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第2章 強襲!パラ実OB馬賊!美女と美少女

 そんな一行を突然襲う、地響き。
 高身長で妖艶な白人女性ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)と、金髪を高く結い上げた端正な顔立ちの少女素体の機晶姫、シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)がパラ実馬賊OBを引き連れ、猛スピードでトラックを駆り、襲いかかってきたのだ。
 春華がその顔に思い当たって大声で叫ぶ。
「おまえたち、たしかツァンダの資材ターミナルにいたウェイトレスたちね!?」 
「いきっとるのー、いびせえのぅ! あはは! お前らの情報は、全部ツァンダで手に入れさせてもらったわ!」
 金髪の美しい少女、シルヴェスター・ウィッカーは顔に似合わぬ広島弁でせせら笑う。
「その言葉遣い、上品じゃなくてよ。先生」
「楽しいんじゃからしゃあないのう、ガートルード」
 二人は、パラ実OB馬賊のバイトに応募したところ、あっと言う間にリーダーの座を手に入れ、OBたちを取り仕切ってしまっていたのだ。
 パラ実OB馬賊の数は生徒たちと比べて、圧倒的であった。だがパラ実OB馬賊に対して「ニコニコマッスル隊」や、ウィング・ヴォルフリート、荒巻 さけ(あらまき・さけ)が容赦なく立ち向かった。
「荒巻さん! 見えた・・そこですっ! ハッ! せい! やぁっー!!」
 轟雷閃をあやつる、ウィング・ヴォルフリート。
「ふう…、つまらないわね…もっと面白いことはないかしら? ウィング、後ろに敵がいますわ! 方向音痴なんですから!」 
 戦闘がしたいから、とこのプロジェクトに参加した荒巻 さけはなんだかんだと口では言いながら、イキイキして戦いを楽しんでいるようだった。

 桜間 剣児は亡くなった祖父が師範を務める剣の道場で武士道を叩き込まれて以来、絶やしたことのない修行と鍛錬による剣の腕を見せ、パラ実のOBたちの馬上からの攻撃にも立ち向かった。
「ケン兄ちゃん! 私も戦う!」
「さやか、ここは危険だ! お前は…僕が護る! そう決めたんだ。だからお前は後ろに下がって、レインたちを連れて先へ進め!」
「ケン兄ちゃん!」
「さやかさん、剣児さんの言うとおりよ!」
 綺羅 瑠璃が叫ぶ。
「わかったわ! 気をつけて、ケン兄ちゃん、瑠璃さん!」
 殺生を好まないベア・ヘルロットはパラ実たちにも、カルスノウトを使い、殺さぬ程度のダメージを与えることに専念している。
「大切なのは間合い、そして引かぬ心、 専守! ここは引くわけにはいかない!」
 そんなベアの姿を、マナ・ファクトリは戦いながらもうっとりと見つめていた。マナはパートナーのベアに恋心を抱いていたのだ。
 同じく、コショウやトウガラシで目潰し弾でガートナ・トライストルがパラ実と対峙していた。騎士団服を着た渋めのガートナは、見た目だけでもパラ実OBを圧倒していた。
「お相手になりますぞ! パラ実の愚連隊諸君!」

 パラ実の急襲を受けたことを聞き、レインは乗っていた馬の手綱を翻して、戦闘へ向かおうとした。
「私も戦います!」
 身を乗り出そうとするレインをフォーク・グリーン(ふぉーく・ぐりーん)が制止する。
「そなたが戦っても、足手まといになるだけだ。ここは我らに任せなさい」
「でも…みなさんが…私たちのために傷つくのは、見たくありません」
「大丈夫、我らは傷つきはしない。それよりもそなたたちは先に進むことが先決だ」
 フォーク・グリーンはそういうと、レインたちを護るべく、自分が盾となり、パラ実からの襲撃に備えた。

「護衛は中心にまとまれ! 偵察部隊、先方に問題はないか!」
 村雨 焔からの連絡に、島村 幸が応える。
「ありません! 蓮華からも問題はないとのことです」
「よし、先頭はそのまま速度を上げて、進め!」
 村雨 焔の指示に資材や技術者を乗せた車両のスピードが上がっていく。
「逃がさんけんのう!」
 シルヴェスター・ウィッカーの言葉とともに、ガートルード・ハーレックがアクセルを強く踏み込む。
「そうはさせないぜ!」
 深紅の髪をなびかせて守王 凱(もりおう・がい)が立ちはだかる。特殊部隊で訓練を受けていた彼は、あっと言う間にトラックに乗り込み、ランスを立てて、シルヴェスター・ウィッカーと一対一の戦いに臨んだ。激しく散る剣と剣の火花。
「悪辣な連中どもめ。レインたちの『父親と話がしたい』その強い希望、貴様らなどには渡さん! いくぞぉ!!」
「く! やばいのう!」
「先生、しっかり掴まって!」
 シルヴェスター・ウィッカーが苦戦を強いられているのを見た、ガートルード・ハーレックが急にドリフトをかまして、守王 凱を振り落としてしまう。
 くるっと空中で一回転して、着地する守王 凱。
「大丈夫ですか!?」
 マナ・ファクトリが駆け寄ってくる。人見知りのマナだが、今はそうは言っていられない。
「くそう…ああ、オレは大丈夫だ! それより、他のみんなは無事か」
「…心配ないです、ほら、あの通り」
 二人の目の前では「ニコニコマッスル隊」の一人、桜月 舞香(さくらづき・まいか)が七色に光輝く長いリボンを鞭のように自在に操り敵を打ち倒し、レインや技術者、資材をパラ実OBたちの襲撃から護衛、撃退した。
「不埒な男どもは、このあたしが許さないわ!」
 他の生徒たちも、自分の特技を用いてそれぞれ戦っている。
 あまりの強さに、パラ実OBたちも撤退し始めた。
 また、資材や技術者、レインたちは既にその場を離れてコンフリー村へ向かっていた。
 それを見て、ガートルード・ハーレックは呟いた。
「先生、今回は潮時ですね。これじゃ、資材を奪うことは無理そうだし」
「残念じゃのう」
「楽しかったからいいじゃないですか」
「まあな。ガートルードと一緒やと、何でも楽しいんじゃ。バイト代も悪くなかったしな」
 二人を乗せたトラックはすさまじい勢いでスピードを上げ、一行から遠ざかっていってしまった。

 朱 黎明はその様子を遠くから眺めていた。パラ実OBの連中を操り、ルートを教えていた黒幕は、彼だったのだ。バイトと偽り、彼らを扇動したのも彼だった。資材運搬ルートと最適襲撃ポイントのみを伝え様子を見ながら、優勢になって来たら共に攻撃に出て、資材を奪取するつもりだったのだ。
「やはり、パラ実のOBの馬賊では力不足でしたか。まあ、良いでしょう。次の作戦がありますから…」
 不敵な笑みをこぼす彼の側に、ネアともう一人、柔らかな物腰のパラ実の女生徒が立っていた。
「頼みましたよ、雨宮 千代(あまみや・ちよ)
「わかりました」