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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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リアクション

「ミシェル、鍋には触っちゃダメだ」
「お手伝いをしようと思ったんだよ?」
「鍋なんて出汁の中に材料を適当に入れておけば出来るんだから、そんなに大変じゃない」
 影月 銀(かげつき・しろがね)は切った材料を鍋の中に入れようとしてくれたミシェル・ジェレシード(みしぇる・じぇれしーど)を制止したのだ。
「ミシェルが触ると毒物しか出来ないからな……食べられなくなったら勿体ないだろう?」
「そうなんだけど……私から鍋に誘っておいて、何もしないのはなんだか申し訳ないよ」
「大丈夫だ。それに、そんな事は今さら気にするな――誰だ?」
 白菜を入れていた銀の手が止まった。
 カマクラの外で何やらごそごそと音がしていたのだ。
「あの……カップルか?」
 カマクラの中に入ってきたのは獅子神 玲(ししがみ・あきら)だ。
「それがどうした?」
「ち、違うよーーーっ!」
 銀はわざと否定をしなかったが、ミシェルは全力で否定をした。
 その様子にどっちなのかよくわからず、玲は首を捻って考え込んでしまった。
「良いじゃない! この人達はきっとカップル! それで良いと思うわ!」
 見兼ねてカマクラの中に入ってきたのは山本 ミナギ(やまもと・みなぎ)だ。
「えーっと……ミント? さん。違ったらこの鍋は食べようと思っていたのに……」
「アキラ! あんたいつになったら人の名前覚えるのよ! あたしはミ・ナ・ギ・!」
 ミナギは銀達の前に持っていた鍋をドンと置き、玲に言い寄る。
「ククク……」
「ささらは笑うな〜!」
 カマクラの外に待機していた獅子神 ささら(ししがみ・ささら)も、とうとうカマクラの中に入ってきた。
「いや、失敬。相変わらず、お二人の漫才は面白いなと……」
「漫才なんかじゃないから! ちょっと! 玲もなんとか……」
 ミナギが玲の方に振り向くと、玲はちゃっかりコタツの中に入り、ミシェルに出来たばかりの鍋をよそってもらっていた。
「クックック……やはり、ミナギさん、あなたの存在自体が面白すぎます。興味無さ過ぎて名前を覚えてもらえず、存在を鍋に負けるとか……」
「あたしは主人公なの! 存在が鍋に負けるとかないから! ……!!」
 そう叫び、玲の方を向くが、やはり鍋に負けているのだろう、全くこっちを見てもらえていなかった。
「あたしは……主人公なんだもん……ぐすん……」
 とうとうミナギはカマクラの隅でのの字を書き始めてしまった。
「で、鍋をワタシも頂いても?」
「うん! 良いよね?」
「別に、ミシェルがそれで良いなら良い」
 ミシェルが笑顔でささらを手招きし、コタツの中へと導いた。
「そうだ、この鍋はカップル用なので、良かったら食べて下さいね」
「だから! 違うんだよっ!」
 一所懸命に否定をするが、なかなか信じてもらえない。
「ああ、そうだ、実はあと2人と行動を共にしているのですが……呼んでも?」
「歓迎するよ!」
 ミシェルがオッケーを出すと、ささらはすぐに携帯を取り出し、メールを打った。
 すると、すぐにカマクラの中にミシェルが呼んだ人物達が入ってきた。
「おじゃましまーす! お、うまそうな鍋ー!」
「お邪魔しますよ」
 狭乙女 宝良(さおとめ・たから)姉ヶ崎 和哉(あねがさき・かずや)は近くの透乃と陽子のカマクラにスッポンを投げ入れたところだったらしい。
「いらっしゃい!」
「にゅひひ♪ ここにもカップルがいるみたいだじぇ」
 声を掛けてくれたミシェルとその隣にいる銀を見て、宝良は楽しそうに笑った。
「カップルとか恋人同士とかじゃないよっ!!」
 必死になってミシェルは否定をするが、やはり信じてもらえない。
「玲さん、つまみ食いせずに頑張ろうとしてくれたんだねぇ。ここはいっちょ! はい、あーん」
 玲の隣に座った宝良が、銀によそってもらった白菜を玲の口に持って行くと、ぱくりと食べた。
 どうやら、食べ物があるから食べたと言う感じで、意識してのことではないみたいだ。
「鍋食う時くらい静かにしてろよ……って、ミナギいないと思ったぞ」
 和哉は自分の後ろにいたミナギにビックリし、箸を落としそうになった。
「あたしは主人公! 銀! あたしにも鍋!」
「構わないが……あんたとそこの狭乙女が揃うと元気すぎる。もう少し大人しくしたらどうだ?」
 言われて、何かを言い返そうとしたが、とりあえず皿を受け取り、食べることに専念することにしたようだ。
 結構、お腹が空いていたらしい。
「宝良さん、鍋を配るお手伝いをする2人のストッパー役をやったんです……手伝ったんですから、代わりに……どうです? 一晩、ふふ……」
「そのうちなー♪」
 ささらに耳打ちされ、宝良はにやりと返した。
 騒がしくも楽しい鍋の夜はまだまだこれからだ。
「私と銀は恋人じゃないんだよー!」
 ミシェルの否定は、何度言っても全員にハイハイと流されるのだった。