天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

蒼空学園遠泳大会!

リアクション公開中!

蒼空学園遠泳大会!

リアクション

「日ごろ運動しないんだからたまには運動しなさいよ」
「してますよ、登下校のウォーキングくらい」
 パートナーのセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)の言葉に、ため息交じりで答えるのは御凪 真人(みなぎ・まこと)だ。
 スタートを担当したのは体力に自信のあるセルファ。赤いビキニタイプの水着に身を包んだ彼女は負けず嫌いなために、スタートからやや飛ばし気味で先頭集団に入り込んだ。
 沖に出て潮の流れが掴めたところで、真人に代わることにした。
「これ、羽織っててください」
 身体を冷やさないためにと自身が羽織っていたパーカーを脱ぎ、セルファの肩に羽織らせる。
「ええ、ありがとう」
 羽織らせる際に肩に触れた手にセルファは手を重ねつつ、感謝の言葉を口にする。
 海へと入った真人は潮の流れや風向きを利用して、それに身を委ねるようにしながら泳ぎ始めた。
 順位を気にせず、泳ぎきることを主体にしようとしている真人の泳ぎで、先頭集団からはやや離れていく。
「もう少しスピード出しなさいよ!」
「体力では勝負になりませんから! 早々にバテても良いんでしたら、全力出しますけど」
 先頭手段から離れていくことに気づいたセルファが言う言葉に、泳ぎながら真人が返す。
「それは困るわね……」
「セルファのときにまた距離を縮めれば良いでしょう?」
 バテられて交代が出来なければ、棄権させられてしまうかもしれない。
 先頭集団との距離を縮めるのはセルファに任せ、真人が泳ぐ間はただ前に進んでいくだけ、ということにして泳ぎ続けた。

「安全祈願ですわ、みなさま御健闘をお祈りいたします!」
 スタートダッシュにバーストダッシュを使用した荒巻 さけ(あらまき・さけ)はジャンプするように海に入って行きながら、予め用意していた花びらをフラワーシャワーの如く、他の参加者に降らせた。
『程ほどにしてくださーい!』
 花びらで、暫しの間、視界が悪くなる。
 そのことにより、放送席の方からそう告げられた。
「撒き散らし過ぎたようですね……」
 パートナーの日野 晶(ひの・あきら)が苦笑交じりに告げたけれど、さけもただ苦笑するだけであった。
 2人とも体力には自信があるため、優勝を目指している。
 そのため、最初から先頭集団の中でも上位の方に出てきた。ただ万が一に備えて、こまめに早め早めに交代するため、上位には入っているのだが、トップはまだ取れていない。
「最後はバーストダッシュで駆け抜けてゴールするとカッコイイのではないかしら?」
 さけがそう言うので、ラストで晶がそうして駆け抜けるように、その時点でトップが取れるように、その辺りは体力を温存しながら泳ぎ続けるのであった。

「チェルシーってば、もう交替なの〜? 体力無いのねー」
 スタートしてから何度目だろうか。
 交代を希望するパートナーのチェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)に、白波 理沙(しらなみ・りさ)は苦笑交じりに、けれど嬉しそうに言いながら、飛空挺に上がろうとする彼女に手を貸した。
「できる限り頑張っているのですわ〜」
 申し訳無さそうに告げるチェルシーに、理沙はしょうがないな、と笑いかける。
 泳ぎ始めた理沙の姿に、休憩しつつチェルシーは思った。
(ゴールする瞬間を自分の番に回そうと思ってるだけですわ)
 もちろん、スポーツごとに自信のある理沙がパートナーだからこそ出来ること。彼女が余裕で泳いでいるわけではなければ、チェルシーとてこのようなことはしないだろう。
(頑張るからにはオイシイところはいただきますわ)
 ふふ、と笑って理沙の様子を窺う。
 彼女はそんなパートナーの思惑に気づくことなく、体力のないパートナーを気遣って、一生懸命距離を稼ごうとしているようであった。

 泳ぐことに自信はない。けれど、自分を変えたくて蒼空学園に来たのだから、いろいろなことに挑戦したいのだ。
 六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は参加を決める前に、パートナーのアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)にそう告げた。
 大丈夫かと心配するアレクセイに微笑んだ優希だが、実はカナヅチだったりする。
 スタート直後は、集団より後方になるようにアレクセイは泳ぎ始めた。
 併走する優希の希望で、浮き輪やビート板が載せられている。
「そろそろ交代するか」
 告げて、飛空挺に上がってくるアレクセイの纏う水着は、サイドに黄色いラインが入った競泳用のロングスパッツだ。
 入れ替わりで海へと入っていく優希の水着は、Aラインのワンピースタイプのもの。露出が高いものが苦手な優希らしいチョイスであった。
 海へと入った優希に、まずはアレクセイは泳ぎ方を指南する。少しずつ泳げるようになれば、クロールや平泳ぎのコツを教え始めた。
「その調子だ」
「うん!」
 ゆっくりとであるが、泳ぎを自分のものにしていく優希に、アレクセイが声をかける。優希も嬉しそうに応えた。
 集団との距離が開いてくるとアレクセイが交代して、距離を詰めていく。
 そしてまた近づいたら優希に交代して、彼女の泳ぎの練習をした。

「こんなの恥ずかしいよ〜」
 パートナーの藍玉 美海(あいだま・みうみ)が用意した泳ぐのにはあまり向かない紐で結ぶタイプのビキニを着用した久世 沙幸(くぜ・さゆき)が声を上げる。
「お揃いの水着で頑張りますわよ」
「う……うん」
 けれど美海の言葉に、頷いてしまう。
 美海が言うように、2人が纏う水着のデザインは同じで、沙幸のものが白系統、美海のものが黒系統で作られているものだ。
 そんな水着で泳ぎ始めた2人であるが、交代のたびに美海が毎回、抱きついたりと過剰なスキンシップをしてくる。
 最初は驚く沙幸であったが、『大好きな美海ねーさま』が行ってくれること。一緒になって、抱きつき返したりしていた。
 中間地点も過ぎて、終盤に差し掛かろうとしているところ、アンカーは沙幸が行うのだと、美海が飛空挺へと上がってくる。
 それまで同様、抱きついた美海はドサクサに紛れて、沙幸の首の後ろと背中に手を回し、トップスの結び目をゆるくさせた。
 それに気づかないまま、沙幸は泳ぎ始める。