校長室
【Tears of Fate】part1: Lost in Memories
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どんな暗い夜にも朝が来る。 それまで厳しい表情の続いていたエース・ラグランツだが、ほっとしたような笑顔を見せた。 「二人とも無事?」 少し、汚れていた。 ひどく疲れているようにも見えた。 それでも、エリザベート・ワルプルギス校長は弱気なところを見せなかった。 「はいですぅ」 むしろ、彼女を支える立場のミーミル・ワルプルギスのほうが憔悴しているようである。 「助かりました……」 図書室奥部、無数のドアが並ぶ通路の途上で、エースたちは二人を発見したのである。 メシエ・ヒューヴェリアルは周辺を警戒しつつ、敵の気配がないことを確認してから言った。 「よく無事で」 「とにかく二人が無事だったというだけでも苦労した甲斐があったわ」 ルカルカも安堵しつつ、エリザベートに手をさしのべる。 「あとは、クランジΣだけれど……」 しかしルカルカ・ルーの手をエリザベートは握らなかった。そして断固とした口調で告げた。 「クランジΣじゃありません。小山内南さんですぅ」 「けれど……」 「あくまでそう呼ぶのなら、私はここを動きませんよぅ」 ザカコはルカルカに首を振ってみせ、かわりにエリザベートに言った。 「校長は一人じゃありませんし、希望を捨てなければきっと道は拓けます。大切な友人だからこそ、彼女には過ちを犯させてはなりませんよね。ここに残っていたらその危険があります。今は校長が無事戻ることこそが必要ですよ」 「はい……ごめんなさいですぅ」 エリザベートはルカの手を取った。 「よし、俺が校長を全力で守るからな」 どんと胸を叩いて夏侯淵が請け負う。 「出口を目指すとすっか。来た道はどうせ変化してるだろうから手こずりそうではあるがな」 強盗ヘルは牙を見せて笑うと、エリザベートの背をポンと叩いた。 「厳しいかもしれねぇが、お前がイルミンの希望なんだぜ。俺達もサポートするから何時もの調子で頑張れよ」 「そういうこと」 と応じてクマラ・カールッティケーヤが校長とミーミルにアメを手渡した。 「不安だと思うけどオイラ達もいるし。他の皆も対処してくれてるからダイジョーブだヨ」 クマラがにぱっと笑うと、ミーミルの頬にも血色が戻ってきた。 「エースからも渡すものがあるのでは?」 エオリア・リュケイオンが肘で脇をつついてきたので、エースはえへんと空咳して二人に一輪ずつ花を差し出したのである。 「花言葉は『希望』だよ。希望を抱き続けよう。信じればすべて叶うとはいわないけれど、希望がなければ何も実現しないと思うんだ」 赤い花と黄色い花、いずれも、こちらに語りかけてくるような鮮やかな色彩だった。 花は、その名をガーベラという。