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燃えよマナミン!(第1回/全3回)

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燃えよマナミン!(第1回/全3回)

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【6】お前らに食わせるもんはねぇ!……4


「ラフレシアンめ……!」
 骨抜きとなったラフレシアンの姿を前に、黒楼館館主ジャブラ・ポーは忌々しげに舌打ちをした。
 だが彼も部下の心配ばかりしている余裕はない。
 彼の前には、同じ象形拳の使い手クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)が立ちはだかっているのだから。
「同じ技を使う者として、あなたとは一度拳を合わせてみたいと思ってました」
 クドはゆっくりと構えをとった。
 見たこともない構えにジャブラは眉を寄せた。
「……なんだ、それは?」
「おや、象形拳の達人ともあろう人がご存じない。ならば教えてあげましょう、お兄さんの『パンツ形拳』を」
「え……?」
「本来はパンツと言う神秘を体1つで再現する、観賞させて楽しませる芸術としての側面が強い象形拳です。しかしだからと言って戦えない訳ではありません。パンツが戦えないって誰が決めたのですか。なんと言いましてもパンツですからね、もうそりゃあ凄いですよ。なんてったってパンツですから。魅せてあげましょう。パンツに秘められた力を!」
 風を巻き起こし、クドは花柄のパンツ一枚となる。
まずは小手調べのボーイレッグ拳!
 バッと拳を突き出す。
続きましてスキャンティー拳!
 バッと続けざまに連続で拳を放つ。
さらにサスペンダーショーツ拳!
 ちょっと態勢を変えて、バッと美しい正拳の冴えを見せつける。
そしてTバック拳! からのTフロント拳!
 より精密に、より正確にパンツを再現……いや、パンツそのもの、パンツになりきる……!!
「お兄さんはパンツです!! クド・ストレイフと言う名のパンツなのです!!
 拳法と言うより、裸で奇妙な舞いを舞う姿は暗黒舞踏である。
 ジャブラは頬を掻きながら近付くと尻尾をひゅんとしならせクドを吹き飛ばす。
「ぎゃあっ!!」
 壁に叩き付けられ、クドはぴくぴく痙攣。
「く……! こ、これで勝ったと思わないで下さい。いずれ、第二、第三のパンツ形拳の使い手が……!」
「うるせえ」
 ハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)はマフラーに気を通すと、剣のようになったそれをクドの頭に突き刺した。
「廃人回収〜。廃人回収〜」
 クドを人力車に乗せて、ハンニバルは去っていった。
「…………」
 なんか緊張感が削がれたジャブラである。
 しかし緩んだ空気はすぐに引き締まった。黒楼館の拳士が数人吹き飛ばされ、ジャブラの足元に転がってきたのだ。
 ジャブラは振り返る。
「店に入った時からガラの悪い連中だと思っていたが、まさかコンロンマフィアだったとはな……」
 肩を鳴らしながら、あらわれたのは桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)
 乱闘に巻き込まれた一般人のひとりであるが、ひとつ、一般人とは違ったのは彼もまた達人であると言うこと。
「このような平和な街にマフィアなど居てはなりません。煉さん、私たちで成敗してあげましょう!」
 仲間のエリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)が言った。
「マフィアだかケフィアだか知らねーがあたち達の休日潰した落とし前はつけさせてもらおーか!」
 エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)もそれに続く。
「一般人は一般人らしくおとなしくしていれば怪我をせずに済んだものを」
「ジッとしているのは苦手なんでな」
 無銘の日本刀を抜き、修羅の闘気を纏う。
 それから、ジャブラのとった奇妙な構えに目を細める。
 両腕を前に突き出し上下に広げる構え。それはなにか巨大な生き物のあぎとを彷彿とさせた。
 先ほどまで気配のなかった男が突然、周囲を圧迫するほどの凄まじい威圧感を放ち始めた。
「象形拳の一種だろうが、考えている暇はない。戦いの中で見極める……!」
 煉は繰り出す疾風の如き突き……しかし、ジャブラは闘気を纏った掌で、刃をいとも簡単に弾き飛ばす。
「下がれ、小僧。貴様の出る幕ではないわ……秘技『龍尾返し』!!」
 ひゅんと飛び出したジャブラの尻尾が煉の胸に叩き付けられた。
 柔軟に伸縮する見た目とは違って、尻尾はまるで丸太のように硬く煉の胸板を一撃で砕いてしまうほどだった。
「がはっ!?」
「し、しっかりしてっ」
 衝撃に崩れ落ちる彼に、エリスはあわてて駆け寄り治療を施す。
 トドメを刺そうと迫るジャブラ……その前に、今度はエヴァが立ちはだかった。
「こっからはあたしが相手だ!」
 幻影を纏いながら素早い動きでジャブラに技を放つ。
 だが、黒楼館館主を追いつめるほどの気迫はそこにはない。ジャブラは掌を覆う気の形状を鋭い爪に変貌させる。
「消えろ……『龍牙掌』!!」
「がああああっ!!」
 エヴァの脇腹に掌が突き刺さる。
 苦悶に震えるエヴァに容赦なくジャブラは掌を突き立てた。そのままめきめきと素手で肋骨をへし折る。
