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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

リアクション

「あ〜ぁ、あれオイシそぉ〜」
 無邪気な子どものように声を上げるのは、彩羽のパートナーであり姉でもある天貴 彩華(あまむち・あやか)だ。緑地にデフォルメされたウサギ柄の浴衣を着て、下駄をカラコロと鳴らしながら、綿飴の屋台へと駆け寄っていく。
「彩華! 前ちゃんと見ないと危ないよ!」
 紺地に七色の羽毛が散りばめられたような柄の浴衣を纏う彩羽は、彩華へと注意の言葉をかけながら、追いかける。
 綿飴の屋台の前に辿り着くと彩羽はそれを1つ買い求めて、彩華に渡した。
 早速、齧り付いた彩華は、そのふんわりとした食感に驚きを見せる。
「あ〜、あれ、なあに? 彩羽」
 言いながら彩華が駆け寄っているのは、リンゴ飴だ。
「もう、まだ綿飴食べ終わってないでしょ!?」
「なんかぁ〜言ったですぅ〜?」
 振り返る彩華は言いながら仕方なしといった感じで、彩羽の傍へと戻ってくる。
「勝手に先に行ったら、危ないわ」
 言いつつ、彩羽は彩華の手を取って、菓子の類を調達しながら花火の見える場所を探した。
「エメネアさん、行きましょう」
 睡蓮に手を引かれ、エメネアは屋台の通りへと繰り出した。
「まずは焼きそば! 人気メニューなだけに売り切れ必死!!」
 遥の言葉に、皆は一番近くにあった焼きソバの屋台を訪れた。
「甘いわ! それではこの程度が相応であろう!」
 焼きソバの味付けが良くないと、エクスが声を上げ、表示された値段より少ない額の金を渡した。
「そんな!? だったら、どんな味が良いって言うんだ!?」
「ふ、ならば教えてやろう。変わりにコレとそっちのも付けて貰おう」
 告げるエクスは傍で冷やされている飲み物を指差し、更に教えることで作られる焼きソバをも指差した。
「う……」
 あまりの損害に店主は言葉を詰まらせる。
「すごいですねーーー」
「姉さんはいつもあんな感じなのです」
 感心するエメネアに、睡蓮が耳打ちする。
「ちょ、コレ何人分……」
 店主が折れて、差し出した飲み物が唯斗に渡された。10本ほどはあるだろうか。
 更に、エクスの指示の元、作られた焼きソバも彼へと渡されて、いくら荷物持ちに着いて来たと言えど、既に持てる容量を越えつつあった。
「手伝います」
 そう言って、唯斗に手を差し出したのは朔夜だ。
 焼きソバの方を受け取って、エメネアたちに配っていく。
「うん、美味しいね」
 白地に青い帯で締めた浴衣姿の司は、焼きソバを一口食べるなり、エメネアへと声を掛けた。
「美味しいですねーーー!」
 エメネアはこくんと頷いて、感動したと言わんばかりの声を上げる。
「そうであろう、そうであろう」
 エクスは満足げに頷いた。
「うん、確かに美味しいねぇ」
 テキトーに付いてく、そう言って行動を共にしていたクドも焼きソバの味を気に入ったのか、一口二口と次々と食べている。
「それに、値切っている様子はもう、師匠と呼びたくなるほどで……!」
「呼んでくれてかまわぬぞ。何なら、今度、バーゲンに一緒に行くか? 戦力は多い方が良かろう」
 ぐっと拳を握って告げるエメネアにエクスがそう答えると、彼女は是非! と意気込んだ。
「屋台を見て回るのって凄い楽しいです! キラキラしてて幻想的で……」
 受け取った焼きソバを食べながら、恵那は周りの様子に感動し、声を上げる。
「エメネアさんも楽しいですか?」
「ええ。何より、恵那さんをはじめ、皆さんと一緒だから、余計に楽しいですよ! 恵那さんはどうですかーーー???」
 彼女の問いに、エメネアは笑顔で答えると、逆に問い返した。
「……私ですか? とても楽しいです」
 にこりと笑って答える彼女を見れば、エメネアも自然と笑顔が込み上げる。
「あいたっ!」
 そこに1つの声が響いた。
 近くにあった射的の屋台から、景品に当たって跳ね返ったコルクが高等部を直撃した上に勢いで倒れてしまった朔夜が上げた声だ。
「大丈夫ですーー?」
 心配してエメネアが声を掛けながら手を差し伸べる。
「ありがとうございます……」
 その手を借りながら朔夜が身を起こすと、今度は輪投げの輪が飛んできて、エメネアを巻き込んで倒れてしまった。
「ふふっ、当たりやすいんですねーー」
 巻き込まれたというのに怒ることなどせずエメネアは、笑いながら身を起こす。恵那や睡蓮に手を差し出されて、2人とも立ち上がれば、顔を合わせて、笑いあった。
 買い食いを楽しんでいるエメネアの様子に、明日香は文句を付けることなく見守っている。
 教育係としての彼女なら、注意するのだが、今日は皆と楽しんでいるのだから、それに釘を刺すことはしないのだ。
「エメネアちゃん、こっちのたこ焼きも美味しいですよぉ」
 言いながら、明日香は手にしたトレイから1つを串で刺して、エメネアの口元へと運ぶ。
「あむ……はふっ、アツアツ、ですっ」
 大口を開けて、全部を口へと含んだはいいものの、中身の熱さに、エメネアは声を上げた。
「わわっ、大丈夫ですか!? あ、……ほら! ジュースですぅ!!」
 エメネアの様子に明日香は慌てて、近くの屋台で飲み物を求めて、渡した。
「あ、熱かったですーー……」
 はふはふ言いながら大玉のたこ焼きを嚥下し、渡された飲み物で熱くなった口内を冷やせば、エメネアは大きく息を吐き出した。
「気をつけてくださいね?」
「はい」
 明日香の言葉に、エメネアは何度も頷いてみせた。
「はい、これ。いつも頑張っているご褒美」
「わあ、ありがとうございますー!」
 美羽が買って来て差し出した綿飴に、エメネアは驚きと共に、感謝の言葉を述べる。それから、受け取った。
「これ食べながら、花火見ようね」
「はい。美羽さんもオリジナルの花火、作ったのですよね? 打ち上げられたら、教えてくださいねー?」
 エメネアが訊ねると、美羽が小さく頷く。
「でも、見るまで内緒だよ」
「それは、こちらもですよーー」
 秘密だと、口元に立てた人差し指を当てる美羽に、エメネアも同じようにして告げた。