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【初心者向け】こどもたちのぼうけんにっき

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【初心者向け】こどもたちのぼうけんにっき

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 3章 山頂


『……ゴーストたちは、大きな木の前であやしげなじゅ文をとなえました。
 
 ごそごそごそごそ……。
 
 地面がもり上がって、【じごくの番人】たちが姿をあらわします。
「これが世に名高い、【ナラカの大蜘蛛(おおぐも)】さ!」
 ゴーストたちはとくいげにむねをはります。
「大きな口で、にんげんどもなどひと飲みだ!」
「逃げようものなら、糸をはきだしてグルグル巻きさ!」
「これで、お宝はおれたちだけのものさ!」
 あっはっはっはっは、と笑って、ゴーストたちは夜の中にきえていくのでした……。

 〜パラミタに伝わる民話・「魔の山」より〜』

 ■
 
「で、これがその、『大きな木』なのかしら?」
 やや離れた位置から騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は伝説の大木を眺めていた。
 目的地まで数十メートル、といったところ。
 木は呪いで枯れ、現在はかろうじてその原形をとどめるのみに至っている。
「欅の木……だよね? その向こうに見えるのは、お寺?」
 ごそごそと闇が動く。
「大きいわね……いったん戻ろうかな?」
 ここまでバレずに後つけてこれたし、これからも、と思う。
 子供達の一行は、やや後方にいる。
【ナラカの大蜘蛛】に備えて、策を練っているようだ。
 でも、と口元に手をあてて。
「魔物相手に、策もへったくりもないよね?」
 目を凝らすと、クマのきぐるみが子供達の後を追っている。
「レンちゃん……正体さらせばいいのに……」
 ふうっ、と詩穂は息を吐いた。
 彼――レン・オズワルド(れん・おずわるど)は子供達から怪しがられ、山門で同行を断られていた。
 熊は弱くとも「熊」なのだ。
「ま、レンちゃんの考えも、分からなくはないけどねえ〜……」
 さて、サポート、サポート〜♪
 一行の動きを測りつつ、詩穂は闇に消えた。
 
 黒い雲間から、青白い月が現れる。
 そして、戦闘ははじまる――。
 
 ■
 
「【ナラカの大蜘蛛】よ! かかってこいっ!!」
 りーだーが怒鳴った。
 子供達はなんと! 正攻法で【ナラカの大蜘蛛】に挑むつもりらしい。
 枯れ枝の棒きれを両手で持って、構えている。
「お前らを倒して、【おっきな飛空艇】はいただくぜ!」
「でも、飛空艇って、どこにあるの?」
 さあー、と子供達は首を傾げる。
 かれらは「『魔の山』の山頂にあるらしい」としか知らない。
「こいつらを倒して、聞き出せばいいんじゃねえの?」
 大蜘蛛はしゃべりませんからっ!
 だが、それは名案だ! と子供達は頷くと、再び攻撃態勢に入った。
「これで、ゴースト達も倒せたんだ! まかせておけって!」

 だが、【ナラカの大蜘蛛】に枯れ枝が通じるはずがない。
 たちまちのうちに、こどもたちは蹴散らされて窮地に陥ることとなる。
 
 わああああああああああああっ!
 
 山頂の荒野で逃げ回る子供達。
 
「やれやれ、子守り役も楽じゃねえぜぇー」
 やや離れた位置から、大鋸がシー・イーに愚痴をこぼす。
「大蜘蛛討伐隊」の面々に向き直って、片手をあげた。
「じゃ、頼んだぜ! 俺もやばくなったら、加勢する」
「その必要はないぜ! 大鋸」
「ああ、【攻撃隊】の力を信じろ!」
 【攻撃隊】の面々――無限 大吾(むげん・だいご)西表 アリカ(いりおもて・ありか)スカイラー・ドラゴノール(すかいらー・どらごのーる)三船 敬一(みふね・けいいち)セイル・ウィルテンバーグ(せいる・うぃるてんばーぐ)白河 淋(しらかわ・りん)黒山 五町(くろやま・ごちょう)天心 芹菜(てんしん・せりな)トリス・ルナ著 『祓魔式目録』(とりするなちょ・ふつましきもくろく)は武器を掲げて、ときの声を上げる。
「俺達、【囮役】だって、力になるさ!」
 【囮役】の面々――獣 ニサト(けもの・にさと)コルセスカ・ラックスタイン(こるせすか・らっくすたいん)戯纏 桜冥(ぎてん・おうめい)も、武器を掲げて存在を誇示する。
「あら、私達【誘導役】のことも、忘れないでね?」
 ウィンクするのは、【誘導役】の面々――ルビー・ジュエル(るびー・じゅえる)ソニア・クローチェ(そにあ・くろーちぇ)小林 恵那(こばやし・えな)小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)だ。
 木陰からこっそりと、コルセスカに見つからぬようルーシェン・イルミネス(るーしぇん・いるみねす)が顔を出す。
「じゃあ、行くぜ! 野郎ども!」
 威勢の良い掛け声と共に、各自は予定通り定位置へと散った。
 
