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目指すは最高級、金葡萄杯!

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目指すは最高級、金葡萄杯!

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第二戦 開幕前のお祭り騒ぎ!!!


「ええと、この辺りかな?」

 早朝、まだ準備でにぎわう町の中で、薄桃色のフレアハットを目深にかぶった青い髪をピンで少しだけ留め、歩くたびに花の香りを振りまく美少女……月島 悠(つきしま・ゆう)は、かわいらしいフリルつきのブラウスに、長いフレアスカートを翻しながらあたりをしきりに気にしながら歩いていた。お祭りだからと聞いて、学校を問わず多くの人々がこのイベントに訪れていた。パートナーの麻上 翼(まがみ・つばさ)はロングのパーカーの下に長けの合うロングTシャツを来て後ろを楽しげについていく。

「でも、本当に亮司さんがあんなこといったの?」
「いってましたよ。ボクの耳は確かにそう聞こえました。『ばらされたくなければ、一日付き合え』って、ボクに伝言残していきましたよ」
「うう、あ、この屋台かぁ……知り合い、誰もいないよ……ね?」

 麻上 翼はニマニマしながらおどおどと辺りをうかがう月島 悠の様子を楽しんでいた。屋台の前で

「お、なにしているんだ悠……って、その格好できたのか?」
「え?え?なんで?」
「あ、いや。ココに来るときからその格好で来るとは思わなくってな。とりあえずいわれていた通り服も用意したから、着替えてきてくれ。おーい、綾乃」
「あれ?え、悠さん……あ、か、可愛いですね! そのお洋服……お、女の子らしくって……女の子……?」
「な、内緒にしてね?」

 既に着替えを終え、二人文の衣装を手にした向山 綾乃の視線から逃れるようにして月島 悠は今一度フレアハットを深くかぶりなおした。いそいそと向山 綾乃から衣装であるウェイトレスの服を受け取ると、指示された簡易更衣室へと走っていった。

「翼ちゃん、教えてくれればよかったのに……」
「いいんですよ。そのほうが面白いんです」

 麻上 翼も衣装を受け取ると、自分も着替えるために簡易更衣室へと向かった。


 祭りの始まりを告げる花火が上がると、武術大会よりも早く屋台がにぎわい始めた。ピンク色でフリルをふんだんに使ったミニスカートのウェイトレス姿の美少女達が接客してくれる『闇商人の屋台』は好調な滑り出しだった。
 スコーンは予定よりも早く売り切れそうで、向山 綾乃はスコーンを追加で作るために食堂へと向かった。
 一人接客を任された月島 悠はシャンバラ教導団の生徒や、蒼空学園の生徒が足を止めて注文するたびに怯えたような作り笑いを浮かべて接客していた。

「悠くん、そんなにおどおどしていたら、余計に怪しいよ〜」

 主人を困らせたいがために屋台の中で会計を請け負った麻上 翼はニヤニヤしながら月島 悠に声をかける。

「だ、だって……」
「そうじゃぞ〜せっかくの女の子モードなら、女の子らしくせねば損じゃ」

 月島 悠がびっくりして見下ろすと、セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)は葡萄ジュースをちゅーっとストローで吸い上げていた。「い、いつから!?」と月島 悠が叫ぶと、ため息を一つついて唇を尖らせながらいった。

「ひどいのぅ……やーみしょーうにーん!と元気に声を出してここまできたというのに。全く気づかぬとは……友達甲斐がないのぅ」
「なんだ、セシリーいたのか」
「いたのか、とはひどいのぅ……大会前に買いに来てやったというに」
「ここなの! とってもおいしいジュース屋さんなの」
「ジュース屋さんなのですか?」
「未羅ちゃんたらぁ……ここは佐野様の屋台ですよぅ」
「やっほ〜、ジュースツケで飲みに来たよ」

 賑やかな朝野三姉妹は、ルーノ・アレエを取り囲みながら闇商人の屋台に訪れていた。朝野 未羅は接客をしている月島 悠に丁寧に挨拶し、カウンターにいる麻上 翼に「ツケでお願いなの!」と元気よく告げると、4人分のジュースを受け取って姉たちとルーノ・アレエに差し出した。皆が受け取ってストローに口をつけると、朝野 未羅はぱあっと顔を明るくして声を上げた。

「おいし〜の!! ね?ルーノさん!」
「はい、とってもおいしいですね」
「あ、あんたか?ルーノ・アレエって」
「これ、ケイ。まずは自分から名乗らぬか」

 和んでいたところに突如現れたのは、メイド服に身を包んだ緋桜 ケイ(ひおう・けい)と赤い着物が銀髪によく似合っている悠久ノ カナタ(とわの・かなた)だった。パートナーから叱責を受けて、緋桜 ケイはすぐさまぼさぼさの頭をかきながら「あぁ、ごめんな」と言葉を続ける。軽い咳払いの後、すこしばつが悪そうに口を開いた。

「俺は緋桜 ケイ。こっちは悠久ノ カナタだ。ヴァーナー・ヴォネガットって知ってる、よな?」
「はい、もちろんです。クラスが違ってしまい、なかなか逢うことがかないませんが大事な親友です」
「よかった。俺、ヴァーナーの恋人なんだ。それで、アイツが心配してたから、代わりに来たんだ。どうしても来たがってたんだがな」

 緋桜 ケイは少し顔を赤らめながら『恋人』と名乗って微笑んだ。ルーノ・アレエはそれに少し驚きの表情を覗かせたが、すぐに祝福するように微笑む。

「そうでしたか……学院で今度は私から逢いに行って見ます。ありがとう、緋桜 ケイ」
「可能なら、わらわたちで金葡萄について調べてみようと思っているのだ」
「え?」
「おぬし、金葡萄が自分が作られた一端を担う代物ではないかと、そう考えているのであろう?」
「……ええ。もしそうなら……私は私にとって妹に当たる存在が生まれないようにする方法を探したい」
「幸い、別の意味で金葡萄の謎を追うものたちは沢山おる。わらわたちもおぬしが試合に出ている間に可能な限り調査を進めるとしよう」
「俺も協力させてくれ」

 偶然にも闇商人の屋台に居合わせた志位 大地(しい・だいち)は、伊達眼鏡に触れながらルーノ・アレエたちに声をかけた。手にしている文献は、どうやらこの地域のことが書かれたものらしい。

「金葡萄に興味もあるが、人の役に立てるなら励みにもなる。協力させてくれ」
「僕も大会に出場するし……勝てたならルーノさんに一粒だけでも何とかならないか、掛け合ってみる。ばらしちゃいけないなんて、学校の誓約書には書いてなかったしね」
「おお、それはいいのぅ。わしが勝った場合も、一粒分けてやろう」

 大草 義純の言葉に、セシリア・ファフレータも同調してルーノ・アレエに約束をする。ラグナ アインはルーノ・アレエの手を今一度とって、周りに呼びかけるように声を上げた。

「それじゃ、調査の成功と、ルーノさんや協力してくれる皆さんが試合に勝って金葡萄を手に入れられるといいですね!」
「前祝に、わらわたちで乾杯でもするかの?」
「それはいい案じゃ。わしも混ざるとするかの」
「それじゃ、みなさんジュースは持ちましたかぁ? では、乾杯〜」
「乾杯なの〜〜!」

 朝野 未那と朝野 未羅が乾杯を告げると、闇商人の屋台前にいた人々は歓声を上げながら葡萄ジュースを口にした。
 丁度そのとき、大会開催前にならされる鐘が打ち鳴らされ始めた。