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長期休暇廃止の危機

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長期休暇廃止の危機

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序章『誰もいない美術室』

 蒼空学園理事長兼校長の山葉 涼司(やまは・りょうじ)は美術室へと赴いた。
 理由は先日、自分で出した御触書。
 昨今の成績不振を危惧しての学力向上計画。その経過を視察するためだ。
 突然の実技試験追加の総合試験に生徒の大半は戸惑っていることだろう。
 否、それよりももう一つのことのほうが重大か。
 長期休暇廃止。それが今回の試験に対するペナルティだった。
 これで少しばかりはやる気が奮起されたと思い、まずはと美術室にきたわけである。だが――
「誰もいないじゃないか……」
 閑古鳥の鳴く美術室。ここで試験に取り組んでいる生徒はいなかった。
「おいおい、長期休暇無くなってもいいのかよ……」
 自分で言ったこととはいえ、涼司自身も休暇を与えたいと思っている。
 そのために、御触書に書いた事の次第という一文。成績如何よりも一生懸命取り組んでいる姿を見られればと考えていたのだが、のっけからこのような状況。
「とりあえず、次行くか」
 気を取り直しグラウンドへと向かう涼司だが、幸先不安な空気が漂う。