リアクション
* 一方、甲賀の方も思わぬ一行と遭遇することとなっていたのである。 ミロクシャを落ち延びてきた―― 「な、何と?! コンロン旧帝、のご一行、ですか……いえ、これは失礼を」 軍閥の一行にとっては、少数で夜盗の手を逃れてきたところに遭遇した百程の流浪の一団である。敵であればとうとう逃れ得ぬ事態となったかと思ったがそうではなかった。 「あの甲賀とかいう者を、知っていると? 信用なる者なのか?」 軍閥の家臣は、ナナに問う。 「え、ええ……その、そう、軍師の経験がおありの方でして……」 こんなところで龍雷連隊に出くわすとは。何故? 勿論、同じ教導団の方々として信用していいのでしょうけども……。 十数名しか残っていない軍閥の者にとっては、この状況で百の味方とあっては心強い。家臣は、甲賀に旧帝をお護り頂けるか、願い出る。 甲賀は…… 旧帝の前に膝を折り、忠誠を誓ってみせたのである。 「この我、甲賀三郎。帝のことをお護り致します」 (この甲賀にも運が回ってきた、か……?) 「ウフフ、三郎」 甲賀の心にまた、コンロンの悪魔メフィス・デーヴィー(めふぃす・でーびー)が語りかける。「貴公の魂の価値を計ってあげますわ。ウフフ、いえ、私は死神ではございませんので魂を取り上げるような真似は致しませんが……」 契約者として相応しいか値踏みしてあげますわ。メフィス・デーヴィーは甲賀の魂を悪の天秤にかけた。 「……」 「甲賀殿?」 「……レアか?」 「は?」 このあと、ひとまずどこに身を寄せるか、ということに関し甲賀は、メフィスがボーローキョーの王都に別荘を持つ悪魔であること、それに甲賀自らも部下にゾンビがあり、自身ネクロマンサーとしての修行を積んでいることから、ボーローキョーの亡霊王のもとへ、との献策を行った。一同には不安を表す者もいたが、ひとまず帝国軍が溢れている現状から逃れるにはそれに従ってみるべきか、と策を受け入れた。 * そして、ボーローキョーを訪れた騎凛先生連れの国頭に、プリモ、ミレイユご一行。 亡霊を何とかしなければ、パラ実の祈願であるパラ実コンロン分校設立もままならない。亡霊の親玉に会いにいかねば…… 「亡霊王のところか、案内してやるけん」 現れたのは、広島弁の、マフィアを名乗る女の子。ルメンザ、だ。 甲賀と連絡を取り合ったルメンザは、甲賀の身を寄せる先を聞き、亡霊王のもとと知った。 「何。龍雷連隊が来ているのか。龍雷、あの松平か……。 まぁいい。なら、案内しろ」 という国頭に、ルメンザはならば金があれば上司に頼んで亡霊王に面会させてやると言う。 パートナーのカーチスは、 「地獄の沙汰も金次第です」 仕方ない。騎凛先生に支払いを請求するしか……「ちょ、ちょっと! 私は師団長で教官ですよ! あなた、先生にお金をせびるのですか!」 「恨むな、全ては金の為じゃ」 「エ〜〜ン」 * 旧帝を迎えた甲賀は、メフィスの案内で亡霊王のもとへと向かったのだが、そこでこれは甲賀も思わぬまさかの事態が待ち受けていたわけである。 亡霊王と、隣にいるのは第四師団の秘書、御茶ノ水 千代だ。そしてその前に、飛龍に騎乗し威圧的に語りかけているのは……龍騎士。ただの龍騎士ではない。神龍騎士、タズグラフであった。 「その一行、もしや!」 タズグラフが甲賀たちの方に得物を向けた。先導する甲賀の奥の、馬車の、その中だ。 「見つけたぞ。ハハッハ、まさか、こんなところまで、しかもこの私のところまで、出向いてきてくれるとは! お初にお目にかかる。ご機嫌麗しゅう? コンロンの帝殿。そして、死んでもらう」 「こっ甲賀殿〜」 「どういうことじゃ〜〜!」 「だ、騙したのか。帝国の手先か、ボーローキョーもすでに帝国とつながっておったのか!」 家臣たち涙目で剣を抜き放つ。 「ち、違う! ボーローキョーは!」 千代が前に出る。その上をふっと影が通っていく、タズグラフが向かっていく。ハハハハハ! 「我は騙してはいない。これは不測の事態也」 甲賀も水晶の杖を抜き、家臣らの前に出た。 「メフィスの別荘へ帝を退避させるのだ! むうっ」 龍騎士を迎え撃とうとする甲賀を無言で制し、ざ、っと立った男。 前田 風次郎。 タズグラフは、目の前の者たちは眼中になく、飛龍を駆り、ナナやアクィラが護って逃げる馬車に一直線に向かおうとする。 「(……俺を無視するのか……!)」 風次郎のスラッシュブレードがタズグラフの飛龍の脚を斬りつけた。 「ムッ。貴様……!!」 タズグラフは些か気に障った様子で振り向いたが、そのまま飛ぼうとする。旧帝の家臣たちが何としても行かせんと龍に飛びつき、しがみついて剣を振るう。「虫ども。いや、蚊に刺される程の痛みもない」三人の家臣は一瞬で切り刻まれた。 そこへ、再び風次郎の、ドラゴンアーツを用いた剣筋が入る。 「貴様」 タズグラフが風次郎の方を向く。 金剛力で力を高め、みたび、風次郎の太刀が龍騎士を襲う。だが、それまでだった。タズグラフの一振りを、後の先で読みスウェーで交わそうにも、交わしきれなかった。風次郎は、タズグラフの一振りで肩から胸へと強烈な斬撃を浴び、その場に倒れた……。 タズグラフが次に向き直ったとき、逃げゆく馬車の前に別の一行が映った。 「ああっ私の生徒を……!」 「軍師!」 騎凛、ルメンザら、国頭とここへ来た一行の中から、駆け出してくる。 「騎凛教官、帝を、帝をお願いします、このお方……」 ナナが、騎凛の手を取る。 「ナナさんっ。帝……? この子?」 馬車から、強気なしかし不安に一杯の瞳が騎凛を覗いている。 「コンロンの……?」 「おい、何を言う、まずはここは騎凛先生を神龍騎士にぶつけるのがやり方だろ!!」 国頭が騎凛をつまみあげた。 「おい騎凛先生、キャラクエのレベルは40とかだが、本当は140とか150くらいはあるんだろが、行ってこいやぁ!!」 ぶん投げる。 「きゃぁぁぁ!!」 |
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