むな」ナガンと名乗った者は、先っちょに白いひらひら(褌?)を巻きつけたほうきだけ持って乗り込んだ。
「掃除でもしてくれんのかねえ」
「いえ、邪魔にならないよう、(賊が出るまでは)隅っこで大人しくしてます」
 
「お頭ー、そいつで最後ですかい? 荷物の方はほぼ……」
「いや、大事なのがもう一人いるよ。忘れるわけない!」
 シェルダメルダは、湖賊らが荷物をほぼ運び終えた艦の後部へ走る。
 湖賊の船員らと一緒になって、荷物を運び入れている者。
 樹月 刀真(きづき・とうま)だ。
 勿論、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)玉藻 前(たまもの・まえ)も一緒だ。
「刀真!」
 頭領のシェルダメルダには懐かしい者との再会であった。それほどの時は経っていないかもしれない。でももう一度あるかどうかもわからない再会であった。
「シェルダメルダとわかれる時、困っていたら助けると宣言しました」
「ああ。本当に、こんなに早く(それにもう一度)助けてもらうことになるとは、思わなかった」
 南部平定戦で、教導団より以前に個人的に湖賊と接触し、最後まで共に戦った、シェルダメルダにとっては忘れられない友とさえ言えた。
「(慣れない空路を使ったコンロンへの出兵……)」
 幾許か、シェルダメルダも不安でいる筈だ。
 今は、蒼空学園のロイヤルガード、としても一緒に船に乗り行く、ということになる。「よろしく」クレア中尉もまた、同じ西側のロイヤルガード。刀真とは仲間と言えた。
「タシガン空峡を渡る前に、蒼学のあるツァンダで補給できるよう手配を取っておきました」
「ありがとう。タシガン前の備えは、より万全になるな」
 そして、コンロン。刀真は、決意の表情を見せた。この作戦が成功すれば、エリュシオンにいるジークリンデを助ける為の足ががかりにもなるはずだ。
 それに……刀真はまだ何かを秘めているよう。
「刀真。私が刀真の手伝い、するから」
 そう言う月夜に刀真は、頷いた。
「頭、あの子は元気? 頑張ってる?」
「月夜も、久しぶりだね。船室でゆっくり、話をしよう」