 ■
 
「まず、大蜘蛛を子供達から引き離すのが先決だな!」
「では、【囮役】開始! と行こうか?」
 獣 ニサト(けもの・にさと)コルセスカ・ラックスタイン(こるせすか・らっくすたいん)は頷くと、欅の木の前に躍り出た。
 そこには、数名の子供達の前に、既に1匹の大蜘蛛が立ちはだかっている。
「でかい……っ!」
「大型トラックくらいはあるな」
「だが、動きは鈍い!」
「走れば、楽勝だぜ!」
 そうして、大蜘蛛との追いかけっこは開始されたのであった。
 
「さて、残された子供達はどうするのかな?」
 問題を告げて、登場したのはルーシェン・イルミネス(るーしぇん・いるみねす)だ。
「あたしが『安全地帯』へ案内するから、大丈夫なんだもんね! コル」
 ペロッと舌を出して、ルーシェンは子供達の元へと向かう。
「君達、【おっきな飛空艇】を捜しているんでしょ? 一緒に行ってもいいかな?」
「なにしているんだ! ここは『おんなこども』のくるところじゃねえぞ!」
 子供達は「おうちに帰れ」コールで、ルーシェンを追いたてる。
(君たちだって、「こども」じゃないかあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
 凹むルーシェン。
 地に「の」の字を書く。
 子供達、呆れたように大きく息を吐いて。
「仕方がないなあ、じゃ、ついてこいよ!」
「うん!」
 そうして、ルーシェンは当初の目的は記憶の彼方に葬り去って、【お宝探し】の手伝いに加わるのであった。

 【ナラカの大蜘蛛】は、群れをなして【囮役】達と子供達を襲い始める。
 ニサトとコルセスカは逃げ遅れた子供達を庇いつつ、欅の根元に追い詰められる。

「まずいぜ、まずいぜ、まずいぜぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「だよね!」
 岩陰から、頭をヒョコンと出したのは、無限 大吾(むげん・だいご)西表 アリカ(いりおもて・ありか)の2人だ。
「大蜘蛛を『陽動』するのは簡単だが……」
「方向を見誤ると、後ろに逃げた子供達に向かっちゃうよーっ!」
 残りの子供達は2手に分かれて、欅の木から遠ざかっていた。
 だが大蜘蛛達が本気で追いかければ、まだ追いつかれてしまいそうな距離だ。
「ニサトさん! コルセスカさん! 左側を開けるから、耐えてくれ!」
 大吾の声に、【囮役】達は頷く。
 
 ばんばんばんっ!
 
 銃撃は大吾の【碧血のカーマイン】しか通じてないようだ。
「物理攻撃はきかないってこと!?」
「じゃ、俺だけで巧く行くことでも祈ってろ!!」
 大吾は【シャープシューター】を使う。
「こっちに来るよ!」
「任せて下さい! 無限大吾、西表アリカ」
 セイル・ウィルテンバーグ(せいる・うぃるてんばーぐ)は2人の前に躍り出る。
 【爆炎波】を放った。
「これで、どうです!?」
 や、と爆炎が大蜘蛛たちの足元へ襲い掛かる。
 炎の勢いに押され、大蜘蛛たちの行進が止まる。
 3名は協力して、大蜘蛛を右側へ陽動することに成功した。
「大吾、アリカ、セイル! すまない。恩にきるぜ!」
 ニサトとコルセスカは片手を上げて、仲間に感謝する。
 子供達を【誘導役】の者達に任せると、また【囮役】へと戻って行くのだった。
 
