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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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 二回戦第四試合。
「さっさとトーナメントを終わらせて、みんなで一緒にご飯を食べましょう。ああ、私が手に入れる景品の一部は分けてあげないこともないですよ。もし、私の機嫌が良かったら、ですが」
 自分の優勝を信じて疑わない表情で紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は会場に現れた。搭乗するイコンは、魂剛。マホロバの重支援型鬼鎧だ。
 超弩級ではないがかなり大型のイコンで、重装備を誇っている。【イコンホース】に乗りマントを装着している、見るからに強そうな風貌だ。
「何を言うのだ、おぬし? 乾燥椎茸一年分はわらわの物だ。誰にも渡さぬ」
 サブパイロットのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は闘気を漲らせながら言った。気合の入り方がハンパじゃない。
「対戦相手が何者かは知らぬが、舞台に散っても恨むでないぞ。乾燥椎茸の犠牲になったのだ。美しく星になれ」
 対するは、朝霧 垂(あさぎり・しづり)黒麒麟。こちらも相当な大型で、強力な攻撃能力の他に、機動力にも自信がありそうだ。
 馬繋がりの対決になった。
「始めてくれ」
 垂は無駄口を叩かなかった。自己アピールも派手な登場シーンも必要ない。
 もちろん、狙うは優勝だ。ただ着実に勝つべくして勝つ。それだけのことだった。
「では、両者揃ったので、二回戦第四試合を開始する」
 桂輔も余計な前置きは無しで、試合を始めさせた。
 重量級同士の迫力ある激突だ。
「……」
 魂剛は、小細工無しで真っ直ぐ行った。
 堅牢な装甲、高い機動性、そして圧倒的なパワー。並みのイコンなら力押しで一刀両断だ。
 迎え撃つ黒麒麟も接近戦ならお手の物だった。
【エナジーバースト】、【嵐の儀式】、【アンチビームファン】による多段シールドを展開し、がっちり防御を固めて魂剛に迫った。
 魂剛は、まずは挨拶とアンチビームソードを目一杯振るった。
 黒麒麟は、【エナジーバースト】を使った巧みな移動で回避し【イコン用光条サーベル】でのカウンター攻撃を繰り出す。
「……」
 魂剛は見切っていた様子で、攻撃を避けた。
 双方は、弾かれるように一旦離れる。
 距離をとり、機動力を生かして近距離での打撃戦になった。飛び道具を使わない、近距離武器での戦い。お互い当たれば大打撃。だが、当たらない。回避能力や機動力にも優れており、決定打を与える機会を待ちながらじっくりと闘う。
 奇を衒わない重厚な打撃の応酬に、観客たちは固唾を呑んで見つめる。
「う〜ん、硬いですね」
 場外に気をつけながら機動力を立ち回り、隙あらば高威力の一撃を叩き込むパワースタイルで挑む唯斗は、黒麒麟の防御の上手さと厚さに舌を巻いた。それだけではなく、相手もこちらの隙を巧みに狙って強力な一撃を打ってくる。
 これまた見ごたえのある、試合になった。
 だが、乾燥椎茸一年分に目が眩むエクスは善戦では全然満足できていない。確実に倒して夕食を楽しむのだ。
「唯斗! 敵機分析完了だ! 蹴散らすが良い! そして食材を手に入れるのだ!」 
 エクスは唯斗を急かした。その間にも黒麒麟は着実にダメージを与え続けてきている。
「わかりましたよ。なんだか、石ぶつけられそうなんですけど」
 魂剛は、大人気なく【神武刀・布都御霊】を持ち出してきた。当たったら終了の必殺武器だ。どうしても困った時に使おうと思っていた武器だが、今使ってもいいだろう。困ってるし。
 超大型の剣が出現するのを見て、垂はにやりと笑う。
 確かに攻撃力は相当な物だろうが、あんな大振りな獲物を扱うとなると、かなりの隙ができるだろう。力任せの大雑把な攻撃に当たる黒麒麟ではない。
「垂さん。これ、さっきと同じ展開かもしれません」
 サブパイロットのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)が伝えてくる。
 巨大な攻撃力をひけらかしながら撃って来る敵。それをかわしてカウンターだ。
「やりましょう」
「もちろんだとも」
 垂はもとよりそのつもりだ。
「忍者の超すごい攻撃! です」
 軽い口調ながら、唯斗の殺意は本物だった。面倒なので、舞台ごと吹き飛ばしてもいいくらいの勢いで、思い切り【神武刀・布都御霊】を薙ぐ。
「ふっ、かかったな」
 黒麒麟は攻撃を見切ってた。さすがに威力はハンパじゃなくかすっただけで吹っ飛ばされそうな衝撃だが、それを強引に潜り抜けて魂剛に接敵した。
「【光条ラリアット】!」
 これに直撃したらさすがの魂剛も場外に転落するだろう。渾身の力を込めて、ウェポンを放つ。
「……」
 唯斗は眼を閉じた。これを待っていたのだ。
 元より、この試合で【神武刀・布都御霊】を本気で使うつもりは無かった。この攻撃はフェイク。黒麒麟のカウンターをさらにカウンターするための囮だったのだ。
 勢い良く突っ込んでくる黒麒麟に対し、魂剛は重心の軸をずらしてギリギリにかわした。そのまま黒麒麟の胴体を抱きかかえるように手をかけ、腰に力を込めて全力で捻る。
「上手出し投げ!」
「なっ!?」
 垂は驚愕に目を見開いた。一瞬視界が逆さまになる。
 黒麒麟は【光条ラリアット】の勢いと魂剛の華麗な投げ技で、リングから転がり落ちていた。勝負ありだった。
 唯斗は黒麒麟のような硬くて強力な相手には投げ技を決めてやろうと考えていたのだ。それが見事に炸裂した格好だった。
「魂剛!」
 行司(?)の桂輔は軍配を上げた。リング外から物言いはつかない。
「ただいまの決まり手は、上手出し投げ。上手出し投げで、魂剛の勝ち」
「ごっつあんです!」
 魂剛は【イコンホース】から降りると、力士のようにリング際に腰を落とし手を縦に三度振った。
「ふふふ……。なんてこった」
 垂は予想外のあっけない最後に、むしろすがすがしそうに笑った。一見、猪突猛進の猪武者に見せかけて、相手はしっかりと策を練っていたのだ。
「向こうが上手でしたね」
 ライゼもさばさばした口調で言う。
 垂は黒麒麟を立ち上がらせると、観客たちにお辞儀をした。
 観戦ありがとうございました。それに皆が拍手でこたえる。
「あ〜あ。皆でおにぎり食べたかったな。乾燥椎茸は、どうして乾燥してあるんだ……? 生のままなら色んな方法で調理して楽しむ事も出来るのに、乾燥してあると戻すのに時間が掛かるし……」
 そんなことをいいながらも、名残惜しさを微塵も見せずに去っていく。
「うん。以上をもって、二回戦を終了する。皆さんお疲れ様!」
 桂輔は、トーナメントを整理する。
 
 ◇ 準決勝第一試合
ゲシュペンスト
 VS
 グラディウス

 ◇ 準決勝第二試合
ゴスホーク
 VS
 魂剛

「準決勝は、休憩を挟んで行う! みんな、見逃すなよ!」
 桂輔は締めくくった。
 かくして、第二回戦までが終わり、四強が出揃った。
 果たして優勝するのは誰か?
 それは、この後のお楽しみだ。