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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

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=====act2.森の中で=====

「そろそろ、敵さんのおでましかな……?」

 村を出発した二台の荷車のうち、一台を引いていた緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が、独り言のようにつぶやく。
 すると、積荷を覆ったシートから緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)の声が聞えてきた。

「そのようですね。
 先ほどから殺気を感じます」

 まもなく、イルミンスールの森にある祠へと到着する。
 祠は学校へ向かう道を逸れた、森深くに存在する。
 そのため襲われた際、助けを呼ぶのには時間がかかってしまう。
 また、ほとんど人が通らないため、整備されていない道には木々が生い茂っている。
 これら条件から、姿を隠して戦う暗殺集団≪カメレオンハンター≫にとって、この土地は絶好の狩場だった。

「……十文字さん、そっちは準備できていますか?」
「ああ、いつでも大丈夫だ」 

 佐野 和輝(さの・かずき)十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)は、再度武器を確認して臨戦態勢に入った。

 生徒達にとって、不利な状況。
 それでも、彼らは荷車に積んだ≪スプリングカラー・オニオン≫を守ろうとする。

 ――少女のため。
 ――名誉のため。
 ――食事のため。
 ――お金のため。

 各々想いを抱いて戦いに赴く。


 
「それじゃあ、私達はちょっくら先に行くとしますか!
 フレンディスちゃん、後は任せたよ!」
「わかりました!」

 透乃が荷車を引いて、祠へは向かわずにイルミンスール魔法学校へと続く道をかけていく。
 和輝、宵一、達がその後を追いかけた。
 
 その背中を見送るフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)
 周囲がざわめき、向けられていた殺気が薄くなった。
 フレンディスは作戦がうまくいっていることに、ホッと胸を撫で下ろした。

「さぁ、マスター、アリッサちゃん。
 私達の仕事をしましょう」
「おう、任せておけ」
「おねーさまのために、アリッサちゃん頑張るよ!」

 フレンディスは、ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)と共に、祠へと続く道を先行した。
 箒に腰かけたアリッサが、先頭を飛行する。

「前に出てじゃんじゃんトラップを解除しちゃうよぉ」
「では、私はアリッサちゃんの援護に」
「ほんとうですかぁ!? 
 アリッサちゃん、おねーさまに守られて大感激ですっ」

 アリッサはよほど嬉しかったのか、フレンディスの周りをクルクル回る。
 その様子にフレンディスも嬉しくなり、笑みを浮かべた。

「よし、俺も――」
「ベルクちゃんはお留守番だよ」
「は――はぁ? なんでだよ」

 ヤル気に満ちたベルクのセリフを、アリッサが遮った。
 不服そうなベルクを見下ろしながら、アリッサは呆れたようにため息を吐いた。

「当然だよぉ。
 近くで雷とか闇の魔法なんか使われたら迷惑だもん。
 もしかしたら、罠が作動しちゃうかもしれないよー」
「だったら、俺は何をしていればいんだよ」
「ベルクちゃんは【ディテクトエビル】を発動させて、荷車を守るんだよ。
 荷車の近くで忠犬のように大人しく、忠実に、傍にずっと張り付いてなきゃ」
「なんか、悪意を感じるんだが……」
「そんなことないよ。適材適所……
 もとい、不要な戦闘員は馬車でお留守番と、相場がきまっているんだよ」
「やっぱり、めっさ悪意がありありじゃんか」
 
 ベルクの伸ばした手を回避すると、アリッサは意地の悪い笑みを浮かべて先に進んでいった。