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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

リアクション


【3】SUPER【2】


「お初にお目にかかる、私は蒼空学園のハーティオンだ」
 普通科校舎にある研究室棟。コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)は大文字の研究室を訪ねてきた。
「連日の殺人事件の調査協力にやってきたのだが、この事件では科学者も標的になると聞いた。仲間と共に貴方の護衛をさせて貰いたい。無論、お邪魔にならぬよう心がけるつもりだ。是非、守りに付かせていただきたい」
「……な、なんだこれは! スーパーロボットではないかっ!? ぬおおおおおーーっ!!」
 一瞬、目が点になっていた大文字だが、大喜びでハーティオンの鋼鉄ボディをペタペタ触り始めた。
「ご、護衛をさせて頂く以上、何か必要があればなんでも言いつけてくれ。やれる限りの事はやらせていただこう」
「じゃあちょっと変形合体してみせてくれ! ファイナルドッキング承認! ファイナルドッキング承認!」
「変形はちょっと……。合体も準備がいるのだ。すまない」
「盛り上がっているところ申し訳ないけど、この時間が無駄なので、先に挨拶させてもらうわね。ロボット工学者の高天原よ。あなたのお噂はかねがね聞いているわ、大文字博士」
 高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)は大文字と握手を交わした。
「こんなレディにまで名が知れとるとは、私も有名になったな。この凄いロボットは君が作ったのかね?」
「いいえ、彼は……」
 鈿女の肩に座っていたラブ・リトル(らぶ・りとる)が飛び出した。
「はろやっほー♪ あたしは蒼空学園のアイドル(自称)ラブちゃんよ♪ 宜しくね〜大文字博士〜♪」
「妖精……! ぬぅ、オーラ戦士的な!? イコンに同乗すると性能が上がるのだろうな!」
 大文字は少年のように目を輝かせ、とても40歳とは思えないほどはしゃいでいた。
「……迷惑がられると思ったが、歓迎してくれて良かった」
「あなたのお陰よ。ハーティオン」
「しかし、普通科と言えどこの研究棟には研究者が集まっているようだな。例の組織にとっては絶好のポイントだ」
「この事件はわからない事ばかり。でも、私は大文字博士はこの事件の重要なキーを握っている気がするわ」
「なに?」
「いいえ、キーを”作り出す”人物……と言ったほうがいいかしら」
「……作り出す、だと?」

「こんにちは、大文字先生」
「む、君は確か今年度の整備科代表の……」
 研究室を訪ねてきた荒井 雅香(あらい・もとか)に、大文字は少し驚いた顔を見せた。
「いつの間に整備科からいなくなってたと思ったら、左遷……いえ、普通科にいらっしゃったのね」
「ん、んー……まぁこちらで私の力を必要としてくれるようなのでな。
 それにしても、整備科代表の君がここに来るとは珍しい。基本的に整備科の生徒は私には寄り付かんと言うのに」
 それも教師としてどうかと思うが。
「近頃、物騒と聞いたので様子を見に。寿子さんも心配してましたよ」
「そうか、心配をかけてしまったな。彼女は私の話に付き合ってくれる数少ない理解者の一人なのだ」
 雅香は大文字を下から上に観察する。
 炎のように逆立った銀髪。日に焼けた健康的な肌。燃えるような熱い瞳。40代とは思えない筋骨隆々の巨体。
 今の若者にはないオス感がある。無人島で二人きりになってもちゃんと面倒みてくれそうだ。
(寿子さんに好かれているところを見ると良い先生なのだろうけど、40歳で独身か……。私も人の事は言えないんだけど、ふふっ。私よりちょっと年上……歳の差としてはいい感じなんだけどねぇ)
「……それにしても、凄いですわ。こんなに凄いロボットを作られるなんて」
 雅香は護衛で立ってるハーティオンを褒めた。
「すまないが、私はこちらの生まれではない」
「あ、ごめんなさい。私、てっきり先生の作品かと……」
「なに、彼はいいロボットだ。私もいずれは彼のような素晴らしいロボットを作りたいと思っている」
「やっぱり小さい頃からロボットがお好きだったんですか?」
「ああ、子供の頃はテレビっ子でな。夢中になってロボットアニメを見ていたよ。テレビの向こう側で活躍する彼らに、私は色々なものを教わった。愛、勇気、友情……これらは全て、ロボットが教えてくれたものだ」
「そうですか。実は……私も小さい頃はそういうのが好きだったんですよ」
「ほう、女の子でそれは珍しいな」
「家が自転車販売店だったから機械いじりも好きだったし、どちらかというと男の子っぽい事ばっかりしてたから」
「今のあなたからは想像もつかんな」
「あら、それはあなたが今の私を知らないからじゃないかしら、ふふっ」
 からかうように言うと、大文字は少年のように笑った。
「それは実に素晴らしい事だ。何故なら、これから君を知る喜びがある」

「大文字勇作……噂には聞いたことあるけれど、学院にきてたのね」
 イコン工学理論講師イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)は大文字の研究室に向かっていた。
「今は、大文字先生のほうがいいのかしら。荒唐無稽なポンコツ科学者って聞いてるけど……」
「ママ。大文字先生は素晴らしい人です。天才です」
 ヴァディーシャ・アカーシ(う゛ぁでぃーしゃ・あかーし)は頬を膨らませて抗議した。
「今はまだ認められていないですけど、ボクの未来ではママと同じくらいの権威ある科学者で……」
 ヴァディーシャは慌てて口を押さえた。
「あ、こ、これは禁則事項だったです」
「将来、私と同じくらい有名になる人? それってつまり……、微妙な知名度ってことじゃない?」
 イーリャは苦笑する。
「でも、大文字先生が失われたら世界の未来はひどく変わってしまうですよ!」
「はいはい。荒唐無稽って言ったら、イコン関連の技術だって一昔前なら小馬鹿にされるようなものばかりだしね」
 研究室の扉をノックし、中にいる大文字を呼ぶ。
「……失礼します。普通科講師のイーリャです。先日の怪事件の件で、注意喚起が回ってきたのでお届けに来ました」
「おお、すまんな」
 雅香を見付けて、ペコリとお辞儀をする。
「初めまして、奥様」
「ん……、ゴホン。イーリャ君、私は独身だよ。雅香さんに失礼じゃないか」
「あら、てっきり……」
「いえ、気にしないで。別に私は構わないし、ね、大文字先生。ふふっ」
「ん、む……ええと、怪事件の注意喚起だと」
 照れてるのを誤摩化して、大文字は注意喚起に目を通した。
「アイリさんの言う『クルセイダー』とやらはちょっと信じにくいですが、ただのテロではなく、超常的な何かが手を下しているという感じがしますね」
「ふむ……。誰にも気付かれずにこれだけの事をするとは信じられんな……」
「それだけの事が出来るのに、海京やパラミタ本土に全力攻撃をしてこないのが気になりませんか。何か実行犯側に制約があるか、派手に動けない理由でもあるのかしら……。大文字先生はどう思います?」
「そうだな。もしくは”これからする”つもりなのかもしれん」