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なし

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ウツクシクナレール!?

リアクション公開中!

ウツクシクナレール!?

リアクション

「……つまり、異常なタコの繁殖に驚いた君があのビラを撒いたんだね」
 洞窟から大分離れた森の中、恐る恐るに学舎方面の様子を窺っていた商人を捕らえた天音は、やれやれと肩を竦めながらそう告げた。後ずさる商人の逃亡を封じるように背後に立ったブルーズが、彼の言葉を引き継ぐ。
「呆れて物も言えないな。つついた魔物が繁殖したは良いが、手に余ったからと処理を他人に任せるなど」
 凄むように唸るブルーズの視線に怯んだように身動きを止めた商人は、「惚れ薬を売りさばきたかったんだよ……」と言い訳を零す。
「それで吸血鬼に惹かれる性質を利用した、と。……君には、それなりの誠意を見せてもらおうかな」
 微笑を浮かべた天音は、商人を先導するように歩き出した。学舎の方向へ向かう彼に「ひっ」と悲鳴を漏らして逃げ出そうとした商人は、ブルーズの片腕に容易に捕まってしまう。
「学舎を巻き込んだんだ。きっちり謝罪してもらおうか」
 凄むブルーズの言葉に、今度こそ商人は力無くうなだれた。

「皆さん、ご迷惑をお掛けしました」
 血液を摂取してすっかり回復したらしいヴラドが、洞窟の面々に真摯な謝意を述べた。シェディに抱き付いた体勢のまま述べられている事が些か誠意を削ぎ取るが、誰もそれを指摘するでもなく、気にするなと笑みを返す。
「……ありがとう」
 ほんの微かな声音でシェディが感謝を述べ、その言葉を皮きりに、一同は洞窟の外へ向けて歩き出した。
「壮太君! あなたという人は……」
 惚れ薬の効果の切れたエメが未だに薄赤く頬を染めたまま壮太へと声を荒げるが、羞恥からかいまいち覇気のないその叱責に、壮太は「悪い悪い」と軽い謝罪を返すばかりだった。同じく効果の切れたファルは呼雪よりもタコ焼きへと興味が移ったようで、大タコの欠片を両腕に抱え尻尾を振り振り一同を先導していく。

 洞窟の外には、何事もなかったかのような平和な光景が広がっていた。子タコたちの骸は、大タコ二匹が倒れ伏すと同時に元から何もなかったかのように綺麗さっぱり消滅してしまっていた。
 否、一部の喧騒は確かにタコ事件の名残を残している。
「ああ! そうだよ!! 惚れ薬飲んで裸で追い掛け回してたよ! 滑稽だろ!? 笑えよ! 嘲笑えよ! 変態だってな!! はっはっははっはっはって笑え!!」
「あはは、ラルク、ごめんごめん」
 自虐的な咆哮を上げるラルクの傍らで、イリーナが裸のラルクの雄姿が映る携帯をかざしながら愉快気に彼を宥めていた。少し離れたところでは、寸前まで珠輝と深く口付けを交わしていた海已が汚いものを見るような目を彼に向けている。
「何でよりにもよって男と……! 寄るな! 来るんじゃねぇ気色悪い!」
 武器まで向ける海已の罵声を気にも留めず、珠輝はうっとりとした笑みを浮かべる。
「ああ、もっと罵って下さい……!」
「馬鹿を言っていないで行くぞ!」
 そんな彼の耳を摘まみ、声を荒げたリアはずりずりと彼を引っ張っていく。「ふふ、リアさんも激しい……」などと珠輝の零す恍惚とした声は次第に遠ざかっていき、その背後ではやはり惚れ薬の切れた響が「覚悟は良いな、アイザック?」と拳を震わせていた。
「おいしいよー!」 
 翔太たちの屋台は、「タコの無いタコ焼き屋さん」として大盛況だった。そこに洞窟組が大タコの亡骸を持ち帰り、樹や弥十郎たちによってすぐに調理されたそれは戦闘に疲れた生徒達へと振る舞われた。

「……済みませんでした、シェディ」
 そんな平和な光景を遠巻きに眺め、シェディに寄り添いながら、ヴラドは謝罪を口にした。彼の肩を抱き寄せるシェディは緩やかに首を横に振り、眉を下げた笑みを零す。
「いや。……俺も、悪かった」
 疑問気に顔を上げたヴラドの顎へ指先を触れさせ、おもむろにシェディは彼の唇を奪う。目を見開いたヴラドに言葉を紡ぐ暇を与えず、不器用な笑顔を浮かべたシェディは言葉を続けた。
「俺はおまえさえ居れば良い。……共に学舎の入学を目指すんだろう? ヴラド」
 ここのところ勉強に打ち込みっぱなしだったシェディに、ヴラドは不安を溜め込んでいた。呼雪の指摘でようやくそれに気付いたシェディは、穏やかな笑みを浮かべたままに言う。
「ええ。……ありがとうございます」
 再び打ち解けた二人は幸せそうに向き合って面持ちを綻ばせると、良い匂いを辺りへ漂わせる屋台へ足を進め始めた。

担当マスターより

▼担当マスター

ハルト

▼マスターコメント

シナリオにご参加頂きましてありがとうございました、担当マスターのハルトです。
この度看病した家族からインフルエンザを貰ってしまい、このような大幅な遅れを出してしまいました。
御参加下さった方々、リアクションをお読み下さった方々、大変申し訳御座いませんでした。相も変わらず体調管理が至らず、重ね重ね申し訳御座いません。今後このようなことの無いよう努めていきたく思います。
タコの討伐から調理、惚れ薬の利用など、様々に個性的なアクションをありがとうございました。とても楽しく執筆させて頂きました。お読み下さった皆さんにも、少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
では、度重なる遅延を申し訳御座いませんでした。ありがとうございました!