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第四師団 コンロン出兵篇(第1回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第1回)

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「女は度胸!」
 黒豹小隊の、ジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)。隊長の黒乃と共に、紛争地帯で育った経歴を持つ。
 これまでは、女であるがずっと軍人らしく振る舞ってきたジャンヌ。
 この旅では、キャスケットを被り、ロンTワンピにデニムパンツ。リュックをしょって、更にバックパック。寒いときにくるまって眠る毛布。パワード系アイテムをヘリファルテに載せ、女商人に扮して行く。
「こういう私もいいかな……とも、ちょっと思う」
 一路、シクニカ方面を目指して。そこは砂漠に隣接する、コンロン最東の軍閥だ。
 こうして、女として独り旅をしてみると……『構わず吹き飛ばせ!!』。――なんて言っている戦場の自分が思い起こされて、何だか……この性格に髪の短さもあって女? と問われれば『性別など関係ない』、年齢を聞かれれば『いちいち詮索するな』と冷たく返しつづけてきたけど……
「ふぅ。やっぱり、軍隊の中にいた方が私らしいか」
 今頃、黒豹小隊は戦友のロイが預かり、内海を渡って……いや、もうそろそろ黒乃隊長のもとへ到着した頃だろうか。
「でも、これも任務だ。仕方ない。情報は、クレーメック少尉に上告しよう」
 ジャンヌを乗せたヘリファルテは、砂漠に差しかかる。
「ん? 何が来る。この気温の下がり方は、異常だぞ。コンコン、う、動かない……」
 砂漠の空を猛スピードで駆けていった何者かに、ヘリファルテは巻き込まれ、落下してしまった。
「高度を下げていたので、何とか助かった……さっきの、何だ。骨のような翼のようなものだった。シクニカの方へ向かっているのか……
 く、せっかく持ってきたパワードアイテムが台無しだ。破損していないものを、詰めれるだけリュックに詰めていこう」
 あっ。そのときジャンヌは見た。
 さきの翼が飛んできた方角の、砂漠の彼方から、またやって来る者が……今度は、のそのそ、ぞろぞろ、と……
「な、何。軍隊? いえ、全然統率も取れていない。だけど凄い数……難民? いや、あれは……」
 ジャンヌは、さっきから周囲の気温が下がりっぱなしなのを思い出したように、毛布を引き寄せる。
「ううう。寒気がする。いえ悪寒がする……ロイ……音子ぉ。……ルノー……」
 ジャンヌは、脚をひきずるように、歩き出した。とにかく、シクニカの方に逃げるしかない。あれに追いつかれるのは、やばそうだ。
 無数の亡霊たちが、やって来る。
 
 
 さて、これまで幾度か物語に登場し出会う者を恐れさせ恐ろしい所業も行ってきたあの翼は、最終的にシクニカの空を旋回し、下り立っていった。
 【桐生組】と書かれた旗の立っている一砦。
「まどかちゃーん、ひなにぃー、あっそびにきたよー」
 牛皮消 アルコリア。
 翼を閉じれば、一人の綺麗な女性がそこにいるというだけなのだが。
「はーい。おお、あるもー(アルコリア)!」
 出てきたのは、桐生 ひな(きりゅう・ひな)だ。
 百合園の腐りまくり縁の二人。再会を喜んだ。ひなは、アルコリアが加勢に来てくれたことにはきちんと礼を述べる。
「まどかちゃんは?」
「円なら、戦争に行ってますよー」
「ふーん。じゃあ、私もそっちへ行った方がいいかな?
 めんどいのきらーいだし。連れてきた兵も任せるね」
「えっ。兵まで! ふふふ。これで戦いもらくになりますねー。
 どこですかー? どれくらい?」
 ぞろぞろ。砦の上から見える国境の関所の向こうにぞろぞろと、千くらいだろうか。こちらへ向かってくる。
「うわ。うわー」
 亡霊の群れだ。
「あ、あれも一緒に、円の加勢に行ってくれた方がいいかもですっ。
 その間に、どうするか考えておくのですー」
 ひなは、この砦を落として以来、内政に手一杯であった。ひなはその方面の能力に秀でてはいたものの、内政の人材はひな一人しかいない(ひな以外あとは全部武将みたいなものか?)。
 シクニカは圧政を敷き、民との関係が良好な国ではなかった。盗賊被害も頻繁に出ている。
 ひなはこの圧政の緩和し領民の苦しみを取り除くことで、民の心を味方につけていこうと日々奮闘することになった。
 税率の見直し・奉納品の一時凍結……
 ナリュキにはとりあず、備蓄の確認を任せている。ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)は、おりぷー(オリヴィア)が戦争に行ってしまい、少しさみしかった。おりぷー弄りができない……「んむ、んっ……いってらっしゃいにゃー♪」キスでおりぷーを見送ってからの、なにか物足りない日々(それはまだ昨日のことであったが)。
「おお、しかし領主はけっこう蓄えておったようじゃの。桐生軍(六人?今回増えるが)を動かすには十分じゃろうが。それを取り分けたら、残りを還元するというのがいいのじゃろうのう……?」
 新領主が着任したと聞いて、苦しんでいる領民らが、早速ひなのもとを訪れてくる。
 税を下げろ。盗賊を何とかしてくれ。などである。
 ひなも民と話し、土地の産業についての知識を得る。種となる材料や資金を此方で補助してあげるのですよ〜と。勢力を固めるには内側から強くなる必要があるのですからっ。
「桐生組がシクニカの未来を切り開いてあげるのですっ」
 