 だが、【囮役】達の試練は続く。
 
「き、キズだらけじゃないですかっ! 死んでしまいますっ!」
 スカイラー・ドラゴノール(すかいらー・どらごのーる)はニサト達を一見して、舌打ちした。
「光の精霊よ! 仲間達を守ってください、頼みます!」
 スカイラーの【光精の指輪】が輝きを増す。
 光り輝く「人工精霊」が現れる。
「行きなさい! 大蜘蛛どもを連続攻撃です!」
「人工精霊」は主人の命令に忠実だ。
 大蜘蛛達の足元を否応なく攻撃する。
「光の精霊さん。
 その調子ですよ。
 精霊さんの本気を見せてあげなさい!」
 だが、大蜘蛛達はよろけた瞬間に、何と!
 近くに潜んでいた子供達を見つけてしまった。
 恐怖に、子供達は足がすくんで動けない。
 ガチガチガチッと大蜘蛛達は歯を鳴らし、尻から一気に糸を吐き出す。
 
 シュルルル……ッ。
 
 たちまちのうちに、子供達は大蜘蛛の糸に絡め取られてしまった。
「しまった!」
 叫んで、子供達に近づこうとする。
 スカイラーの視界に、サッと飛び込む大きな影が。
「熊……」
 そう、こいつは間違いなく……。
「『森の熊さん』?」
 その、熊タイプの【ヒーローの着ぐるみ】を着たレン・オズワルドは、【アッシドミスト】を自分の周りのみ張り巡らす。
「酸の霧で大蜘蛛の糸を溶かそう、とでも言うのでしょうか?」
 狙いはばっちり!
 子供達は糸から解放され、レンは子供を誘導して安全な場所へと避難させる。
 
 ♪ある〜う日(あるう〜日)。
 ♪もりのなか(もりのなか)。
 ♪くまさん、に(くまさんに)。
 ♪であ〜あた(であ〜あた)。
 
「友情のバッジ」を渡しつつ、童謡を歌いながら……。
「一体、何がどうなっているのやら……」
「でも、良かったよね! すっかり仲良くなっちゃって!」
 闇の中で、詩穂がこっそりと笑った。
「さあて、詩穂も! 皆に負けないように! サービスサービス〜っと!」

 闇の中、子供達は大きく2手に分かれてわらわらと移動する。
 子供達が万一転ばぬよう、明り役の者達も分かれて行動する。
 闇夜に明りは、フワフワと蛍のように子供達の存在を浮き上がらせる。
 
「だから、そっちに行くなって!」
 三船 敬一(みふね・けいいち)は子供達に叫んだ!
 大蜘蛛が大口を開けて、彼らを待ち構えていたのだ。
「【スプレーショット】、全開だぜ!」
 迷わず大蜘蛛達に食らわせる。

 キシャアアアアアアアアアアアッ!
 
 怒った大蜘蛛達は、敬一の方へ向かってくる。
 数が多すぎて、1人の力では難しい。
「子供達を守ったはいいが、最悪だな!」
 【スプレーショット】で応戦。
 大蜘蛛達の足は鈍るが、行進は止まらない。
「このままでは、踏み潰されるっ!」
「任せて下さい! 敬一さん」
 白河 淋(しらかわ・りん)は【サイコキネシス】で支援する。
「えいえいえいっ! 連続攻撃で、どうですっ!?」
 淋はぐいぐいと大蜘蛛の両足を操作し始める。
 思う方向に行けない魔物達は、身をよじって抵抗する。
 やがて――。
 ぺしっ。
 大蜘蛛達の足から鈍い音がした。
 どうっと魔物の群れは地に伏す。
「足、折りましたかね?」
「俺の攻撃で随分弱まっていたからな。助かった、ありがとう!」
  
