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INTO THE CAVE ~闇に潜む魔物と生きた宝石~

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INTO THE CAVE ~闇に潜む魔物と生きた宝石~

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【第二章】

「わぁ!」「なんて……言ったらいいか……」「本当に綺麗」
 洞窟の地面に足を付けると、生徒達は暗闇から現れた七色の光に感嘆の声を漏らした。
 好奇心が強いのであろうフラッフィーモルフォ達は、現れた生徒達に物おじする事無く彼らの周りを飛び回り、匂いを嗅いだり持っている荷物をつついたり。
「きゃっ!」
 その飛びまわっていた内の一匹はルカルカ・ルー(るかるか・るー)のの豊かな胸ぶつかり、ボヨンと弾かれてしまった。
「ご、ごめんね。大丈夫?」
「大丈夫、キャッチしたから」
 手のひらをそっと開いて見せたのはルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)、ルカに瓜二つの彼女のパートナーだ。
「モルフィー!」
 美緒が気付いて駆け寄ってくると、アコは安心させる為にウィンクして見せる。
「ちょっとビックリしただけみたいよ、ね」
 アコが声を掛けると、モルフィーは耳をピコピコ動かして答える。小動物の一挙一動に、ルカルカは興奮気味だ。
「可愛いー!青いってことはこの子が噂の」
「はい。モルフィーですわ。他の子達はここで会って」
「じゃあお友達のフラッフィーモルフォは名前はまだ付いてないのね」
「はい。あの……? お二人は双子の姉妹なんですの?」
 二人とごく自然に会話していた美緒だが、冷静になれば同じ顔が並んで居る事に気づき戸惑ってしまう。
 アコはその様子に慣れた様子で、握手の手を差し出した。
「はじめまして美緒。双子じゃないけど似てるでしょ。アコの魔本だから」
「魔本……さん」
「そ。それにしてもフラッフィーモルフォってもっと鼠っぽいのかと思ってたけど、思ったよりふわふわしてるのね」
「あのぉ」

 声のした下を見下ろしてみると、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が小さな両手を口元で合わせて何か言いたげにこちらをみている。
「えと……ボクもさわっていいですか?」
 ヴァーナが言うやいなやモルフィーはヴァーナーの手元へ飛んで行き、指に身体を擦り寄せる。
「うわぁ……モルフィーちゃんモフモフでかわいいです〜」
「俺のパートナーも、いいか?」
 少し恥ずかしそうに現れたのは、佐野 和輝(さの・かずき)だ。
 背中に背負ったアニス・パラス(あにす・ぱらす)が興味深々と言った様子でモルフィーを見つめていのだ。
 そこへ赤や緑のフラッフィーモルフォも現れ、彼女達の手に柔らかい毛に覆われた身体を預ける。
「和輝!和輝!本当にモフモフだよ!見て!」
「本当に綺麗ですね」
 火村 加夜(ひむら・かや)もやってきて、少女達と小動物が戯れる微笑ましくも、美しい光景が繰り広げられる。

「う……うううう……もおお」
 うずうず様子を見て居て、遂に耐えきれなくなったアコがヴァーナーに抱きついた。
「かわいいー!かわいいからモフモフしちゃうー!」
「こっこらアコ!」
 パートナーの制止も聞かずに、アコは今度は美緒に抱きつくと、柔らかな胸に顔を埋めた。
「美緒もモフモフー!」
「きゃあ!」
「皆かわいいからモフモフしちゃえー!」
「あっアコさんっ駄目ですそんな所……」
「ここかーここなのかーモフモフモフモフ」
「あっあっやぁん!」
「アコ、そろそろやめようね」


「くーっ! 俺も美緒ちゃん達をモフモフしてー!」
「リョージュ君がモフモフしたら……変態さんです」
 真剣な顔で叫ぶパートナーのリョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)白石 忍(しろいし・しのぶ)が冷静な突っ込みを入れて居ると、
同じように美緒達を見て居た騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が小さく呟いた。
「……いいなー」
「え?」
「え?」
「今いいなーって」
「え?あ!ち、違います!私はフラッフィーモルフォをモフモフしたいのであって決して美緒ちゃんをモフモフしたいんじゃなくて!」
 慌てて否定する詩穂の横で、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が口を開く。
「俺もモフモフしたいな」
「は?」
「ん?俺がモフモフしたいのは……」

その瞬間だった――


「グオオオオオオ」

 例の唸り声が洞窟内に響き渡る。
 美緒は真剣な面持ちになって皆の前に向き直った。
「この音……、これがお話していたモンスターの声かと思われるものですわ」
「恐らくこの先に潜んでいると思われるのですが……」
 ラナ・リゼットの声が響く。
「お姉様、状況的にも直ぐにでも向かった方がよさそうですわ」
「良いかしら」
 割って入ったのは美緒と同じく百合園女学院の生徒である冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)だ。
「私、先程からダークビジョンで洞窟内を見て居るですが……、
 どうやらこの洞窟内はそこら中にクリスタルが生えているようですわ。
 鍾乳洞の様に大きいものや小さいものがバラバラに生えていますから、個人で適当に歩きまわる事はお勧め出来ませんわね」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)のパートナーであり、冬山と同じくダークビジョンを使うエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が付け加える。
「それから地面と壁の物質は石灰岩に似た物質みたいですね。ちょっと触れるとホラ」
 エオリアが人差し指と親指でつまんでいた欠片は、指先に少し力を入れるだけでボロッと崩れてしまった。

「矢張りモルフィー達と離れたり個人で行動するのは危険ですわね。声とモルフィーの導きを頼りに皆様一緒に進む事にしましょう」
 美緒が皆を見回すと、清泉が一歩前に出て教師相手にやるように手を上げた。
「ひとつ提案があるんだけど」
 皆の注目が自分に集まった事を確認して、清泉は続ける。
「幾ら洞窟内にモンスターが居るからって残ったフラッフィーモルフォがこれだけとは考えにくいな。僕は他の皆はどこかに隠れてしまった、と考えているんだけれど」
 彼の言葉にフラッフィーモルフォらは頷いているようにみえる。
「良ければ僕とパートナーが捜しに行くよ」
 そう言う清泉の前に緑色のフラッフィーモルフォが現れ、彼の周りを一回転した。
 清泉は頷いてにっこり微笑む。
「この子が付いて行ってくれるみたいだ。いいかな?」