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なし

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インベーダー・フロム・XXX(第3回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第3回/全3回)

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【6】 Re:Re:NOAH【4】


 影に飲まれた世界に、ガーディアンの雄叫びと、建築物が破砕する轟音が響き渡る。凄まじい音なのに都市はとても静かだった。
 屹立する高層建築が影を落とす道路には、市民が石像のように固まったまま取り残されている。空を指差したまま、走り出したまま、恐怖に顔を引きつらせたまま、海京が脅威に直面した瞬間の姿を残す。
(……聞こえる? 皆、あたしの声が聞こえる?)
 天御柱学院の生徒会副会長茅野 茉莉(ちの・まつり)は道路の真ん中に立ち、市民にテレパシーを送る。
(あなた達が動けないのは、あるテロ組織の使う装置が原因なの。今、生徒会と風紀委員、学院の有志が解決に動いてる。だから、もう少し待って……)
 空間が解除された時、パニックが起こらないよう、今のうちに冷静な対処を呼びかけているのだ。しかし、どこからも思念は返ってこなかった。
 そもそも、テレパシーは”対話相手に選べるのは、双方ともに面識がある人物に限られる”と効果範囲に規定がある。よって不特定多数に使用する事は出来ないのだ。
 とは言え、テレパシーではなく拡声器で呼びかけたところで、効果はなかっただろう。彼らの身に起こっている現象は石化や麻痺といった状態異常とは根本を異にするもので、時を止められている状態に等しい。何故なら、彼らはこの空間を認識することが出来ないのだ。テレパシーも直接の呼びかけも、この空間上で行われている限り、彼らに認識することは出来ない。
 茉莉の身体に影の重圧がのしかかる。この空間に適応出来ていない彼女は、立っているだけでも体力が激しく奪われ、凄まじい疲労感に襲われている。
「大丈夫か、ふらついているぞ」
 レオナルド・ダヴィンチ(れおなるど・だう゛ぃんち)は崩れ落ちそうになる彼女を支えた。
「これぐらい問題ないわ」
「なら、いいのだが」
「それよりそっちはどうだったの?」
「ああ。生徒会とスーパーロボット理論研究会があらゆる解決策をとれるよう、学院上層部に許可を求めに行ったのだが、あちらも混乱してまともに機能していなかった。結局、学長とも会えずじまいだ。まぁこの非常時なら、許可をとるまでもないかもしれんが」
 その時、灰色の空が突然、晴れた。海京の上に、澄み渡る太平洋の星空が戻って来た。
「……これは!」
 二人も身体が軽くなったのを感じる。
「シャドウレイヤーが消えた?」
「どうやら船に向かった仲間が、上手くやってくれたようだな」
 しかし同時に、解放された市民達はパニックになった。
 危惧していた事態に舌打ちをしつつ、茉莉は大きな声で呼びかける。
「落ち着いて。今、生徒会と風紀委員、学院の有志が解決に動いてる。事態はすぐに収まるわ。だから、焦らずに避難をするのよ」
「現在、幹線道路、橋、その他交通機関は使用不能だ。避難は地下道を使って行う。ボクが誘導するから三列になってついてきてくれ」
 手際よく場を仕切る二人に、人々もだんだんと落ち着きを取り戻し始める。
 そこに、魔法少女となったダミアン・バスカヴィル(だみあん・ばすかう゛ぃる)が現れた。
 普段の服とほぼ同じロリータ魔法少女衣装に身を包んでいるが、夢と希望の象徴たる姿になっても、滲み出る不気味さは隠しきれていない。
「あら、ダミアン。いいところに来たわ。皆の誘導を手伝ってもらえる?」
「誘導? 逃げ遅れた無能な愚民どものか?」
 悪魔的な言動する彼女に、人々は言い知れぬ恐怖を感じた。しかし。
「親とはぐれた愚かな子供はいるか。いるなら我の手を煩わせる前に名乗り出ろ。泣き叫ぶ姿を肴に、戯れに探してやらんこともない。
 それから、くたばりぞこないの老人。よもや怪我など負っていないだろうな。我の悪魔的応急処置で、死より苦しい生を味あわせてやる」
 見た目と裏腹に、悪魔的気遣いを見せるダミアンである。
「さぁ、ガーディアンに気付かれる前に、避難するわよ」