「エヴァ!」
 復活した煉は無理矢理彼女を引き離した。抱きかかえられた彼女は力なく笑う。
「悪い、まともに時間稼ぎも出来なかった……」
「いや、充分だ」
 煉は再び刀を構える。
「一連の動きで見えた。おまえの使う技のかたち……『龍』だな」
「ほう、よくわかったな、これは幻魔無貌拳『龍』の型よ」
 こちらも再び両腕を前に突き出す構えをとった。
「しかしわかったところでどうする? 我が拳は龍の力をそのまま再現する。たかが人間に止められるものではない」
「とは言え、ここで引き下がれないのが人間だ」
 氷雪比翼で吹雪を見舞うや、間髪入れず斬り掛かった。
 だが『龍鱗功』とよばれる龍鱗と同等の硬度を持つ気に覆われたその身体は恐るべき堅さで刃を阻む。
「ならば……!」
 今度は刀に冷気をまとわせ斬り掛かる。
「無駄だ」
 ジャブラは一撃を弾き、両の掌を合わせ、龍の口を再現する。
「塵と消えよ! 幻魔無貌拳奥義『龍気砲』!!」
「なっ!?」
 掌から放たれた気功砲は龍の吐息が如し。あらゆるものを瞬時に灰に変える熱線だ。
 熱線は目の前のすべてを焼き払うと、壁をも融解させ、店の外にまで飛び出した。
 煉の立っていた場所は黒く焼け焦げ、その奥にポッカリ風穴が空いている。
 しかしジャブラの意識は既にそこになかった。彼の意識は既に、己の背後に感じる強大な気の塊に向かっている。
「……あのタイミングに割り込むとは、衰えてはおらんようだな、ミャオ」
「誰を相手に言っている……!」
 振り返った先に、煉を抱えた老師の姿があった。
「あなたは……?」
「万勇拳のミャオじゃ、青年。ここはわしに任せておけ」
 そう言ってから、ジャブラを睨み付ける。
「ここであったが百年目、黒楼館の邪悪な連鎖はここで断つ!」
「子猫が龍に牙を剥くか。おもしろい、やってみせろ」
「子猫? わしがただの子猫に見えるようではおぬしの底が知れる……!」
 老師の纏うオーラが白光する。オーラはどんどん巨大に膨れ上がり、ゴゴゴゴゴゴと地鳴りを起こし始めた。
「なんだこの迫力は……?」
「その目にしかと焼き付けるがいい。拳祖が編み出せし奥義、それを完成に導いた我ら万勇拳、数千年の成果を!」
「く……、りゅ、龍気ほ……」
「万勇拳最大奥義『壊人拳』!!」
 その拳が目にも止まらぬ速さで閃いた。白光する拳は流星の如し。ジャブラの全身に暴風のように突き刺さる。
 糸の切れた人形のようにジャブラは床に激しく叩き付けられた。
「ぐ、が……!?」
 正確に経絡を撃ち抜かれた彼の身体はダメージが酷く指先ひとつを動かすにも激痛が走る。
 これこそ対人に特化した万勇拳最大奥義『壊人拳』。この技を受けて立ち上がれる人間など存在しない。
「こ、この俺が動けんだと……」
「終わりじゃ……!」
「いえ、まだ幕引きには早いでしょう」
 不意に、悪路は言った。
 老師ははっと顔を上げる。気が付かなかったが、外からパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「どうやら警官も来たようですし、我々も退散しましょう、館主」
「呼ばれて飛び出てさようなら! ってね」
 ジャブラに肩を貸す波旬に召還され、帽子屋 尾瀬(ぼうしや・おせ)もあらわれる。
「さて、それでは万勇拳の皆様御機嫌よう。また合う日までしばしのお別れですわ」
「待て……」
 ところが、ジャブラが止めた。
「警察が来たならこのままでいい」
「え、ええと……館主さん、流石に黒楼館も警察とことを構えるのは都合が悪いのではないんですか??」
「そうはならん」
 不敵に笑う。
 そうこうしてる間に警官隊が店内に入って来た。
「中華街にてテロ発生!!」
「犯人は万勇拳なる武闘集団とのことだ! 関係者は見つけ次第拘束せよ!」
「被害者は中華街の武道一派・黒楼館、彼らを速やかに保護、怪我人は速やかに所定の病院に搬送しろ」
な、なんじゃと!?
 飛び交う警官隊の声に老師は目を丸くした。
「た、大変だよ、猫先生〜〜〜!!」
 愛美もあわてて走ってきた。
「ど、どうしたのじゃ!?」
「今、携帯に連絡があったんだけど、公園にも警察の人たちが来てるって。公園に残ってる皆、取り調べされてるって」
「な、何故こんなことに……」
「YO! 騒動の犯人は万勇拳♪ それで丸く収まる、この事件♪ チェケラッ!!」
 警官隊の中からひと際目立つ男があらわれた。
 ドレッドヘアーにグラサン、ド派手なゴールドアクセサリーにファーコート、なんだかラッパーみたいな男だった。
「なんじゃおまえは!?」
「あ、署長」
 警官のひとりが男に敬礼した。
「しょ、署長!?」
「Yeah! 俺インザレストランDA! HO! 俺様が空京警察のナンバーワン、署長のバンフーDA!」
 とても警察官には見えないが、そのバンフー署長はジャブラに目を向けた。
「これはこれは館主……じゃなかったジャブラさん、随分と酷い目に遭いましたねぇ。マジ心配HO!!」
「ああ、部下と食事をしていたら、この暴漢どもが突然襲ってきたんだ、署長さん」
「なんとHIRETSUな!!」
 バンフーは大げさに驚いてみせた。
「ち、違う! こいつらは凶悪な犯罪組織なんじゃ! わしらはこいつらを町から追い出そうと……」
「犯罪組織? 証拠もないのに人を疑うのはSO BAD……HEY、俺様のPOLICE MENたち、そいつをとっ捕まえな」
 警官隊がぞろぞろと老師を取り囲んだ。
「わわわ……、ね、猫先生〜〜〜!!?」
ど、どうなってるんじゃ〜〜〜!?





