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たま☆るさんイラスト500枚突破記念 エンジョイ!たまカフェ!

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ミスフォーチュン・ボーイ

「カフェでアルバイト?」

月崎 羽純(つきざき・はすみ)は驚きの声を上げた。。

「うん、500日記念パーティで、スタッフを募集していてね、行ってみようと思うの」

遠野 歌菜(とおの・かな)が言った。リナト・フォミン(りなと・ふぉみん)スパーク・ヘルムズ(すぱーく・へるむず)も一緒だという。スパークはまあ、誘われたから……ということらしいが。まあ、歌菜だけではないし、3人なら。ちょっと考えてから羽純は言った。

「……歌菜達を客として見守るっていうのも楽しそうだな」

「わあ、じゃああとで見に来てね」

リナトが目を輝かせ、かくして3人は出かけていった。

「うわあ、どれも可愛いね……でも元気さっていうイメージではオレンジジュースかな?」

オレンジの短めのワンピースドレス。編み上げのクツに、胸元には大きなリボンがあしらわれている。

「可愛い制服〜♪
 ボクも歌菜ちゃんと、お揃いのオレンジジュースの制服を着るよ〜」

と、リナト。お揃いというところで歌菜が何か思いついたようだった。

「魔法少女アイドルとしては、パーティを盛り上げるパフォーマンスをしたいですね♪」

一度言葉を切って、スパークの方をいたずらっぽい目つきで見る。

「と、言うわけで! 可愛く女装したスパークとリナトと一緒に即席アイドルユニット結成です!
 息のあった踊りと歌で場を盛り上げましょ〜う♪」

「え? ちょっ!! 俺はただ、カフェのバイトだって聞いてたのに……
 女装とはどーゆう了見だ、カナ!」

「気にしない気にしない、さあさあ着替えて着替えて!」

歌菜とスパークはもとより良く似ている。オレンジのワンピース姿は、仏頂面ではあるものの、見た感じ違和感はまったくない。リナトは女装を楽しんでいるだけだ。

「スパークちゃん可愛い! ……えへへ、僕も可愛い?」

「二人とも取っても似合うわ! 可愛い!」

「かわいいって言うな!」

一人不機嫌なスパークである。
約束どおり、羽純が間もなく店にやってきた。

「へ〜え、意外とオシャレなんだな。 あ、おーい、歌菜!」

「いらっしゃいませ〜」

ぶすっとした表情のスパークが後に続いている。

「羽純さん笑ってないで、止めてくださいよッ!」

「お、スパークもなかなか。可愛いじゃないか。うんうん、いい感じだ」

「ヒデェ!皆、テキなのかーっっ!
 ……クソッ! こうなりゃ……やってやる
 俺が男だってバレなければ、恥ずかしくないもんな!」

何かがスパークの中でふっ切れたようだった。
たま☆るに許可を取り、店の奥側のスペースで、3人は息のあった踊りと歌を披露しはじめた。

「たま☆るちゃんとたいむちゃんも一緒に踊らないですか〜?」

中途でリナトが声をかけたりしている。

「相変わらず歌菜は歌って跳ねて元気だな。
 スパークは…何だか間違った方向へ進んでないか? ……まぁ、細かいことはいいか。)
 リナトの奴は思いっきり楽しんでいるな。本領発揮しまくりという所か」

近くのテーブルに席を取り、羽純は注文したケーキとアイスコーヒーを楽しんでいた。実は一番楽しんでいたのはこの人だったかもしれない。

 佐野 和輝(さの・かずき)は、内気で人見知りのアニス・パラス(あにす・ぱらす)が、制服がすごく可愛いから、ウェイトレスのアルバイトをしてみたいと言い出したので、ようやく独立心が芽生えたか、と嬉しい反面、アニス一人ではあまりにも心配なので一緒に働くことにしたのだった。無論スノー・クライム(すのー・くらいむ)ルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)も一緒である。

(全員で付き添いでアルバイト……あれ? これだと、意味がないような?
 ……気のせいだ。うん、気のせいにしよう)

アニスを心配するあまり、和輝はそういうことにしてしまった。

「アニスが自分から人とかかわる仕事をしたいだなんて。応援するわ」

と、スノー。ルナも、

「アニスの初めてのバイト、応援するですよぉ〜♪
 手のひらサイズの私は満足に働けないですけどぉ」

そう言ってアニスの周りを飛び回った。

「和輝もスノーも、ルナも一緒に働いてくれるって言うから、たぶん大丈夫♪
 うわぁ! 可愛い制服!」

アニスはワンピーススタイルでスカートもふんわり、すそにフリルのあるオレンジジュースの制服を選び、にっこりした。ルナはそろいのデザインで、カラーはストロベリーラテである。スノーはミニスカートのアイスコーヒーの制服。和輝もアイスコーヒーのアーバンスタイルのものを選び、言った。

「俺は厨房のほうで働くとしよう。
 ここならば、注文内容を伝えにくるアニスを見れるから、何か変化が起きれば表情が読み取れるだろうし」

「アニス小さいから、インラインスケートを履いて、身長と移動速度アップだー!
 重いものを運ぶときは、【サイコキネシス】を使って重さ軽減すれば、ばっちりかな♪」

張り切って控え室から出てゆくアニスを、スノーとルナがあわてて追った。

「たま☆るさん?
 ああ、去年、バレンタインデーの絵を描いていただいたことがあった。
 開店500日記念パーティ? 寄らないわけにはいかないな」

エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)はたまカフェのチラシを見てつぶやいた。

「たま☆るさんがカフェ開店? 行く行くー!
 バレンタインデーって、面白いチョコ贈る日でしょ?」

未だにバレンタインデーの意味を履き違えたままのロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が先にたってカフェへと向かう。

