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フロンティア ヴュー 1/3

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フロンティア ヴュー 1/3

リアクション

 
 
 そして洞窟の奥へと進む一行は、その場所に出て、思わず竦み上がった。
 道は総じて広く、天井も高く、イコンでも楽々通れる洞窟だった。
 けれどその場所はまた更に広い。
 そして、そこには大量の龍が屯していたのだった。
「ひ、ひええ……」
 思わず、るるとラピスはひしと抱き合う。
 龍はうずくまったり、落ち着かなげに頭を振ったり、色々だが、総じて興奮しているように見えた。
「……この龍、『災厄の龍』ではありませんか」
 テスタメントが言った。
「『災厄の龍』?
 あの、契約者じゃない地球人がパラミタに入ると襲ってくるっていう、あれ?」
 真宵が訊く。
「だとすれば、龍というか、むしろ自然現象の具現化のようなものでございますね。
 契約者である我々には襲って来ないはずですが……」
 クナイはちらりと北都を見る。『禁猟区』は反応していない。
「でも、何か、すっごい敵意があるっていうか、凶暴な感じがするっていうか……」
 ちょっとしたきっかけで、一斉に襲い掛かって来そうな、一触即発の張り詰めた空気がある。
 この数の龍に襲われたら、ひとたまりもないだろう。
「行こう」
 ポケットに意識をやってから、北都が言った。
「大丈夫。ただ進むだけなら、彼等は何もして来ないよ、きっと」
 刺激しないように、そっと進む。
 息もできないような緊張の時間が暫く続き、一時間ほどして、彼等はようやく龍達の群れる空間を抜けたのだった。


◇ ◇ ◇


「……で、その後もう何日経ってるの」
 げんなりと言う真宵に、ラピスが羅針盤を見た。
「多分、エリュシオン領まで入っちゃってると思うんだ」
「ということは、ここは“龍の背山脈”の中かな」
 北都が言う。
「あと何日かかるの……」
 あの道を戻るよりは、先に進む方がいい。
 そういう思いでいるものの、どれくらい歩けば奥まで行くのか。
「多分、もう少しだよ」
「何故解る?」
 燕馬が問う。
「るるのシックスセンスがそう告げてるの」
 さあ、もう少し頑張ろう! と、一行は今日も歩き出す。


 奥底から、光が見えていた。
 日光ではない。
 青いような、碧いような、白いような――

 到達した場所は、広大な空間だった。
 奥の壁が見えないほど広く、天井は、光が届かないほど高い。

 巨大な光源は、龍の形をしていた。

「何これ……!」
 真宵が叫んだ。
 輝く龍。彼等は息を呑む。

 輝く龍は、身じろぎして、頭を下げ、侵入者達を見た。
 緊張が高まるも、龍はただ、じっと見ている。
 敵意は感じられなかった。特に好意的な雰囲気もない。人と同じ感情は存在しないのかもしれない。
「あなたは、誰?」
 北都が訊ねた。
『私は、核。この山脈の核』
「では、もしやあなたが、最近の地震を起こされているのですか」
 クナイが問うと、龍はぶるりと頭を上げ、身を震わせた。
『そうだ』
『違う』
『私は逆らえない』
 北都達は顔を見合わせる。
「どういうことですか。我々に、何かできることがございますか?」
『ああ、どうか、ウラノスを鎮めて欲しい』
『ウラノスの嘆きに反応し、自らの暴走を抑えきれないのだ』
「ウラノス……?」
「誰それ」
 るる達は顔を見合わせる。
『どうか、私が私を忘れてしまう前に』
『まだ抑えていられる内に』
「ウラノスを鎮める為には、どうすればよろしいのですか?」
『地底に』
『天空に』
『世界樹を護って、彼はいる』
 その時、びくり、と、不自然に龍が震えた。
 ぐらりと足元が揺れる。
『ああ、どうか』
 その言葉を最後に、北都達は光に包まれた。


 ぽかん、と見つめる視線と出会う。
 気が付けば、北都達は外にいた。
 それも、滑らかな岩肌の上。
「びっくりしたのです」
 と、そう言ったのは、ハルカだった。
「何じゃ、おまえら、いきなり?」
 突然目の前に現れた北都達に、光臣翔一朗が声をかける。
「……此処は何処?」
 北都は訊ねた。


◇ ◇ ◇


 彼等が転送されたのは、ルーナサズの龍王の卵の上だった。

 話を聞いたイルダーナは、表情を曇らせた。
「エレメンタルドラゴンか……」
「エレメンタルドラゴン?」
「だが解せねえ」
「エレメンタルドラゴン?」
「いくらウラノスが我を忘れたとしても、パラミタを滅ぼすような働きかけをするはずがねえ」
「もしもし?」

「パラミタ世界を形成し、司る、高位の精霊のことです」
 思考に陥るイルダーナに代わって、苦笑したイルヴリーヒが、疑問符の飛びまくっている真宵達にそう説明した。
「パラミタの自然を司る精霊達が、世界の何処かにいると言われいます。
 その全てが必ずしも龍の形をしてはいないでしょうが」
「僕達が会ったのは、大地の精霊龍?」
「そういうことでしょう。しかし変です」
「ウラノスの嘆きに反応して、というところですか」
「ええ。
 ウラノスドラゴンはパラミタの守護神です。アトラスと対を成し、天空に在ると言われている」
 北都やクナイ達の質問に答えながら、イルヴリーヒも思案に暮れる。
「第三者の介入があるんじゃねえのか」
 難しい顔をして、イルダーナが呟いた。