 

担当マスターより

▼担当マスター

梅村象山

▼マスターコメント

マスターの梅村象山です。
本シナリオに参加して下さった皆さま、ありがとうございます。

一応バトルシナリオとなっていますが、ノリはコメディなのでバトルが苦手な人も楽しんで頂けたなら幸いです。

今回、追加スキルの案を皆さんに出してもらおうと言う新しい試みを行いました。
わたしもどんなスキル案が来るのかと楽しみにさせて頂いた次第です。
全体的な印象ですと、足技と身体強化系の技に人気が集まった感じでしょうか。
言われてみれば、現行の技には足技がありませんから、その辺の重要が集まるのも当然なのかなと。

こちらのスキル案募集は折角ですので、次回も引き続き行いたいと思います。
(今回、参加したかったけれども出来なかった人もいるかもしれませんし)
我こそはと言うスキル案をお持ちの人はぜひぜひ参加してください。

あと、スキル案でちょっと気になったのですが、技名未定と言うアクションが幾つかありました。
昭和の叫ぶ系必殺技に揉まれた世代としては、技は技名あってこそ、是非カッコいい技名も頂戴したいところです。
それから一応、万勇拳の奥義……と言う体、ルールで募集をかけておりますので、
それ以外の個人的な技とかの設定ですと、内容が良かったとしてもちょっと採用しずらくなってしまいます。
その辺はご了承ください。
ですが、その辺を気にしないと言うのであれば、個人的な技とかでアクションをかけても大丈夫です。

次回シナリオガイドの公開日はまだ未定ですが、事前にマスターページで告知出来たらいいな、と思ってます。