 内政や、あるいは政略を行っていくとすれば、難点になりそうなのは、シクニカには(クィクモやヒクーロ方面でいえば雲賊にあたるような)盗賊が地下組織として街に根を張っているらしいことである。噂だが、軍閥上層部とつながりのある者たちが、こういった地下組織を牛耳っているのではという話もある。
 さらには、シクニカ軍閥はコンロンに伸びているエリュシオン帝国とすでに手を結んでいるという点だ。
 
 
 シクニカ軍閥の長は、兵を率い、いきなり攻め込んで砦を落としたという相手を討たんと出向いてきた。
「ふうむ、桐生組か。面白い。
 オレが直々に、出向いてやる。そいつらは全員、オレ式の拷問にかけてやる、この世でいちばん気持ちいい拷問にな!!」
 その道の途中、礼儀正しく、にこやかに話しかける女性。
「御機嫌よう、貴方が軍閥の長かしら? 私はオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)
 シクニカ軍閥の長……貴方の地位を頂けないかしら?」
「な、何」
 オリヴィアはアボミネーションを発動する。
「で、では貴様が例の、砦をたった六人で落としたという女子らの一人……ぬお、は、はかったな」
 兵士はアボミネーションによって恐慌状態に陥った。
「あわ、あわてるな。て、敵は少ない。数で押さえ込め!」
「もちろん、すぐ了承するとは思ってません。これで判断してもらいましょうか」
 オリヴィアは手を挙げて合図する。
 すると、道の脇から桐生 円(きりゅう・まどか)が現れ、魔弾をつめこんだ両手のレーザーガトリングで情け容赦ない射撃を開始。「当社比四倍の光の雨をプレゼント」ぶっ放した。オリヴィアと髭の周辺の兵を撲滅。
 オリヴィアが再び手を挙げ、射撃終了の合図を出す。
「私の下につきなさい。コンロンの隅っこで様子を見つづけるのも面白くないでしょう? すごく、すっごく楽しいことになるわよー」
「バ、バカな。オレは、シクニカの王だぞ」
 さっ、オリヴィアがまた手を挙げた。
 死んだ兵たちが、レイスになって起き上がる。
「きゃあ゛ぁぁぁ」
 長は落馬した。
 そこへまた違う女がやってくる。
 円とオリヴィアはしらけた目でその女を見る。ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)だ。
 「今頃やってきて……」円はぶつぶつ言う。「ボクと一緒に出て、取り囲むはずだったのに、タイミング遅すぎ。まったくアホの子……」
 ミネルバは、
「ねーねー、この剣なーにー?」
 長の兜に刺さっている剣だ。もちろん、長の(思う)格好いいファッションなのだが
「もしや伝説の剣? ささってるのー? ぬいていいー? いや、ぬくよー、断ったら逆に押し込むよー!」
「うわ、な、何をする、やめ、やめぬか、ぬ、ぬ」
「抜けたぁぁ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛」
「なんだ。ただの剣か。戻すよ」ざくっ(あれ、何かやけに深く刺さったような)。
「ぎゃあ゛ぁぁぁぁ」(残りHP1)
 さらにまた今度は小さな女の子がやってきた。
「あのぉー、素敵なお髭のおじ様。お名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
 円、オリヴィア、「……」。完っ全にタイミングが…………
「あっ」
 女の子のつまさきが、冠に刺さる剣の柄にちょこんとあたった。
「゛ぁぁぁぁ」ぱたり。
「あのぉー、素敵なお髭のおじ様。お名前……あれ? あれ?」
「あははー、死んじゃったみたいだねーおっさんご愁傷さまーぁ。
 よくできましたー。さ、いこいこ」
「う、うん」
 ミネルバが女の子を連れて、円とオリヴィアのもとへ来る。
 女の子は、新しく桐生円のパートナーになったばかりでまだキャラも固まっていないアリウム・ウィスタリア(ありうむ・うぃすたりあ)であった。これで、おそらくキャラが決まった。
 
 桐生円にオリヴィア、ミネルバ、アリウム・ウィスタリア……
 桐生ひなにナリュキ・オジョカン、ぶちぬこ……
 アルコリア、ラズン、シーマ、ナコト・オールドワン……
 十一名は軍閥シクニカを陥落させた。
 ここにコンロンにおける百合園の砦が出来上がることとなった。
 
 アルコリアは、再びおぞましい翼を広げ、城門の上に立つ。
「開け冥界の門、来たれ嘆きの川……コキュートス」
 彼女らの兵は死をも恐れぬ亡霊たちである。
「ようこそ、花園のパレードへ。来る者は拒みません。そして、去る者は決して許しません」
 さあ、百合園の花と一緒に咲き誇りましょう。どなた様もどちら様も。
 
 
 ここへ戻ってきた、龍騎士ラスタルテであったが。
「な、何。どうしたことだ。シクニカが落ちている……!? いや、反乱、か。まさか。違う。
 百合に【桐生】の旗印だと? 城外にいるのは、何だ、亡霊の群れ?」
 ラスタルテはしばし、急の事に唖然として空中を旋回していたが、シクニカより、東へ向けて飛ぶ。
「敵は教導団だけではなさそうか。私一人でもやれぬことはなかろうが……さきのまがまがしい翼の話も気になる。ここにもすでに邪悪な気が満ちている。
 本国に、いやまずは密林帯の基地に援軍を出させよう。蟻のごとくな教導の兵どもを潰すのも手間だしな。手が汚れる。亡霊の相手も御免こうむりたい」

 こうして、いよいよ帝国も兵を送り込んでくる。
 また、シャンバラ教導団との衝突より先に、思いがけぬ争いになりそうだが――百合園女学院とエリュシオン帝国の衝突がここに始まろうとしていることになる。(続)