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温泉地に携帯を

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第6章 アンテナ完成!

 レインを取り返し、落ち着きを取り戻したコンフリー村では、数人の生徒たちが親墨 羊の提案でレインに温泉宿の一室を借り、勉強会を開いていた。小型アンテナを利用し、狭い範囲でなら携帯を使える状況にして、町の人に通話の仕方とメールの使い方の勉強会を開いていたのだ。
 美少女のレインをすっかり気に入ってしまった久世 沙幸(くぜ・さゆき)は、手取り足取り携帯の使い方を説明していた。
「ねえねえ、レイン。女子高生ならではの使い方を教えてあ・げ・る! ああん、メールはそうじゃなくて、このボタン! 私のメアドはこれ! 送ってみて。あ、レインからのメールがきたきた! これで私たち、メル友ね!」
「ええ、ありがとう。よろしくお願いします」
「ねえねえ、レイン、デコメとか知ってる? 絵文字とかをメールに使うと、すっごく可愛いのよ。それとね〜レインお願いがあるの」
「なんですか?」
「私にだけ、こっそりと地元の秘湯を教えてくれない?」
「秘湯、ですか?」
 きょとんとするレインに沙幸がすりより、ウィンクして頼み込む。
「狭くて〜誰も来なくて〜神秘的な雰囲気な秘湯がいいなあ。できれば、レインと一緒に入りたいなぁ。もちろん女同士ですもん、裸の付き合いってことで背中の流しあいっこ、しちゃいましょ!」
「沙幸さんったら、もう! ちょっと目を離すとこうなんだから! レインさんとではなく、私とハダカのお付き合いをしましょう!」
 レインと仲良くしようとしている沙幸を見て、やきもちを焼いていた藍玉 美海(あいだま・みうみ)がぐいぐいと強引に二人の間に割って入ろうとする。
「デコメなどを教えるより、先に電話番号の登録やメールのやり方だけで良いんじゃないですかね。第一、自分はデコメや絵文字といった物は好きではありません」
 一式 隼(いっしき・しゅん)は街の人たちと一緒に、親墨 羊が徹夜で作った勉強会の解説書を読み、お互い電話を掛け合いながら細かい機能を確認していく。銀色の髪を後ろで束ねた隼は、特殊部隊で訓練を受けていたこともあり、説明書を一通り読むとほとんど使ったことのない機種の携帯も、おおよそ使いこなすことが出来るようになって来ていた。
「隼ったら真面目ぶって〜。そんな愛想のないメール、誰も喜ばないよん」
「久世 沙幸、藍玉 美海が焼き餅をやいていますよ。かまってあげてはどうですか?」
「え? そうなの? 美海ねーさまったら、焼き餅をやいてくれてるの?」
 顔を真っ赤にする沙幸。
「もう! 隼さんったら! …ええ、でも、それは本当のことです! 沙幸さん、愛してますわ! レインさんより私の方がずっと沙幸さんのことを愛してますわ!」
「美海ねーさま、ほんと? うれしい〜」
 大騒ぎになっているところにすっと、メリナ・ストークスがレインのそばによってくる。
「ねえ、レイン、これボクが作ったんだ。説明書をさらに簡単にわかりやすく解説した冊子。子供や機械が苦手なお年寄り向けに作ってみたんだ。村のみんなにも配ってるんだけど、判りやすいかな?」
「すごいわ。素敵ね」
「そう、このページやってみて。あ、良かったらボクが教えてあげるよ」
「メリナったら! ぬけがけなんてずるい〜」
「抜け駆けなんて、人聞きが悪いよ、沙幸。それにボクには女性に対して、そういうやましい気持ちは無い」
「まったく、騒々しいですね」
「あなたのせいですわよ、隼さん!」
 大騒ぎしている連中の側で、親墨 羊が淡々と村人たちに携帯電話の使い方を教えていた。
「羊さん、凄く顔色が悪いですよ。どうかしたんですか」
 レインの声に羊は「いや、たいしたことないよ」とはにかんで笑う。
「親墨 羊は連日の卓球大会と、勉強会の解説書作りの徹夜でお疲れなんですよ。レイン・コンフリー」
 一式 隼の言葉にレインは驚き「大丈夫ですか?」と声をかけ、羊は照れくさそうに笑う。それがなんとなくみんなに伝わり、その場はクスクスという笑いと温かいムードに包まれた。沙幸も美海と肩を寄せ合い、笑い合った。一式 隼もそっけない顔をしていたが、そういう雰囲気を楽しんでいるようだった。自分に出来る事がなんなのかを迷っていた羊も、それを見つけ始めてきた。羊だけではなく、みんなが目的に向かって一体になっていく心地良さを感じていたのだ。

 ついにアンテナが完成する日がやってきた。全てのアンテナが設置され、山頂には仄かに演歌が流れ、ラベンダーの香りが漂っている。久慈 宿儺とヒツナ ヒノネが社にて山の神に祈り、水神 樹が『長老』の洞窟の前に『クサーヤ・ノ・ヒモノ』を村人たちと捧げていた。
「これでドラゴンの衝突も避けられるはずだ」
 村雨 焔と沙 鈴が顔を見合わせて、アンテナの完成を祝った。
 作業員として働いたナガン ウェルロッドはそんな生徒たちを遠くから眺め「アンテナも立ったし、お宝の資材もそこそこ手に入れたし、そろそろ自分はお払い箱かね。あ〜ばよ〜コンフリー村」と、ローグらしく消えるように村から去っていったのだった。

