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飛空艇なう

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飛空艇なう

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空飛ぶ砲兵大隊



『Open Combat!』
 シミュレーターに入ったメンバーの耳にコンピューター合成音が響く。
 武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)の指揮のもと、学園側のイコンは陣形を整えた。
 そして、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が《激励》を発する。
「みんな、敵はこちらの倍。最初の陣形は空飛ぶ砲兵大隊よ。厳しいけれど、ここを凌ぎきれば勝機が見えてくるわ。頑張って!」
『了解!』
「ふふふ……アシュレイおじさま……シミュレーション上とはいえ、負けない」
 サクラ・アーヴィング(さくら・あーう゛ぃんぐ)がコクピットの中でつぶやく。
「落ち着けサクラ。敵は鏖殺寺院の幹部のシミュレートだぞ。冷静に行かないと勝てない」
 山葉 聡(やまは・さとし)がたしなめると、サクラは「わかっています」と答える。
「それじゃあ、S@MP、BGM、スタート!」
 ルカルカの言葉に、赤城 花音(あかぎ・かのん)が答える。
「OK。赤城 花音プレゼンツ! Music is 『デウス・エクス・マキナ』。レッツゴーコンマス!」
「了解。みんな、行くぜ。Are you lady? OK レッツ、ロックンロール!」
 姫宮 和希(ひめみや・かずき)……立体映像投影装置でギターを抱えた学ランに学帽姿の和希の姿が空中に投影される。
 飛空艇『月の宮殿(チャンドラ・マハル)』(フレイが名付けた)から今この場にいないメンバーのメロディーラインが流れてくるので、和希がそれに合わせてリードを取る。
 花音とフレイ、グリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)の三人のボーカルが声を合わせて歌う。
 アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)が海上でヴァラヌス鹵獲型【アオドラ】に搭乗しながらアコーディオンを奏でる。


   運命の歯車が動き出す 織り成す鼓動のスピリット
   蒼空を翔ける剣を手に 今 世界の創造に立ち向かう
   迷い戸惑い悲しみ 暗闇に堕ちないで
   自分の心に問い掛けて 答えの意味だけ闘いがある 

   命の音色…生きる輝き解き放つ刻
   僕らは目覚める フロンティアへ

   さあ 戦火の悪夢を断ち切ろう 過ちを撃ち抜く覚悟を胸に 
   真っ直ぐな想い加速する 君の強さへ変わって行く
   夜明けの眩しい光が導く 流した涙が虹色に煌いて
   終末に奇跡が舞い降りる 灯した勇気…明日を掴み取るんだ


 味方の士気が上がる。精神が研ぎ澄まされて行く。
 そして戦闘が始まった。
 敵は密集してミサイルを放つと、すぐにその場から移動していく。
「ミサイル接近。高密度です!」
 ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)がサブパイロットとして、メインパイロットのフロッ ギーさん(ふろっ・ぎーさん)に伝える。
「OK 【Nachtigall】全力突撃。《高速機動》開始! 突っ込むぜ!」
 フロッギーは叫ぶとS−01を急上昇させ、ミサイル上空まで上がる。そこからミサイルの群れに突っ込んでミサイルのロックを自機に集めつつ音速を突破した勢いに発生する衝撃波でミサイルを爆発させる。
 密集隊形で飛んできたミサイルは次々に誘爆を起こしその大半が爆発する。
「ダメです。全部は壊しきれません。十発ほど生き残ってこっちに向かってきます!」
「了解! ナナ・マキャフリー、堪えてくれよ!」
 そう言うとフロッギーは機体のノーズを真下に向けて急降下を開始した。
「くうっ! Gがきついです」
「なんの、契約者なら耐えられる! さらに《高速起動》!」
 急降下から急上昇。追尾してくるミサイルを縦のGで破壊する。
「ミサイル第一波全滅! しかし、第二派来ます!」
 ナナの警告が味方に飛ぶ。

「俺に、まかせろおおおおおおおおおおおおお!」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が前に出る。
「エクス、フルスロットル!」
「了解! 《ダメージ上昇》」
 エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が機体を操作しミサイルに向かう。
「うおおおおおおおおおお! 《高速機動》。駆けろ、黒帝! アダマントの剣よ、我に力を! 磁気嵐発生! 《絶対命中》!!」
 唯斗は黒き機晶馬「黒帝」を駆り、空中を駆ける。
 ミサイルが唯斗のイコン【荒人】の脇を通り過ぎると、それは【荒人】には向かわず飛ぶ方向が出鱈目になる。
 アダマントの剣でミサイルのセンサーを狂わせたのだ。
 ミサイル同士がぶつかったり海に落ちたりして爆発を起こす。
「うおおおおおおおお! 喰らええええええええええええ!」
 アダマントの剣がまとった磁気嵐をミサイルの群れに向かって飛ばす。
 ミサイルの群れはことごとく爆発し、四散する。
「唯斗! ミサイル第三波来るぞ!」
「大丈夫だ、問題ない!」
 エクスの指示に従い唯斗は戦場を横断する。そして飛んで来るミサイルのことごとくを破壊して回った。

「ドール、敵の戦術は何? ミサイル発射しまくって」
 鳴神 裁(なるかみ・さい)が魔鎧にしてパイロットスーツのドール・ゴールド(どーる・ごーるど)に尋ねる。
 ちなみに彼女はガネットを水中形態にして潜水し、時期を伺っている。
「あれは、ナポレオン一世が使った戦術、空飛ぶ砲兵大隊なのですよ〜?」
「空飛ぶ砲兵大隊? 変な名前だね」
「一つの大隊が戦場のある地点に移動し、短時間で鋭い砲撃を行い、続いてまた別の地点に移動し、攻撃を加え、といった作業を繰り返すものなのですよ〜? とても有効な戦術なのですが特別な訓練を必要とする高度な戦術なのですよ〜?」
「その割にはみんなミサイルをたたき落としてるけど?」
「それは皆さんが凄いのですよ〜? 普通あんな攻撃を受けたらたちまち部隊は壊滅しちゃうのですよ〜?」
「へー、凄いなあ」
「でも、それが限界なのです〜? 敵がミサイルを使いきるまでは、ああやって防御をするしか方法がないのです〜? というわけで戦況はこちらが不利なのですよ〜?」
「そうなんだ。あ、第5波が来た!」