 敬一達の目に、他の子供達の様子が映る。
 彼らは疲れきっているため、大蜘蛛達に追いつかれそうだ。
 
「ままま、任せておけ! 青年っ!」
 黒山 五町(くろやま・ごちょう)はツンツン髪を風になびかせて、岩の上でガッツポーズ。
 だが、両足は震えている。
「こここここ、ここは、おおおおおお、オレ達が引き受けたあっ!」
「見ちゃいらんねえやっ」
 シー・イーを下がらせ、それまで静観していた大鋸はパキポキと指を鳴らす。
「俺様も加勢するぜぇ! 五町。大丈夫かぁ?」
「だだだ、大丈夫だ! や、やばくなったら頼んだぜ! 王ちゃん」
「おう! 了解だっ!」
 大鋸はシー・イーを伴い、別の場所へと移動する。
「さ、オレ達も、はじめるとするか!」
 五町は震える両手を合わせ、ふんっと念を込める。
【サイコキネシス】で岩を浮かそうと言うのだ。
「手頃な岩で、オレの力で動かせる範囲の……あれだ!」
 岩に集中する。
 カタカタカタ……岩は音もなく浮き始める。
 そのまま上空を漂い、大蜘蛛の手前に落ちた。
 
 キシャアアアアアアアアアッ!
 
 大蜘蛛達は当然怒って、標的を五町に変更する。
「わあああああああああっ! 神様!」
「もう、見ちゃいらんないったら!」
 天心 芹菜(てんしん・せりな)は五町を背にかばうと、【火術】の姿勢に入る。
「紅蓮の炎よ! 大蜘蛛どもを蹴散らしちゃえっ!」
 指先から放たれた炎は、真直ぐに大蜘蛛達を狙う。
「さあて、大蜘蛛ってどれくらい強いのかなっ?」
 彼女の青い瞳に、いたずらっぽい光が宿る。
「私の炎が強いか! いざ勝負! だよね?」
「……へっ?」
 五町の両目が点になった時には遅かった。
 芹菜は【火術】をひっきりなしに使い続け……子供達の安全等考えもしない。
「ちょ……っ! 女ぁ! やり過ぎだぜ!」
「五町殿!」
 ルビー・ジュエル(るびー・じゅえる)が岩の下からそっと声をかける。
「自分が子供達を安全な場所へと移動させます」
「俺も、行くぜ」
 大鋸が駆けつける。
「頼む! 2人とも!」
 ルビーと大鋸は頷くと、子供達の誘導に当たった。
「貴公ら! 自分の後についてくるのです!」
 ルビーは手を引いて、大蜘蛛達と火炎地獄から遠ざかろうとする。
 しんがりをつとめるのは、大鋸だ。
「えーん!」
 子供の1人が泣き出した。
 転んだ拍子にけがをしたらしい。
「ちょっと待って!」
 慌ててルビーが近づく。
 【応急処置】を施しつつ、戦闘の様子を眺めると、【火術】の勢いは増している。
「おやっ? 芹菜、あんなに強かったですかな?」
「ひょっとして……だな……」
 大鋸は、頭は悪いが、勘はいい。
 はキョロキョロと周囲を見回す。
「う−ん、あの女じゃねえかと思ったんだがなぁ……」
 大鋸は腕組みして首をひねる。
 その近くで、【ベルフラマント】を脱いだ詩穂が、こっそりと舌を出すのであった。
「【転経杖】に【ヒプノシス】じゃ、さすがに気づかれちゃったかな?」

「もう限界だよ!」
「よっしゃあ! 後は俺に任せろや!」
 芹菜のカバーに入ったのは、戯纏 桜冥(ぎてん・おうめい)だ。
「【囮役】で惹きつけたる。やから、五町と子供達を守って先に行け!」
「うん! わかったよ、桜冥さん」
 芹菜達が去った後、桜冥は【隠れ身】を使って、時折姿を現しつつ、大蜘蛛たちの注意を引きつける。
 だが、大蜘蛛たちの攻撃は容赦ない。
「わわ、俺が死んじまう!」
「おにいちゃん……いまたすけるからね!」
 こんなときとばかりに、子供達は余計な手助けに入ってくる。
「わわわ――っ! 来るんやねぇ!」
 大蜘蛛は声に反応して、向きを変え始める。
 だが子供達はまったく分かってないようだ。
 絶体絶命のピンチッ!
 
