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Entracte ~それぞれの日常~

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Entracte ~それぞれの日常~

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・お昼休み終了

 
 中等部一年、パイロット科のとある教室。
 端守 秋穂(はなもり・あいお)ユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)は一緒に昼食を食べながら昼休みを過ごしていた。
 パートナーと二人揃って同じクラスというのは、中等部では意外と珍しい。というのも、パートナー契約をしても年齢や学力が同じくらいというのはそう多くはない。まして、ぱっと見十歳そこらでも何百、何千年と生きているケースもあるのだから。
「ごちそうさまでした。まだ少し時間はあるね」
「ユメミ、ところどころノートに書けてないやー……」
「まぁ、お昼前の授業だし仕方ないよ。帰ったら足りない部分補いながら復習しようね」
 秋穂がノートを広げる。
 午前中の授業の復習だ。
「ところで……僕らもそろそろ上級クラスになった方がいいかなって思って……コンジュラーとか考えてるんだけど、どうかな?」
 基礎教養の一環として超能力も学ぶ天御柱学院としては、真っ先に考えるものだ。
「……コンジュラー? フラワシつかうクラスだよね、ユメミもなりたいー」
「え、フラワシ?」
 フラワシについてはまだ知られていないことが多い。本当に守護霊だと主張する者もいれば、単に超能力をイメージとして具現化出来るレベルまで高めたものであり、フラワシの性質はそのままその使い手の人としての性質を現している(無意識領域における個人の本質の表面化)という説もある
「秋穂ちゃんとユメミとセレナイトに、フラワシとフラワシ……五人で一緒に戦えるのー?」
「うーん……どうだろう。今度先生に聞いてみようかな?」
 使えれば、確かに便利そうだ。
(あ、まだローグの経験があんまりないんだった……そっちも、鍛えなきゃ)

 そして、午後の授業が始まる。
 この時間は数学だ。
「と、いうわけで今日は確率です」
 と、言ってもやることは普通の中学生がやる内容と変わらない。本来ならば確率は中学一年で習うものではないが、中等部で一般の高校までに習う内容を網羅しなければいけないため、この学院ではなんらおかしなことではない。
 設備は最新鋭のものであり、教卓にあるタッチパネルに板書したものが大型スクリーンに映し出されるという、この時代の最先端技術を使用したものだ。
 それでも生徒の多くは紙のノートを使っているあたり、どこか不思議な感じがする。タブレットPCをノート代わりにしている者は中学生ということもあって、さすがに少ない。
「では、問題。『四枚のコインを同時に一回投げたとき、少なくとも一枚表が出る確率を求めよ』」
 答えは16分の15である。
「はい、そうです。要は全体を1として考えたところから、全部裏である確率を引けばいいだけです。全部裏は16分の1ですね」
 と、本当に当たり障りのない授業である。
「で、次は『P(B)=事象Bが発生する確率、P(B|A)=事象Aが起きた後での、事象Bの確率としたとき……」
 そのとき、教師が間違いに気付く。
「おっと、こっちは専門課程の内容でした。ベイズの定理はさすがに君達には早いですね」
 気を取り直して、基礎計算問題を解いていく。
(さすがにこのくらいなら……)
 なお、基礎教養課程ということもあってこの程度だが、専門課程の場合は自然科学分野がの多くが絡んでくるため、疎かに出来ない。イコン運用に必要な知識は、広義な意味での軍事学に通じるものがある。
 もっとも、シャンバラ教導団とは異なり軍事校ではないため、あくまでイコン運用に特化した内容であり、兵学の授業というものは行われていない。
 ともあれ、高等部では高度な知識が必要なために、中等部でしっかりと基礎固めをしておく必要があるというわけだ。
 一説には、天御柱学院の高等部編入は(一般人レベルで)四年生大学の難関校に入るよりも難しいとされている。
 これも、契約によって身体能力だけでなく、学力……というより、演算能力が高まったことに起因するものだ。
(ユメミは、大丈夫かな?)
 そうは言っても、精神的には普通の中学生となんら変わりはない。
 板書しながらパートナーの様子を見る。
 一応、真面目に授業は受けているようだ。少し苛立ってるようには見えるが。
「では、今日はここまで。次回は因数分解まで進めますので、目を通してきて下さいね」
 授業終了。
 さすがにペースが早い。
「終わったー」
 ユメミが、終わった瞬間にチョコレートを頬張る。
「ユメミ、大丈夫?」
「うん、もう平気ー」
 休み時間の間は、ゆっくりと過ごす。
「次の授業は……基礎超能力か」
 もちろん、学校の性質上五教科の授業だけではない。基礎教養過程の授業にも、しっかりとイコン操縦やイコン整備も含まれている。もっとも、意欲のある者は課外授業で腕を磨いているのだが。
「帰ったら、復習しないと。あと、一応予習もしとかなきゃ」
「……うん、復習する。でも、今日は帰る前にセレナイトの所寄っていいー?」
「……セレナイトの所? うん、寄ってみようね」
 そのためにも、残りの授業を乗り切らなければならない。


※資料提供:PASD情報管理部超能力研究課コンジュラー調査係