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四季の彩り・ぷち~海と砂とカナヅチと~

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四季の彩り・ぷち~海と砂とカナヅチと~
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リアクション

 第6章 むきプリ君の災難

「ファーシー様、アクア様も一緒に遊ぶでありますよ!」
「え、え? でも、わたしたちは……」
「そ、そうですね。少し休憩したいというか……」
 スカサハの誘いに、流されたり溺れたりしたファーシーとアクアは顔を見合わせる。また溺れるとかいうことはないだろうけど……。
 2人がどうしようかと行動を決めかねていると、そこでフリードリヒがひょいっ、とファーシーを抱きかかえた。
「ちょ、ちょっと……!」
「さっきはさっきだろ、いーじゃん、皆で遊ぼーぜー!」
 そうして、彼は大量の屋台物を食べ終わって浜を歩いていたラス達とケイラに近付いていった。

「全く……あの野郎、今度会ったら覚えてろよ……」
「ねえ、ラスさん」
 とんでもない噂を流したトライブに、ラスは密かに制裁を誓う。そこで、ケイラが遠慮がちに声を掛けてきた。ちょっとばかり、好奇心も混じっている。
「男の人に興味無いのは知ってるけど……自分もラスさんの好きなタイプとか聞いてみたいかなって。好きな女子でもいいけど」
「は……?」
 突然何を言うのだろうか、と彼はつい足を止める。いや、先程の話の流れからだろうとは分かるが。
「……お前はどうなんだよ」
「自分? まあそれは置いといて」
 堂々と誤魔化された。とはいえケイラは女子といても男子といてもあまり違和感が無いし誰かと付き合っているというイメージも浮かばないが。
「好きな女、ねえ……」
 少し考え、ピノとケイラが注目する中、彼は言った。
「天然入った能天気なやつ、とか……?」
「おーい、そこの借金王ー!」
 フリードリヒが呼び声を掛けてきたのは、そんな時だった。
「借金王……?」
 あまりの呼ばれ方に、ラスは眉をひそめる。確かに、先程とは別にまだ20万ほど返してはいないが。確かに、まだ借金は残っているが。
(ていうかあいつ、何でお姫さま抱っこしてんだよ。必然性無いだろここじゃ!)
 フリードリヒとファーシーの後からは、スカサハとシーラ、諒、ブリジット達と望達、そしてアクアが歩いてくる。スカサハは機晶犬のクランを連れていて、それを、鬼崎 朔(きざき・さく)が後方で微笑ましく眺めていた。
(海……か。身体に自信はないが、こうやって家族で過ごすなら、私としても今日は楽しめそうだ)
 そう思う朔は、なぜかサイズの小さい牛さんパーカーの下にタンキニ水着を着用していた。スパッツの上からは長めの青いパレオを巻いている。
 両手両足、右わき腹と背中に刺青があることから、彼女は水着で肌を晒すのが好きではなかった。だが――
 ――こうやって極力見られないような水着になれば!
 家族と友人達と、海を満足に楽しめそうだ。
 スカサハ達を見ながら、ふっ……、と朔は力を抜くように暖かく笑う。
(今日は楽しもうかな……♪)

「ピノちゃん、お元気そうですわね〜」
「うん! 元気だったよ! 今いっぱい食べて、おなかぱんぱん!」
「そうなんですか〜? 私も今日、お弁当作ってきたんですよ〜」
「食べるよ食べるよ! 遊んでたらおなかすくからねっ!」
「…………」
 シーラとピノが手をつないでそんな会話をする後ろで、諒は何だか複雑な顔をしていた。よくわからないけど、仲良くしている2人を見ているともやもやする。
「何で、お前までいるんだよ……」
「それはこっちの台詞です」
 ラスとアクアはお互いに苦々しい心境で、苦々しく言葉を交わすと距離を取った。そして皆が揃った、と思ったところでスカサハが元気に宣言する。
「皆様と海を満喫するであります!」
 それから、全員を見回して――
「花琳様達はどこへ行ったでありますか?」
 そう言って、首を傾げた。

