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聖戦のオラトリオ ~転生~ ―Apocalypse― 第2回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ ―Apocalypse― 第2回

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断章 〜継承〜


 ――2012年。


「エドワード様、お客様がお見えです」
「客? 適当に追い払え」
「それが……例の子供について、何かを知っているようです」
 まさかと思いつつも、使用人を連れて門の前まで赴く。
「老人よ、このアルバート家に何の用だ?」
 そこにいたのは、一人の老人だった。
「オックスフォード大学主席ともあろうものが、私の顔を知らぬとは……まあいい、エドワード・フレデリック・アルバート卿」
 その語り口調、顔立ちは、三年前に死んだ「二十世紀最後の天才」と謳われた科学者のものに酷似していた。
「お前は『自分をこの世界に認めさせたい』と考えている。そうだろう?」
「だから何だと?」
「そのための力を与えてやろう。だが、条件がある」
 鋭い眼光でエドワードを見据えたまま、老人が告げた。
「三年後に、お前が匿っているモノを引き取らせてもらう。三年もあれば、『下地』を整えることくらいは出来るだろう」
「今すぐじゃなくていいのか。欲しいのだろう?」
「……私は失敗した。いや、早まってしまったと言うべきか。だからこそ、お前の可能性に掛けたい」
 老人の目から感情を窺い知ることは出来ない。
 だが、自分の可能性に――それは、エドワードの中にある素質を目の前の人物が認めているということだろう。
「老人よ。その話、乗らせてもらう」
「ふむ、では……アイザック、ガリレオ、ヨハネス」
 老人の呼びかけに応じるようにして、三人の男がやってくる。
「彼らは英霊。地球の偉人がパラミタで復活した姿だ。正真正銘、歴史に名を残した本人達だ」
「それで、どうしろと?」
「『契約』だ。彼らと契約することで、お前は『契約者』となる」
 契約者のことは話に聞いていた。まさかこんな形でパートナー契約をすることになろうとは。
「彼ら三博士が知恵を貸してくれるだろう。これも渡しておこう」
 それは、論文だった。
「それから――ホーエンハイム」
「今は、ローゼンクロイツです。
 ……はい、こちらに」
 一切の気配を感じさせずに黒衣に身を包んだ姿が現れた。
 漆黒の長髪と瞳を持つ、若い男だ。
「彼も貸しておこう。かなり役に立つ男だということは保障しよう。エドワード卿の使用人として仕えてやれ」
「承知致しました」
 ローゼンクロイツと名乗った男が恭しく頭を下げる。
「では、三年後にまた会おう」
「待て!」
 一人で去ろうとする老人を呼び止めた。
「目的はなんだ?」
「その論文には、この世界を掌握するための術が記されている。『新世紀の六人』が成しえなかったことを、果たしてお前が成しえるのか――」
 答えを濁し、老人がエドワードの前から消えた。

「エドワード様」
 老人が去った直後、ローゼンクロイツが尋ねてきた。
「白銀のロボットと、同じ髪の色をした少女をご存知ですよね?」
「……! なぜそれを?」
「いえ、ロシアで発生した事故現場付近で、巨大なロボットのような人影が目撃されているのですよ。それが、遠く離れたこのアルバート邸の辺りで消えたと伺ったものでして」
 まさか。ならば、真っ先に地元の人間に問い詰められている。
「ああ、ご心配には及びません。貴方が匿っているのが何かは、私と先ほどの彼しか知らないことですから。教えてくれた方も、『見間違い』だろうと、気にも留めておりませんでしたので」
 この男は、アレについて何かを知っている。
 そして、ローゼンクロイツを封印したガレージへと案内した。

 こうしてエドワードは、「十人評議会」を作り上げるための力を手にしたのだ――。