 コンフリー村のレインの温泉宿では、プロジェクトに参加したメンバー全員が集まっている。今からレインが、テレビ電話で父親の携帯に電話をかけるのだ。
 スピーカーフォン状態にした携帯から、プルプルプル、と聞こえる発信音を誰一人口も開かず、固唾をのんで見守っている。レインも緊張した面持ちだった。
 プル…と音がして、携帯の画面にレインの父親とおぼしき壮年の男性が映った。全体的な雰囲気が、どことなくレインに似ている優しげな風貌の人だった。
「お父さん!?」
「レイン! レインなのか? 久しぶりだね、良く顔を見せておくれ。元気にしていたかい?」
「お父さん! 私は元気よ。お父さんも元気そうで良かった…」
「それにしても、どうしてお前が携帯を使っているんだ? それにそこはうちの温泉宿のようだが…うちの村にはアンテナなんてなかったじゃないか」
「ここにいる皆さんが、アンテナを立ててくれたの! 資材もツァンダの領主様や蒼空学園の校長先生が出してくれたのよ!」
 レインが携帯の画面を一同の方へ向ける。
「みなさん、ありがとうございます! これで家族が携帯で繋がる事が出来ました! ありがとうございます!」
 レインの父親が何度もおじきをしている姿が、全員の目に映った。
「やったぜ!」
 緋桜 ケイが声を上げる。
「良かったですね、お父さん、レイン!」
「やったですぅ」
「やったよね!」
 御影 春菜と御影 春華が手を取り合って喜んでいる。
「これで村の子供はんも、寂しい思いをしなくて済むんどすなあ…」
 一乗谷 燕がそっと制服の袖で涙を拭いた。
 周りにいた村の人々も、レインと父親の通信が成功したことを知り、次々と別れて暮らしている親や子供、恋人に電話をかけ始める。そして小さな温泉宿は、まるで温かい湯がそれこそ湧き出るように、あちこちから歓喜の声で沸き返り始めたのだった。


「ようし、今日は宴会だ! ぱあっと騒いでどんちゃん騒ぎだぜ」
「今日こそ、卓球の王者が誰か決めてやろうじゃないか」
「望むところですぅ」
 大きなプロジェクトを成し遂げ、すっかりと気のゆるんだ一同は卓球台が設置されている大広間に集まった。
「でも、これで『カンナ様』をあっと言わせることができるはずだぜ!」
「さぁて、それはどうかしら?」
 不意に聞き覚えのある声が響き渡る。
「もしかして…」
「そう、そのまさか。あなたたちの校長にして、ご主人様、御神楽 環菜よ」
 『カンナ様』さまこと{SNM9999003#御神楽環菜}が浴衣姿でラケットを片手に、湯上がりの状態で生徒たちを出迎えた。
「ひえええ! 何でこんなところにいるんですか!」
「あら、あなたたちの成功を祝しにきたのよ。素晴らしい仕事をしたわね」
 『カンナ様』の賞賛も、素直に受け取れない生徒たち。それは『カンナ様』が一筋縄でいかないことを知っているからだ。そしてそれは次の『カンナ様』の言葉で、更に確信となった。
「それと卓球大会が盛り上がっているらしいと聞いて、久しぶりに腕を奮いにきたの。そうそう、温泉もお湯加減が最高だったわ。で、誰が相手をしてくれるのかしら? ちなみに私は卓球世界大会で優勝したこともあってよ」
「ああ」
「この人には、一生勝てない」
 すさまじい勢いでラケットを振る御神楽 環菜に生徒たちはゲンナリし、レインや村人たちは笑いに包まれた。

担当マスターより

▼担当マスター

杉井幾

▼マスターコメント

長く険しい旅をコンフリー村の人たちのためにお疲れ様でした、そしてありがとうございました。初めまして、杉井 幾(すぎい いく)と申します。
皆さんと一緒に旅をさせていただけて、とても楽しかったです。
アクションの作成もみなさんの個性が輝いていて、とてもどきどきしました。
とはいえ、マスタリング上、採用できなかったものもございます。ご了承下さい。
今回のプロジェクトに参加していただいたみなさんが、立場を超えてレインやコンフリー村の人たちのために、一生懸命に頑張って下さっているのがマスターの私にも伝わってきてとても嬉しく、頼もしかったです。
もちろん、そうでない方々も、とても魅力的でした。
とはいえ、私自身がまだまだ修行中のつたないゲームマスターですので、みなさんには気配りの足りないところや、ご心配をおかけした部分もあったかと思います。これから皆さんと一緒に、このゲームの中で成長していけるよう、努力していく次第です。
次のシナリオでお目にかかるのを、楽しみにしています。ありがとうございました。
レイン・コンフリーとともにお礼を申し上げます。

▼マスター個別コメント