「やったぁ! 海だよ!」
 花琳・アーティフ・アル・ムンタキム(かりんあーてぃふ・あるむんたきむ)は広い海を目の前に明るくはしゃいだ声を上げた。波打ち際に集まる皆を遠目に見て、誰かを探すようにキョロキョロする。
「……本当は皆と遊びたいけど、その前にちょっとやりたい事あるんだよねー♪」
 その彼女の後ろで、ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)がわなわなとしながら花琳に抗議の声を上げる。割と切実な声である。
「花琳!? なんでボクの水着がスクール水着なんだっ!?」
「えー? 体型的にこの水着が一番だと思ったからお揃いにしてみたんだよ!」
「体型的だァ!?」
 お揃いというだけに花琳もスクール水着で、ぱっと見、スク水の2人はどこかの仲良し健全中学生(1年生位)だ。
 しかし……カラフルな水着溢れるこの海でスク水とはなかなかに恥ずかしいものがある。
(まあ、ボクは保護者としてゆったりと焼きそばでも焼こうかな……)
 海の家のグッズ売り場には、鉄板や網のついた持ち運び用のバーベキューセットっぽいものも販売と貸し出しをしていた。そんなものを提供すれば海の家的には商売あがったりな気もするが、本家焼きそばも売れているようなので結果オーライである。
 焼きそばや野菜、ソースなどは持参している。さて、鉄板を借りようかと思った時――
「ブラッドちゃん、ナンパに行くよ!」
「ナンパ!?」
 カリンの腕を取って、花琳は無理矢理に引っ張っていく。
「そう、1回やってみたかった事! 『水着姿でナンパされる、もしくはする』!」
「はぁ!?」
 先程の『体型的に一番』というのも『体型的に(ナンパには)スク水が一番』という意味である。
「ボクはナンパなんてしたくねぇよ!」
「何で?」
 振り返ってきょとんとする花琳に、カリンは少し言い難そうに横を向いた。
「いやだって……その……軽い女って思われそうじゃん?」
 そうして、改めて今の自分の格好を見下ろして。
「それにいい年した女がスクール水着でナンパって……、シュール通り越してイテェよ」
 と、なかなかに的を得た発言をした。
 だが、ぼやきつつもカリンは花琳の後をついていく。
「まあ、花琳の気が済むまで付き合ってやるけどよ……」
「じゃあ……私と同じアリスのあの子を誘ってみよう!」
 花琳は、むきプリ君と一緒に休憩していたプリムに近寄っていった。むきプリ君が参戦してからお客が寄り付かなくなって暇していたようだ。
 とりあえず、何か凹んでいるらしいむきプリ君は見なかったことにする。
「ねえねえ、私達と海で遊ばない?」
「え?」
 クリームソーダを飲んでいたプリムはびっくりして、目をぱちぱちさせた。
 これって、ナンパかな……? だけど、ただ遊びたいだけかも。スクール水着だし、まだ子供みたいだし……
「今休憩中だから、少しならいいよ」
「やったあ!」
 割合あっさりOKした彼に、花琳は明るい声を上げた。しかし。
「プリム! 俺を置いてどこへ行く!」
 むきプリ君が、取り残されて寂しさ全開な待ったをかけつつ海の家から出てくる。
「どこって……ちょっと遊んでくるだけだよ。すぐに戻るから」
「そんな、子供のままごとみたいなナンパについていくのか! それで『ケーバン交換しよー』みたいな流れになるのか! 女なら、海でスクール水着で誘ってくるダサいまないたなガキでもいいのか!」
「ダサい……」
「まないた……?」
「ムッキー、そんなこと言っちゃダメだよ!」
 プリムが窘める。というより、見境の無い男代表に言われても説得力が無い。
「この子達はまだ子供なんだから、スク水でダサくてもしょうがないし、成長したらぼんきゅっぼんになる可能性があるんだから!」
「まだ子供だァ……?」
「それはちょっと、失礼なんじゃないかな……?」
「そうだよ、失礼……。……!?」
「アリスびーむ!!!」
 避ける間もなく、プリムはアリスびーむの餌食に遭った。すぐ傍では、むきプリ君がカリンに鳳凰の拳の強烈な2撃をぶち込まれている。
「ぶふぉお!!!」
 元々Tバック一丁であったむきプリ君は、そのまま銀の飾り鎖で縛り上げられた。なかなかに変態チックな出来栄えだ。
「な、ななななな……」
 気絶して縛られ身動きの取れなくなったむきプリ君を見て、プリムは恐くなって後ずさる。その彼に、花琳はビニールバッグに入れていた『アーデルハイトなりきりセット』を持って迫った。
「失礼な事言ったから、強制着せ替えね?」
「な、なんでそうなるんだよ! わわわわわわわわっ!」
「脅迫……もとい、想い出のために写真撮っておこう♪」
「今、脅迫って言ったよね、絶対言ったよね!」
 抵抗むなしくプリムは水着をひっぺがされ、アーデルハイトのコスプレをさせられた。その姿を、花琳はデジカメでぱしゃぱしゃと撮影する。変態チックになったむきプリ君も撮影した。
「今度、私達に失礼なこと言ったり逆らったりしたらどうなるか……分かるよね?」
「やっぱり脅迫じゃないかぁ!!!」
「じゃあ、次はこのメイド服ね♪ パートナーさんにもこのなりきりセット着てもらおう!」
「…………!!!!!」
 アーデルハイトコスプレに続き、巫女服、メイド服……
 むきプリ君は気絶したまま、プリムはポーズまでつけさせられてデジカメで記録されることとなった。

「おや、ファーシー様もアクア様も海が苦手でありますか?」
 その頃スカサハは、風森 望(かぜもり・のぞみ)の立てた戦闘用ビーチパラソルの下でファーシー達にオイルを塗っていた。オイルといっても機晶姫なわけで。肌素材部分には乾燥防止用に、アクアの翼のような機械形状の所にはワックスを塗る、という感じだ。
「ええ。私達は泳げないようですね……」
 アクアはまだどこか釈然としない表情をしている。ほぼ同時期に、それぞれ似た形式で作られたのだから私とファーシーは泳げないのでしょうか。それとも、やはり機晶姫は皆……? とか、考えていた。
 ちなみに、防水に関しては最低限施されていたらしく、機能不全に陥るほどの水は体内に入ってこなかった。故郷の土地観からして防水機能をつけるとは思えないし、そもそも自分の身体は殆ど造り直しなので、こちらは、ライナスの研究所で新たに付けられたのだろう。
「でも、浮輪に掴まってなら浮けるみたいよ。それでも、ちょっとこわいけど……」
「大丈夫であります! 海は慣れてしまえば怖くないのであります!」
 ファーシーの言葉を受け、スカサハはそう言って立ち上がった。浅瀬へとばしゃばしゃと入っていく。
「す、スカサハさん!?」
「とぅ!」
 驚くファーシーの前で海に飛び込み――