「とはいえ従業員はムリだし、多少なりとも売り上げ貢献くらいか。
 酒はダメだ、未成年だからな。とはいえ炭酸飲料も苦手だしな〜」

「いらっしゃいませ〜!」

はにかみながらも元気良くアニスが挨拶をする。
 
「お席はこちらです」

インラインスケートで身軽にターンするアニスのスカートがふわりと舞い上がし、下着がのぞきそうになる。アニスの胸の辺りを飛んでいるルナも、アニスがターンした煽りを食らってスカートが舞い上がった。エヴァルトとロートラウトは目を丸くした。

「わ、あの、ちょっと!!」

エヴァルトが真っ赤になる。少々遅れて出てきたスノーは、それを見てあわてた。

(……ってアニス、それで移動するとスカートが!!
 良かった。和輝がこの場面を見てたら、何をしていたことやら……)

身を翻してアニスとルナにスパッツをはかせようと控え室へつれて行くことにした。

「し、失礼いたしました」

深々と一礼すると、ミニスカートなので、後ろ側が……。スノーの背後の男性客が目を丸くする。

(……あら?視線が増えた? というか私も、見られてる?)

アニスとスノーを従えてあわてて下がった。ルナが事情を聞き、叫ぶ。

「なんとぉ、スカートの中が見えそうになってたですかぁ!
 そういえばぁ、私もアニスの胸の辺りを飛びながらお手伝いしてたらか見えてたかもですぅ〜。
「和輝さんのために取っておいた純潔がぁ〜」

案内された席は、コンパニオンたちの席のそばだった。ロートラウトはアイシャを目に留めると、まだゆだっているエヴァルトを尻目にアピールに出た。

「エヴァルトはサイボーグで、ことでも超人的肉体&精神で乗り越えるから大丈夫!
 バンバンこき使っちゃっていいですよ、女王陛下!」

「まあ……」

アイシャは微笑んだ。

厨房では。和輝が空いた時間を使って、試作品を作っていた。

(炭酸水がダイエットに良いって聞いたことがあるな。
「抹茶炭酸水」とか「コーヒー炭酸水」はいいかもしれない。受けるかもしれないな。
 ……俺が飲むのはちょっとあれだけど。

そこへアニスがやってきた。

「うにゃ?新メニューの研究してるの? ねぇねぇ和輝、アニスが味見してみて良い?」

「……いいぞ」

「うにゅああぁ、炭酸のピリピリが〜♪ アニス、このメニュー好き♪
 そうだ、今あったお客さんに、アニスちょっと失敗しちゃったみたいなの。
 サービスでこれ、お出ししてみよう♪」

抹茶炭酸水を、まだぼんやりしているエヴァルトの元へと運ぶ。

「新メニューのサービスです〜、どうぞ!」

「ああああ、あ、ありがとう」

引きつった表情で、運ばれたものが良く見えないまま、エヴァルトは飲み物を口にした。

「!!!!!」

苦手も苦手な炭酸水。しかもお茶の苦味と香りが、甘いサイダーと、微妙な風味を……。涙目になりつつ、必死で飲み干す。

 フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)は、周囲の驚きの視線をものともせず、落ち着いて座っていた。目線の理由、それは彼女の服装にあった。上は普通に制服だが下は……どう見ても白いパンツ一枚なのである。

店内の様子を見て歩いていたたいむちゃんがそばを通ったので、フィーアは呼び止めた。

「たいむちゃんはお洒落なカフェが初めてとのことだな。
 ここは、僕がおすすめのドリンクをごちそうしよう。 ……ずばり『ドクターヒャッハー』!
 こいつで決まりだ! ついでに芋ケンピ食いねえ」

たいむちゃんはさすがにちょっと気おされながらも、両方の品を受け取った。

「あ、ありがとう」

 ドクターヒャッハーと、芋ケンピについてしばし熱く語ったフィーアではあるが、忙しいたいむちゃんをさすがにあまり引き止めてはおけない。
サテ次は……たいむちゃんが立ち去ったあと、隣のテーブルで深刻な表情をしているエヴァルトに気がついた。立ち上がって、エヴァルトのすぐ横に立ち、声をかける。

「何やらお悩みのようだな」

「あ、え、って、いやお前その格好!!!!!」

エヴァルトの顔が硬直し、引きつる。

「ん? パンツじゃないから恥ずかしくはないぞ? うん」

「え?!」

「まあ。これを食え」

差し出された芋ケンピを、無意識に受け取ってかじるエヴァルト。

「それと、お勧めドリンクのドクターヒャッハーだ!」

機械的に受け取って、それをのどに流し込む。お色気系が苦手な彼に、強すぎた刺激が連続、さらに炭酸2連ときてはさすがにたまらない。目を見開いたまま、椅子ごと後ろにひっくり返ってしまった。

ガッターン

「……友達や仲間を、絶対に……それこそ、ザナドゥの魔神に魂を奪われでもしない限りですね!
 絶対に裏切ったりしませんよ! 素行も、……まぁ、一部のコメディな展開でない限りは……」

アイシャに一生懸命エヴァルトの宣伝をしていたロートラウトは、硬直したまま椅子ごと倒れたパートナーに気づき、後半はごにょごにょと語尾が消える。

「……良い方だと思います……が……し、失礼いたします……」

「……面白い方ですね」

ぼんやりと宙を見つめたまま、ロートラウトに椅子ごと起こされるエヴァルトを見やって、アイシャはくすっと笑った。