 ひゅうううううっ。
 
 白い影が子供達の行く手に現れる。
「わああああああっ!!」
「ゴーストだあああああああっ!」
 ゴーストの恐ろしさは、先刻了承済みだ!
 それがいきなり目の前に現れたとあっては、大蜘蛛どころではない。
 遠くの大蜘蛛より、近くのゴーストへの恐怖心から、子供達は諸手を上げて引き返していく。
「やれやれ、そんな役目だ……」
「ゴースト」の仮装を脱ぎ去って、ソニア・クローチェ(そにあ・くろーちぇ)は大きく息を吐くのだった。
「ルーナ、ここで桜冥を手伝ってくれないか? 1人では手に余りそうだ」
「はい、ソニア」
 トリス・ルナ著 『祓魔式目録』(とりするなちょ・ふつましきもくろく)はソニアの命令に従い、桜冥のサポートに入る。
「【火術】で足止めします。お好きな方向へお逃げ下さい」
「おおきに! 助かるわぁ!」
「ところで、ソニアはいかがしますので?」
 うん? と
「偽ゴーストで、はぐれた子供の世話でも焼くさ。ま、味方に間違われちゃうのが落ちかもしんないけどね、あははは〜っ!」
「……あなたらしいですね」
 はあ、と溜め息。
 ソニアの背を見送りつつ、【火術】の体勢に入るのだった。
「逆に退治されなければよいのですけど」

 魔物たちの動きは、収束に向かいつつある。
 子供達は1つに固まり、安全地帯を目指す。
 だが、まだ動ける大蜘蛛たちも数匹残っているようだ。
 
「恵那、いくぜぇ!」
「はい、王ちゃんさん!」
 大鋸に誘われて、小林 恵那(こばやし・えな)は夜の中へ飛び込む。
 その姿は黒ずくめで、闇と同化する。
 逃げ遅れた子供達が、2匹の大蜘蛛達に行く手を阻まれていた。
 子供達は脅えて、立ち往生している。
「で? どうするんだ」
「……て、どうお手伝いすればいいですか? 私」
 カクッ。
 大鋸は脱力する。
「色々持ってきたんですけどね。虫よけスプレーとか懐中電灯とかお菓子とか……」
「それは、全然この場合、役に立たねえと思うぜぇ、ねーちゃん」
「お菓子で、子供達を釣る、っていうのはどうだ?」
 やれやれ、と首筋をかきつつ、ロックウェル・アーサー(ろっくうぇる・あーさー)が提案した。
「俺が、【火術】で足止めするから。小林はお菓子で子供達を安全地帯へ誘導するんだ!」
「だな、その姿だ。お菓子がふわふわ浮いてりゃ、こどもは黙ってついて行くぜぇ、きっと」
「そうですか? 王ちゃんさん」
 恵那は釈然としない表情だったが、取りあえずお菓子を片手にぶら下げる。
「行くぜ、ファイアーッ!」
 ロックウェルは【火術】で大蜘蛛達の足を狙う。
 彼らは知らなかったが。
 こっそり、やっぱり、詩穂によって強化された攻撃力のお陰で、大蜘蛛達の足は一発でとまる。
「この隙に、私の出番ですか?」
 恵那はお菓子を子供達の前にぶらぶらと。
「わあ! お菓子だあー!」
「飴も、チョコレートもあるよ!!」
 子供達はふわふわと浮く魔法のお菓子に誘われて、歩き始める。
(よかった! これで、無事に安全な場所まで行けそうですね!)
 胸に手を当てて、ホッとする恵那なのであった。
 
「さあ、全員集まったかな?」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は【小型飛空艇ヴォルケーノ】から降り立つと、子供達を全員集めた。
 よたたたたっ。
 おいかけてきた大蜘蛛達を、【強化型光条兵器ブライトマシンガン】で足止め。
 今一度、大鋸からのメールを確認する。
『シー・イーの話だとよぅ。【お宝】は山寺の中にあるってさ!』
「自分は、相変わらず覚えてないんだもん! なんだかなあー、ダーくん」
 ハアッと溜め息。
【小人の小鞄】から小人達を呼び出して、道案内役を頼んだ。
「じゃ、子供達を頼んだわよ。山寺まで、GO!」

 ■
 
 かくしてナラカの大蜘蛛を避けた子供達は、無事に最終目的地である【山寺】へと向かうのであった。
 寺の前では美羽の命を受け、案内役のベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が立っている……。